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医療・健康・介護のニュース・解説

「痛くない」乳がん検査、マンモグラフィーに替わる?…研究・開発進む

 乳がんの検診でよく使われる検査法がマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)だ。乳がんの死亡率を減らす効果がある反面、乳房をはさむため痛いのが欠点だ。開発や研究が進む乳がんの検査装置を取材した。(石川千佳)

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 マンモグラフィーは、国が自治体検診で40歳以上の女性に2年に1回勧める検査法だ。乳房を伸ばして板に挟んで固定し、エックス線をあてる。昭和大学医学部乳腺外科の明石定子准教授(52)は「感じる痛さには個人差があるが、乳房を薄くした方が 被曝ひばく が減り、きれいに写る」と話す。

乳房専用PET、高濃度乳房でも発見

「痛くない」乳がん検査、マンモグラフィーに替わる?…研究・開発進む

 痛くない乳がん検査には超音波や磁気共鳴画像(MRI)などがある。精密機器大手「島津製作所」(京都市)は4年前、陽電子放射断層撮影(PET)で、痛くない乳房専用の装置を開発した。国内の約10医療機関が導入している。

 検査を受ける人は、微量の放射線を出す薬剤の注射を受けてから、装置の上でうつぶせになる。胸が当たる部分に片方ずつ乳房を入れる穴があり、がんに取り込まれた薬剤から出る放射線を撮影する。同社は「検査時間は全部で15分ほど。5ミリ・メートル以上のがんを撮影できる」と説明する。

 この装置で乳がんが疑われる人などに検査する「所沢PET画像診断クリニック」(埼玉県所沢市)の石田二郎院長(62)は「痛くない上、小さながんも含めた全体の広がりが見える。医療機関で治療方針を立てる上で参考になる」と話す。他の検査では見つからなかったがんを見つけたり、マンモグラフィーでがんが写りにくい高濃度乳房の人のがんを見つけたりしたケースもあったという。

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高濃度乳房 】 乳腺の密度が高い状態で、病気ではない。マンモグラフィーでは乳房全体が白く写り、がんが見つけにくい。日本乳癌検診学会などは一部自治体が行った検診データを分析し、「4割の人が高濃度乳房」という結果を公表している。

弱い電波を利用…がんの位置を3次元で描く

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 広島大学の吉川公麿特任教授(66)らは、3~10ギガ・ヘルツの弱い電波を使った検査装置について昨年、科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で発表した。縦横と高さが約20センチと小型で、おわん形にくぼんだ部分を乳房にはめるタイプだ。中にある16個のアンテナが電波を発信し、360度回転して撮影する。時間は片方の乳房で5分ほどだ。

 電波はがん細胞などの境目ではね返り、がんの場所を3次元で描く。同大病院で乳がん患者5人を対象に臨床試験を行い、1センチのがんを発見できたという。

 まだ乳がんの性質の違いで発見の精度が異なる課題がある。吉川さんは「健康な人が乳がん検査で被曝する回数を減らす目的などで実用化できれば」と話す。

新しい検査法、検証例少なく発展途上の医療技術

 国が推奨するがん検診の検査法は、がんを早く見つけるだけでなく、治療すれば死亡率を下げる効果があることなどを科学的に検証している。

 新しい検査法は便利な反面、まだ検証例が少ない発展途上の医療技術という側面もある。新しい検査を受ける時は、検査の内容や特徴について、説明を受けることが望ましい。

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