辻仁成「太く長く生きる」(70)「最終回に思うこと」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

一瞬一瞬を切に生きる。僕の挑戦はまだまだ続きます。

◇ ◆ ◇

 パリから心と身体の健康面などについての雑感をお届けしてまいりましたが、いよいよ最終回となりました。長い間、ご愛読くださり、ありがとうございました。

◇ ◆ ◇

 僕は今年、60歳となりますが、大きな病をしたこともなく、健康体であることが自慢でもあります。1年に一度、知り合いのお医者さまのところで検査をしますが、血液の数値は30代のものだそうで、いまだに白髪もありませんし、全く問題がないのが不思議だとお医者さま方に逆に驚かれております。何か特別なことをしているわけでもないですし、お酒もがんがん飲むし、塩分も控えませんし、なぜこんなに元気なのか、自分でも理由は分かりません。でも、ストレスを抱えないように生きていることが健康の源かもしれないですね。人生百年時代に突入したということですから、僕の余生はまだ40年もあるわけで、まさにここからが第二の人生のはじまり、くよくよしていても仕方がありません。残りの人生を思う存分楽しんで生きていきたいと思います。それが健康の秘訣ひけつかもしれません。

◇ ◆ ◇

 5月に久しぶりの恋愛小説「愛情漂流」が世に出ます。セクシャリティーに悩む2組の夫婦の物語です。そして、6月中旬には、いよいよ監督作10本目となります新作映画「真夜中の子供」がクランクイン。博多が舞台になりますので、今年の夏はずっと福岡に入り浸ることになりそうです。そして、10月12日は生誕60周年を記念して東京Bunkamuraオーチャードホールで「“RENAISSANCE”~60th ANNIVERSARY CONCERT~」と題したソロコンサートを開催します。僕の歌手人生の総決算のようなライブになるでしょう。大勢の音楽仲間たちが日本だけじゃなく、パリからもやって来て、60周年を祝ってくださいます。ECHOES時代から現在まで、僕が影響を受けたり、作詞・作曲した、もちろん「ZOO」をはじめ、自分の子供のような曲たちをずらりとリストアップして熱唱する予定です。このほかにもいろいろとあるのですけど、60歳にしては旺盛な活動ですね。たぶん、人生を面白がり、ストレスを抱えず、くよくよせず、夢を持ち続け、何より、息子と大笑いしながら仲良く生きているからこその元気な60歳なのでしょう。

◇ ◆ ◇

 そんな僕の生きる基本は、仕事ではなく家事と子育てです。シングルファーザーになった時に「息子ファースト」で生きると決意し6年が経ちました。男手一つであろうと、家事と仕事は両立することが可能です。今年は生誕60周年なので、まず、頑張った自分にご苦労さまを言っていたわってやりたいと思います。でも、休むのじゃなく、誰よりもたくさん働くことが僕の僕へのご褒美でもあるわけです。息子が10歳の時、僕に向かって告げた言葉が今も忘れられません。「パパ、僕のために夢を諦めないで」と。その言葉に励まされて頑張ってきたこの6年でありました。その息子も今年の9月、僕が還暦を迎えるのとほぼ同時に高校にあがります。あんなに小さかったのに、今は見上げるほどに大きなお兄ちゃんになりました。そのことを、ここでもたくさん書かせていただきましたね。皆さまからの応援があってこその辻家だったと思います。ヨミドクター、読んだよ、と各方面の方に言われ、小さな活力となってまいりました。本当に、ありがとうございました。そして、僕の挑戦はこれからもまだまだ続きます。

 

最後の一言。 『辻仁成 “RENAISSANCE” ~60th ANNIVERSARY CONCERT~ 2019年10月12日(土)東京 Bunkamura オーチャードホールで、会いましょう!!!』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に 『太陽待ち』 『サヨナライツカ』 『右岸』 『永遠者』 『クロ工とエンゾー』 『日付変更線』 『息子に贈ることば』『父Monpere』『エッグマン』『立ち直る力』『真夜中の子供』 など多数。新刊に『人生の十か条』(中公新書ラクレ) 。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。
 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

辻仁成「太く長く生きる」