辻仁成「太く長く生きる」(61)「歯石巡り」

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「フランスのチーズ生産者団体が設立したギルド・クラブ・ジャポンから称号を頂きました。チーズの普及に努めたく思います。」

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 フランスで暮らして17年、この間、出来るだけ歯医者に通わないで済むように歯と歯茎に関しては一番注意し、生活してまいりました。フッ素の入った歯磨き粉を使うようにした甲斐かいもあって、この17年、虫歯の治療は一度も経験がありません。朝、昼、晩だけでなく、何か食べた後は必ずこまめに磨くようにしてきた成果と言っても過言ではないでしょう。虫歯はこのように防ぐことができますが、歯茎はそうはいきません。長い年月ほっておくと歯茎に歯石がまります。これは残念ながら歯ブラシではとれません。8020(エイティトゥエンティ)という言葉がありますけど、80歳で20本の自分の歯が私の理想です。

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 私は自慢ではありませんが、今まで失った歯は2本。1本はどうしても矯正できない歯だったので周囲の歯のことを考え抜歯しました。もう1本はインプラントにしました。残りは自分の歯。歯の健康が大事だと悟った時から、そうですね、40歳くらいでしょうか、自分の歯を出来るだけ残そうと決意し、いわゆる口腔ケアというものに注力を注いできました。よく相談をしたのが西麻布の交差点近くにあるクリニックです。17年前、ここの先生に「辻さん、日本を離れるなら、長生きをするためにも歯を大切にしてください」とアドバイスを受けました。歯が健康でなければおいしく食べることもできませんし、かみ合わせが悪ければ肩も凝ります。出来る限り自分の歯を健康に保ち、長生きをしようと思い、先生のアドバイスを守って歯磨きや口腔ケアにいそしんできたわけです。

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 けれども歯磨きで歯垢しこう、つまりプラークはとれますが、歯石はとれません。この歯石というやつは歯と歯茎の間に入り様々ないたずらをしてきます。歯石はプラーク(歯垢)が石灰化したものですが、これが歯を支えている歯槽骨を溶かして歯をグラグラさせます。じゃあ、どうすればいいのか? 歯石をとるためには歯医者に通わないとならないということになります。私はこの17年、年に2回ほどの割合で帰国の度、西麻布のクリニックへ通ってきました。こちらのクリニックの歯科衛生士さんは歯石除去のベテランで、ほとんど痛みを感じることがありません。フランスでも歯石除去を試したことがありますが、さすが日本人の技術は素晴らしい。ほぼ無痛で歯石が除去されました。

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 歯石がとれると、口の中がすっきりします。マッサージを終えた直後の身体のよう、口腔が爽やかになり内側が軽くなるんです。お口の中のぬめりがなくなるだけでも本当に気持ちがいいもの。私は出来るだけ日本に帰るタイミングで時間を見つけクリニックに飛び込むようにしています。来年は60歳になりますが、健康な歯と歯茎を維持することが出来ております。もちろん、歯茎は年齢とともに下がってきますし、ほっとけば歯を失いかねません。

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 西麻布の先生が私に言いました。「辻さん、これからは予防こそが一番大事な治療となります。ご自分の歯とともに生きるということは口腔ケアに尽きるのです。人前に出るお仕事をされる方はなおさら綺麗きれいな歯と歯茎を維持しなければなりません」。自分の口の中を鏡でのぞいて、白い歯と薄桃色の健康的な歯茎が見えるとうれしいものですよ。

 

今日のひとこと。 『ぜひ、歯石の除去は専門医のところで!』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に 『太陽待ち』 『サヨナライツカ』 『右岸』 『永遠者』 『クロ工とエンゾー』 『日付変更線』 『息子に贈ることば』『父Monpere』『エッグマン』『立ち直る力』『真夜中の子供』 など多数。新刊に『人生の十か条』(中公新書ラクレ) 。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。
 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら

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辻仁成「太く長く生きる」