なつかしスポット巡り

戦中・戦後の労苦を今に伝える…昭和館(東京・千代田区)

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 日本武道館や靖国神社の最寄り駅である地下鉄「九段下」から地上に出ると、金属製の外壁が目を引く建物がそびえ立ちます。1999年(平成11年)に開館した国立の資料館「昭和館」です。戦中・戦後の国民生活の様子を伝えるため、主に昭和10~30年代の実物資料約5万8000点を所蔵しています。学芸部課長の佐藤綾子さんの案内で、庶民の暮らしの移り変わりを追体験しました。

金属製の外観が特徴の昭和館

戦争をめぐる家族の思いあふれる

 常設展示室は6階と7階にあります。入り口がある7階の展示は、「戦前」と「戦中」がテーマです。

 受付を通ると、軍の召集令状である「赤紙」、無事を祈る「千人針」、激励の言葉が寄せ書きされた日の丸、家族に残した遺書などの実物が数多く展示されています。

 戦地と家族との間で交わされた手紙には、当時の思いがあふれています。

 昭和18年(1943年)、出征中のフィリピンから届いたはがきには、待望の長男が日本で生まれ、フィリピンにちなんで「比佐雄」さんと名付けたこと、現地で仲間とともにビールで乾杯したこと、上官から「何か喜(ば)しき事やある」と聞かれ、「吾(わが)子を得たり」と答えたことなどがつづられています。

 しかし、この父親はわが子を抱くことができず、翌年、レイテ島で戦死したそうです。

戦前の台所を再現

昭和10年頃の台所を再現。柱時計、ラジオ、かまどなどが並ぶ

  昭和12年(1937年)、日中戦争が始まりました。日本国内の家庭では、戦争の影響はまだ感じられません。館内に再現された昭和10年頃の台所には、「柱時計」「蓄音機」「氷冷蔵庫」、木製家具に納められたラジオなどが並んでいます。

 佐藤さんによると、「和服中心の生活」だったそうです。

 戦争が拡大し、米国と開戦した昭和16年(1941年)には、「金属類回収令」が出されました。家庭にあった鉄や銅などが徴収され、軍事用に使われたのです。

 このため、金属製品の代用品として、陶製のポンプ、竹製のランドセルが作られたことが紹介されています。「ぜいたくは敵だ!」がスローガンで、食事も、ご飯と梅干しだけの「日の丸弁当」が多く見られました。国会議事堂の敷地内に畑が作られた写真パネルも掲げられています。

防空壕で空襲の恐ろしさを体験

「防空壕」のコーナー。空襲の恐ろしさを体験できる

 戦局が悪化し、国内各地で空襲が相次ぐようになると、子どもたちは都市部から地方に疎開しました。当時の「学童集団疎開」の分布地図がパネル展示されています。

 空襲時の避難場所として、斜面や地面などを掘って造られたのが、「防空(ごう」です。

 館内には、防空壕の体験コーナーが設けられています。黒いカーテンを閉めると、暗闇の中で炸裂(さくれつする焼夷弾(しょういだんの音などが流れ、空襲の恐ろしさを体感できます。

 7階から6階に下りる階段の踊り場には、終戦を迎えた「昭和20年8月15日」のコーナーがあります。当日の新聞記事が掲示され、終戦を宣言する天皇陛下の「玉音放送」を聴くことができます。

戦後、復興への重い歩み

子どもたちの人気を集めた紙芝居

 6階は「戦後」のフロアです。

 まず目に飛び込んでくるのが、食料を求めて人々が群がるように電車に乗る「買い出し列車」、生活用品などを売買した「新宿の闇市」の特大写真パネルです。

 リアルに再現された「残飯シチュー」は、進駐軍が食べ残したものから作られた食事で、ゴミのたばこの包み紙も入っています。当時の人たちは、こんなものを食べていました。

 日本への引き揚げ船に乗った人の弁当箱は、お金などを隠すため、二重底になっています。 

 人々の暮らしは困窮を極め、父親や息子が戦死した母子家庭の苦難の様子が、写真パネルなどで紹介されています。

 そんな中で、子どもたちの人気を集めた娯楽が「紙芝居」です。展示されている紙芝居の木枠の上には、富士山の絵があしらわれています。このほか、ミニチュアの家で人形が暮らす「ドールハウス」など、様々なおもちゃも展示されています。

収入が増え、生活用品が電気化

「三種の神器」と言われ、憧れの的だった電気冷蔵庫、白黒テレビ、洗濯機

 昭和20年代後半になると、国民所得が増え、家事労働を占めていた炊事、掃除、洗濯などの道具が電気製品になりました。昭和30年前後、「三種の神器」と言われた電気冷蔵庫、白黒テレビ、洗濯機が展示されていますが、当時は高価で、なかなか庶民の手には届かなかったそうです。

 苦難を乗り越え、希望を失わずに生きた人々の生活の現場が、豊富な資料から伝わってきます。

「体験ひろば」で昭和の生活を実感

井戸の水くみを実感できる手押しポンプ

 6階には、昔の生活を実感してもらおうと、「体験ひろば」が設けられています。

 井戸の手押しポンプを動かすと、その重さが感じられます。水は出ませんが、くんだ水量が画面に表示されます。  

 玄米を精米するための「米つき棒」、隣同士で会話ができるダイヤル式「黒電話」のほか、戦時中の「国民服」、防空ずきん、女子校生の制服などが着られるコーナーもあります。

 5階は、戦中・戦後の写真や映像、SPレコード、絵画資料を検索、試聴できる「映像・音響室」、4階は、文献・資料の「図書室」があります。

 佐藤さんは、こう話しています。

 「直接戦争を経験された方々は少なくなってきていますが、戦中・戦後の生活の様子や、当時の人々の労苦や思いを知ることはできます。そして、自分より後の世代の方たちに伝えていくこともできます。昭和館では展示を見たり、当時の写真や映像を見たり、戦中・戦後に関する書籍を読むことができますので、幅広い世代の皆さんに来館していただきたい」

昭和館

【所在地】〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-1
【電話】03-3222-2577
【アクセス】地下鉄九段下駅・4番出口から徒歩約1分、JR飯田橋駅から徒歩約10分
【開館時間】午前10時~午後5時30分 ※入館は午後5時まで
【休館日】毎週月曜日(祝日または振り替え休日の場合はその翌日)、12月28日~1月4日、1月の最終土・日曜日、6月の最終火・水曜日
【料金】(常設展示室入場料)高校・大学生150円、65歳以上270円、大人300円、小学生・未就学児無料
【ホームページ】http://www.showakan.go.jp/

 

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