なつかしスポット巡り

世界の自動車の歴史を展示、懐かしいあの車も…トヨタ博物館(愛知・長久手市)

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 若者の車離れが言われ、車は所有するものではなくシェアして使うものという新しい文化が今始まりつつあります。しかし昭和時代、車は人だけではなく、個人や家族の夢も乗せて走る特別なモノでした。あのころの車を見ると、当時の記憶が一気によみがえってきませんか。名古屋市近郊のトヨタ博物館は、トヨタ車の博物館ではなく、自動車の誕生から現在までの歴史を国内外の様々なメーカーの150台ほどの展示でたどる自動車博物館です。副館長の浜田真司さんに案内してもらいました。 

トヨタ博物館全景

ガソリン車の発展の流れがわかる

 車は2階から時代を追って展示されています。18世紀にフランスで作られた蒸気自動車から始まり、自転車のような形から優美なクラシックカーへと進化し、20世紀になるとアメリカで大衆車が生まれます。

 「ヨーロッパでは、貴族の馬車の延長で車が作られたので豪華なものがあります。運転席は馬車の御者席なので後部の座席と仕切られています。アメリカで大量生産によるT型フォードが生まれて、車が多くの人の生活に入ってきました」と浜田さんは説明してくれます。時代を経ると欧米諸国で様々なデザインや機能を持つ車が登場し、1930年代には日本でも本格的に生産が始まります。このような車の歴史を実物でたどることができるのがこの博物館の魅力です。

 ガイドツアーが行われているので、定時(10時15分、14時)に参加するか、事前に予約をすれば、自動車発展の歴史について解説を聞きながら見学することができます。

 自動車の歴史も興味深いのですが、年配の見学者の心に懐かしさが広がるのは、3階の戦後の展示からでしょう。

パブリカ、サニー、カローラで蘇る記憶

国民車構想から生まれたパブリカと浜田副館長

 1961年のパブリカは、通商産業省(現、経済産業省)が計画していた「国民車構想」に呼応し、生まれた車のひとつです。車両価格1000ドル、当時の為替レートで36万円を目指して開発されました。浜田さんは「価格を下げるためラジオやヒーターはオプションでした。でも、クルマを求めるお客様は、合理性ではなく、ゆとりを求めていました」と言う。売れ行きは伸びなかった。

 そして1960年代半ばに登場したのが、日産・サニーやトヨタ・カローラ。先行したサニーが1000CCだったのに対してカローラは1100CCをぶつけて、「プラス100CCの余裕」をキャッチコピーにして売り出したといいます。ストレートな比較広告が行われていたようです。高度経済成長期、「明日はもっとよくなる」という時代の中で、人々はローンを組んで車を買うようになり自動車は急速に普及していきました。

 この辺りの展示になると、見学者から「これ、おやじが乗っていた車だよ」「会社に入ってこれを買った」という弾むような声が聞こえてきます。

サニーとカローラは急速に広がった

 当時、トヨタは「80点主義プラスα」という考え方を打ち出していました。欧米の自動車技術に追いつこうと頑張っていましたが、実際のところは60点、それを80点プラスαにまで引き上げようとして作った車のひとつがカローラだったのです。博物館には上位機種のブルーバードとコロナ、クラウンとセドリックももちろん展示されています。

 60年代も後半になると、日本でも国際水準の車が登場していきます。1966年、トヨタ2000GTは78時間、1万マイルの平均速度を競うスピードトライアルで世界記録を樹立し、国際水準の走行性能を実証したのです。1967年のマツダコスモスポーツはロータリーエンジンという独自技術を搭載していました。そして1972年、ホンダシビックは世界に先駆けてアメリカの厳しい排ガス規制基準をクリアしました。日本の技術力を示す時代を画した車がここにはあります。

車は記憶の再生装置

 浜田さんは、「自動車の歴史が伝えられるよう展示していますが、みなさんの記憶にあるこの時代の車には解説の必要はないと思うことがあります。ご家族で来館されると、おじいさんたちが熱心に家族に説明している風景にしばしば出会います」と言う。

 ふだんはあまりしゃべらないというおじいさんを連れて、「昔乗っていた車を見たい」と来館されたご家族がいたそうです。車の前に来ると、「この車は昔なぁ…」と車の記憶、家族の思い出、暮らしぶりを語り始めたそうです。浜田さんは「ようやく車が買えるようになった昭和30年代、40年代は、車を買うと正装して玄関で写真を撮影した時代です。車って人の記憶の中に強く残っているものですね。車は記憶の再生装置だとつくづく思います」と話しています。

 年間の来館者は26万人、そのうち3万人以上は海外からのお客様です。高度経済成長期以降、日本車は盛んに輸出されていたので、外国人にとっても、「おやじが乗っていた車」や「子どものころに乗っていた車」がここにあるのです。

 博物館はトヨタ自動車創立50周年を記念して1989年に開館しました。1999年には新館ができて、車に加えて昭和を懐かしむ家電製品や生活雑貨、写真を展示したスペースが設けられましたが、昨年秋に閉鎖しました。「昭和の家電や生活雑貨を集めた展示スペースはあちこちに出きてきたので、うちは車に特化して、ポスターやミニカー、プラモデルなど自動車関連の品物を展示するスペースにするため改修しています」と浜田さん。来年春のオープンを予定しています。

 懐かしい車一台から記憶は次々とよみがえります。さらにその車が時代の中でどのような位置づけだったかを改めて理解すると、さらに興味も広がっていきそうです。

(渡辺 勝敏)

 

トヨタ博物館
【所在地】〒480-1118 愛知県長久手市横道41-100
【電話】0561-63-5151
【アクセス】東部丘陵線<リニモ>芸大通駅から徒歩5分
【開館時間】午前9時30分~午後5時(入館受け付けは閉館30分前まで)
【休館日】月曜日
【料金】大人1000円、シルバー(65歳以上)500円、中高生600円、小学生400円
【ホームページ】http://www.toyota.co.jp/Museum/

 

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