回想の現場

お化け煙突に東京スタジアム……写真で振り返る懐かしの風景

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昔の地域の様子が写った写真を眺める参加者

 かつての地元の写真を見ながら高齢者たちが思い出を語り合うイベントが昨年12月、首都大学東京の荒川キャンパス(東京都荒川区)で開かれました。昔の記憶を語り合う回想法を体験してもらおうと同区社会福祉協議会が研究者と協力して開催したもので、約60人の参加者が若い頃なじんだ町並みや家族と訪れた場所の話題で盛り上がりました。

「夫婦で野球見に行った」「路面電車で高校に通った」

 イベントの冒頭、机を囲んだ中高年に配られた25枚の写真。商店街や路面電車の停留所、遊園地など、主に昭和20~30年代に写された地域の情景が並びます。参加者はそれぞれ気に入った一枚を手に取り、ボランティアの進行で当時の様子を語りました。

 女性の一人は、プロ野球・大毎オリオンズ(現・ロッテ)の本拠地で、下町の野球場として親しまれた「東京スタジアム」の写真を選びました。「結婚して夫婦で見に行った」と新婚時代の記憶をよみがえらせました。近くの男性は「路面電車で球場のそばを通り、高校に通った」と青春時代を思い起こしていました。

「話を聞くうち記憶がどんどんよみがえってきた」

  下町のシンボルとして親しまれ、昭和39年に解体された「お化け煙突」の写真も関心を集めました。東京電力千住火力発電所(東京都足立区)に4本あった煙突で、「場所によって1本に見えたり2本に見えたりして、『お化け煙突』」と呼ばれた」「映画の題材になった」と口々に語り合いました。

 昔あったドブ川に話が及ぶと、「町並みはだいぶ良くなった」と都市の発展を喜ぶ声も出ました。主婦(93)は「人の話を聞くうちに記憶がどんどんよみがえってきました」と感想を述べました。

「興味を持っている姿勢示すことが大切」

世代を超えた交流も

 回想法は、脳の活性化につながり、前向きな気持ちになるといわれます。進行役を務めた50歳代の主婦は「知らない時代の話を生き生きと話してくれた。聞く側は興味を持っているという姿勢を示しながら聞くといい、と感じた」と話していました。80歳代になった父母にもアルバムを使うなどして、大学生の長女と一緒に回想法を試したい、と考えています。

 イベント開催に協力した藺牟田いむた洋美・首都大東京健康福祉学部准教授は「古い地域の写真は共通の話題となりやすく、神社や昔の車両も題材になる。仲間と集まっての回想は、家から外に出て足腰を鍛えることにもつながります」と話していました。

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