辻仁成「太く長く生きる」(57)「子供の身長を伸ばす食べ物」

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「髪を切りまして、さっぱりしました。これからベルサイユ宮殿での晩餐会に出席です。蝶ネクタイとタキシードで決めて。」

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 14歳の息子君の朝ごはんはリンゴとヨーグルトと牛乳、そして卵料理。卵料理は自分で作るので父はらくちんです。先日、多めに出来たというので試食してみましたがとっても美味おいしいオムレツでした。彼はYouTubeを通して料理を勉強し、実践しています。それだけじゃなく、14歳にしてかなりの健康志向でして、身体にあまりよくないと言われているような食品食材は一切口にしないのです。毎日必ず有機ヨーグルトと有機リンゴを食べます。彼が信奉するユーチューバーが健康オタクなようでして、そのせいで彼は食べることに物凄ものすごくこだわりがあり、「パパ、それはかなり保存料が入っているから身体によくないよ」とたしなめられることも多々あります。バーコードを携帯で読み込むことで、そこに使われている添加物がすべてわかるアプリがあります。息子はそれを使って食品の添加物を調べてるのです。

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 レストランに連れて行っても「お水ください」というだけです。ジュースはいらないのか、と告げると、糖分はいらない、と返ってきます。「なんでそんなに食べるものを気にしているの?」といたことがあります。するとこういう返事が戻って来ました。「ぼくね、180センチ以上の身長がほしいんだ」。バレーボール部員の息子君、どうしても背がほしかったようです。現在、14歳で172センチほどあります。すでに私よりも背が高いのですが、バレーボール部員たちの中には180センチを超える子もいるのだとか。背の低い私からすると羨ましい限りです。しかし、息子は中学1年の時にパリ大会で銅メダル、2年で銀メダル、3年生で金メダルをとったので、高校生になったらきちんとした大人のクラブに所属したいと思っているようでした。彼にとっては切実な夢であり、目標なんですね。それならば応援しようということになり、背が高くなるための献立を工夫するようになりました。

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 といいましても、偏った食事はいけません。サプリメント任せの栄養補給もよくありません。実は満遍なく食べることがとっても大事なのです。カルシウムは骨を丈夫にする栄養源ですが、だからといってカルシウムばかり食べていても背を伸ばすことには即つながりません。カルシウムを吸収しやすくした上に、それを骨に定着させるためにはマグネシウムが必要となります。マグネシウムなら海藻類、アーモンドにも入っています。このことを息子に言ったら、小瓶に入ったアーモンドを見せられました。一粒食べてみると湿ってました。まずい、と言ったら、生のアーモンドはこういう状態なんだよ、と笑われてしまったのです。でもこの方が栄養価が高いのだとか。あはは、おそるべし14歳ですね。また、背を伸ばすためには、たんぱく質も必要になります。カルシウムで骨を丈夫にし、マグネシウムでそれを骨に定着させ、たんぱく質で新しい骨を作り出させるというわけです。たんぱく質が豊富に含まれているのは肉、魚、大豆などです。しかし、摂取し過ぎるのもよくありません。何事もバランスよく食べることが大事なのです。

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 息子君の目下の悩みは、ちょっと太っていることです。肥満ではありませんが、普通の子より体重が多め。彼の目標は健康的にせることなのです。「痩せなくていいよ。子供なんだから」と言いましたところ、「背を伸ばすためには太っているのはよくないんだよ。背が伸びにくくなる」と子供なりの理屈で説明されてしまいました。ちょっと長くなるのでそこははしょりますが、背を伸ばすことが今の彼にとっては何より切実なのです。そのためにはバランスよく食べて、健康であることが大事。健康的に背を伸ばす、これができたら何よりじゃないですか? ああ、今からでも間に合うなら私だって頑張りたいけれど、60歳になろうかという私には無理でしょう。あはは。あとは寿命を延ばすだけです。そのお話は次の機会に譲ることにいたしましょう。

 

今日のひとこと。 『生意気な口をきく息子に腹を立てない。その子は私しかこの世界で甘えられる人がいないのだから。』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に 『太陽待ち』 『サヨナライツカ』 『右岸』 『永遠者』 『クロ工とエンゾー』 『日付変更線』 『息子に贈ることば』 『パリのムスコめし』『父 Monpere』『エッグマン』『立ち直る力』など多数。近著に『真夜中の子供』(河出書房新社) 。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。
 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら

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