回想の現場
回想サロン
回想法で70歳代の仲間作り、DVDも活用…三郷市立早稲田図書館
埼玉県三郷市の市立早稲田図書館が、回想法を通じてお互いの理解を深める「思い出語りの会」を開いています。図書館に集う70歳代の男女6人が10~12月にかけて6回にわたって毎回異なるテーマで集まり、テーマに合うクイズをDVD「よみうり回想サロン」の中から選んで取り入れています。 シリーズ三回目、「あこがれの芸能人」をテーマに行われた10月31日、取材に伺いました。
皇室ニュースきっかけに「皇太子ご婚約」クイズへ
進行役は、このイベントを企画した同図書館専門員の牧原祥子さん(51)が務めます。牧原さんはまず、最近話題になった、高円宮絢子さまご結婚(10月29日)のニュースに触れた後、「それでは、皇室関連のクイズがあるのでDVDを見ましょう」と「よみうり回想サロン」の「昭和33年、皇太子さまと正田美智子さんのご婚約で沸き起こったのは何ブームでしょう?」というクイズを出題しました。
答えを確認した後、参加者からは「美智子さんの写真が学校中に掲示されていた」「近所のテレビのある家に集まって、ご成婚パレードの中継を見た」「軽井沢のテニスも話題になったね」などの声が次々と上がりました。さらに、DVDに収められている、ご婚約時の記者会見の様子を撮影した動画「よみうり国際ニュース」を上映すると、「さすが、お姿がお上品だね」と、皆うっとりと見入っていました。牧原さんは、DVD「よみうり回想サロン」を使いながら、最近のニュースと昔の出来事をうまく結びつけ、皆さんの思い出話をうまく引き出していました。
「ひばり」から「時代劇スター」へ、話題広がる
本題の「あこがれの芸能人」に話題が移ると、女性の参加者が「美空ひばりと島倉千代子は歌い方が対照的だった」と切り出し、「同学年の女友達で集まって、台の上で美空ひばりの歌を歌っていました。懐かしいわ」と声を弾ませていました。その後、皆でDVDの「昭和30年代の三人娘は誰?」というクイズを見て、「美空ひばりのブロマイドを持っていた」「美空ひばりは『お嬢』と呼ばれていた」など、しばし「ひばり談議」に花が咲きました。
「アメリカの俳優が好きだった」という女性が、雑誌の切り抜きやブロマイドを集めたアルバムを見せると、周りの人たちがそれを囲んで「高校生の頃、テレビで『ローハイド』『ララミー牧場』などアメリカの西部劇をよく見ていた」などと話し合いました。
また、「時代劇スター・東千代之介のファンだった」という女性は、「土曜日の夜、東千代之介の番組がテレビで放送されていた。近所の人が大勢、うちのテレビを見に来ていた。テレビは祖父母の寝室にありましたが、祖父母は文句も言わず、皆で楽しく見ていました」と懐かしそうに振り返りました。
回を重ねることで、気軽に語れる関係に
「思い出語りの会」には、市内在住の70歳代の男女6人が参加しており、この6人が全ての回に出席するというプログラムになっています。同じメンバーで回を重ねてきているだけに、すっかり打ち解けた雰囲気でした。終了後、記者を囲んで、感想を話してくれました。
「語る材料はいくらでもあります」という女性(71)は「昔のことを、つい最近のように思い出します。こういう場所があって楽しい」と笑顔を見せていました。また、メンバー唯一の男性(71)は「人と話すと心がウキウキする。話題づくりのために『米穀通帳』や子どものころの通信簿など、自宅に残っている昔の物を探して、持ってきています」と話し、この回想法の集まりが、すっかり生活の一部になっている様子でした。
回想法は認知症ケアの面で注目されていますが、会を企画した牧原さんは、さらに「図書館に通う元気な高齢者の仲間づくりに役立てたい」と考えているそうです。「1回だけの集まりでは、それぞれが思い出を発表するだけで終わる。回を重ねることで、参加メンバーがお互いの生き方に思いをはせ、尊敬する気持ちになれると思います」と狙いを話してくれました。このメンバーの中から、地域で回想法の会を進行できるリーダーを育てていくそうです。
(山本淳一)
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。