辻仁成「太く長く生きる」(49)「疲れないようにするためのコツ」

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「パパは休んでいて、と息子が夕飯を拵えてくれました。七面鳥と
ズッキーニのパプリカ炒め。買い物から後片付けまで全部!笑」

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 「疲れた」と思わず言葉が出ることがあります。人間関係はもちろんですけど、仕事のし過ぎや運動による疲労を脳はストレスとして感じ取り、「疲れた」というシグナルを送ってきます。疲れた時は寝るに限るわけですけど、そうしょっちゅう寝ているわけにもいきません。じゃあ、どうしたらいいのか?

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 ちょっとその前に、私たちが疲れるいくつかの理由について整理してみましょう。個人的に思いつく疲れる理由を列挙してみます。まず、やりたくないことをする時に人間はものすごいストレスを感じます。我慢は絶対によくありません。小さな我慢も積もればものすごいストレスの塊になる。無理をして頑張ることもいけません。頑張るというのは「我には張る」「眼張る」から生まれた言葉と言われています。そもそも、なんでも引き受けちゃうからこんなことになるわけです。誰にでもいい顔をしてしまう自分の性格にこそ問題があるのかもしれません。同じように、なんでもかんでも信じてしまう人も疲れやすい気がします。私が若い頃、「信じるものは救われる」という言葉が流行はやりました。しかし、信じるというイメージにはどこか強要が潜んでいます。信じられる人だな、と自然に思えるのであればいいのですが、信じなきゃ、と自分に言い聞かせたとたんストレスが生じます。あと、他人と自分を比較し過ぎるのもいけません。あの人のようになぜ自分はできないのだろう、なぜ自分はみんなと違うのか、なぜ自分だけうまくいかないのだろう、という比較は人間を間違いなく疲れさせます。成功ばかり求めるのもストレスの原因の一つです。成功を求めても本当の安楽はうまれません。あるいは周囲を見回してみてください。あなたを疲れさせる人間がそばにいませんか? つまり、人間関係で苦しむ人に一番大きなストレスが生じる傾向がありますね。結局、自分を大事にしないから疲れがたまるのじゃないでしょうか。

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 人間関係で苦しまないためには、次のようなことを心掛けるといいでしょう。1、他人というものは絶対にコントロールすることができない。2、完璧を相手に求めない。3、他人というのは自分以外の人間のことである。4、恋人であれ、親であれ、他人である。5、そもそも、思い通りにならないのが人間だ。6、人それぞれの価値観を尊重しなければならない。7、他人のあら探しはやめて、相手のいいところを見るようにする。

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 この中でも、とくに一番最初の「相手をコントロールすることはできない」というのが大事な考え方だと思います。自分の心は自分でしかコントロールできないように、他人の心も動かすことはできません。これらの大前提をもって人間関係に向かえば、ストレスにはなりません。自分と他人というのがこの世界のルールなのです。そこを最初にきちんと理解できている人はストレスを抱えにくい人だと言えるでしょう。

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 では、どうしたらストレスを抱えにくくなるのでしょう。寝るのが一番だということはわかりますが、他にもストレスを和らげる方法がいくつかあります。私が個人的に行うストレス解消行動をご紹介したいと思います。たいしたことはありませんが、お試し下さい。まず、疲れたと感じたら「コップ1杯の水を飲む」ようにしています。人間は水で出来ているので補給してあげるのです。これ、バカにできないですよ。水を飲むときに、いやなものを洗い流すイメージを持ってください。次に「梅干しを食べる」。酸っぱいものであれば結構です。「ぬるま湯にかる」「まくらを抱きしめて、横向きで寝る」「軽いストレッチを3分間だけしてみる」「ランチはオフィスの外、公園とかで太陽を浴びながら食べる」「仕事は1時間集中したら必ずトイレ休憩と称してその場から離れて小休止する」「身体によくないので、いやなことは一度忘れてみる」「楽しいことを考える」などなど。どうですか? たいしたことじゃないけど、効きそうですよね? たいしたことじゃないこと、実践できるような簡単なことがストレスを減らすおまじないだと思うのです。やらなければならない、のじゃなく、やってみようと思えるといいですね。風の抵抗を受けて飛ぶよりも風にのった鳥の方が優雅に遠くへ飛んでいます。人間も一緒じゃないでしょうか?

今日のひとこと。 『あたまが疲れないようにまずリラックスしましょう』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に『太陽待ち』『サヨナライツカ』『右岸』『永遠者』『クロエとエンゾー』『日付変更線』『息子に贈ることば』『パリのムスコめし』『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』『父 Mon Père』『エッグマン』など多数。近著に『立ち直る力』(光文社)。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。

 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら

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