回想の現場

認知症の人への効能と進め方を指南……山上徹也・群馬大准教授

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 認知症サポーターを対象に、昔を思い出し語り合う回想法の進め方を学ぶ研修会が、群馬県みどり市で開かれました。認知症の人と対話を進めるためには昔の話を投げかけるといいと、講師を務めた理学療法士の山上徹也群馬大学准教授は助言しました。

昔の遊びを語り合う認知症サポーターの人たち

「思い出しやすい昔の記憶」をとっかかりに

 認知症の人と話すきっかけに回想法を使ってもらおうと市などが主催した研修会は10月末、市内の公民館に69人が参加して開かれました。まず、6~7人のグループごとに子どもの頃の遊びについて語り合います。「おはじきやゴム跳びをよくやった」「着せ替え人形の着物を古着で作った」。サポーターたちは半世紀以上前の遊びを挙げ、自営業の女性(73)は「同じ遊びをした人と話が弾み、わくわくした」と喜びました。

 回想法では、子どもの頃の遊びのほか、学校生活、大人になってからの子育て、仕事などの思い出を仲間同士で語り合います。昔の記憶は認知症になっても覚えていて、話をするきっかけになりやすいといいます。

 「認知症の人との会話では、本人が分かるテーマを選びましょう。回想法は好きなことや興味があることを話してもらうのに有効です。認知症の方は思い出すことが苦手になりますが、脳の機能が低下する前に覚えた記憶は引き出しやすいのです」と山上准教授は解説しました。

タイミングが肝心な道具の出し方

 研修会では、ビー玉や剣玉などの遊び道具も用意されました。サポーターが2個のお手玉を片手で扱う、あやとりのひもを素早く引くという場面があり歓声が上がりました。

お手玉を上手に投げる参加者に拍手が起きた

 人は道具を見たり触ったりすると、記憶をたぐり寄せやすくなります。認知症の人が慣れ親しんだ道具の使い方を周囲に伝えれば、感謝されたり称賛されたりして、自信や意欲が湧くようにもなるといいます。「手と体を使って覚えた動作の記憶は衰えにくい。認知症があってもなくても、だれかの役に立てたり感謝されたりするとうれしいものです」

と山上准教授。

 また、認知症の人たちとの対話で道具を利用するタイミングを、「会話が続かない場合に道具を取り出すといい。会話の冒頭から出してしまうと、話が広がりにくくなります」とサポーターたちに語りかけました。

 高齢者の回想を手助けする道具として、遊び道具や生活用具のほかに、昭和中期の生活の写真が載っている「写真でみせる回想法」(弘文堂)や、過去の新聞記事や映像を盛り込んだ読売新聞社のDVD「よみうり回想サロン」を紹介しました。

「これからやりたいことや若い人に伝えたいことも高齢者に聞いてみましょう」と呼びかけた山上准教授(中央)

 

 山上准教授は「昔の暮らしや出来事に関する知識を事前に身に付けていたほうが、会話は続けやすい。高齢者の人生を理解しようとする姿勢が大切です」と強調しました。

 山上准教授は理学療法士として脳梗塞や骨折の患者のリハビリを担うとともに、認知症の人をケアするため回想法を群馬県内外の施設で実践しています。

 

 

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