なつかしスポット巡り

大正、昭和のぬくもりに触れる・・・下町風俗資料館(東京・上野公園)

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 東京・上野公園の不忍池(しのばずのいけ)に面する台東区立下町風俗資料館は、外観が蔵屋敷風になっています。4月の週末、閉館時間に訪れました。

関東大震災前の下町を復元

再現された帳場と作業場。そろばんをはじけば、番頭さん気分

 1階の入り口をくぐると、右手に商家、左手に長屋の建物が並んでいます。ともに大正12年(1923年)の関東大震災前の下町情緒が再現されています。

 案内してくれた資料館の本田弘子研究員(学芸員)は、「大正期の下町は、江戸時代の風景を引き継いだものが残っていました」と話しています。

 商家は、げたや草履の鼻緒の製造卸問屋という設定。帳場には大きなそろばん、掛け時計、縁起物の招き猫などがあります。ぼんやり眺めていると、本田さんが「どうぞ靴を脱いで上がってください。そろばんにも触ってみてください」と声をかけてくれました。

 この資料館の特徴は、一部を除き、展示物に触れてもいいことです。たんすの押し入れを開けると、着物が入っています。季節によって、衣替えもあるという芸の細かさ。まさに庶民の暮らしを手触りで感得できます。

 資料館には、区内の特別養護老人ホームの入居者らが訪れる機会もあります。井戸のある洗い場、ちゃぶ台などは昭和期とあまり変わりなく、生活用品を見たり、触ったりしては、「そうだったわよね」などと会話が弾むそうです。

昭和30年代の茶の間で涙する世代も

閉館時間で来館者がいなかったので、本田さんにモデルになってもらいました

 2階には、昭和30年(1955年)代を想定した平屋建ての家屋が再現されています。

 チャンネルをガチャガチャ回すブラウン管のテレビ、足踏みミシン、黒電話、電気釜が四畳半の茶の間空間に配置されています。この時期に青春時代を送った70歳代、80歳代の人たちから、こんな感想が寄せられています。

 「新婚家庭がこんな感じでした。でも、電気釜が買えなくてねえ」

 「ミシンを踏んで内職をして家計を支えました。買ってきたコロッケを夫婦で半分にして食べたものです」

 時には涙ぐむ人もいるそうです。

番台に座ることもできる

 また、台東区の蔵前で昭和61年(1986年)まで営業していた銭湯の番台が復元され、実際に座ることができます。

 剣玉をはじめとするおもちゃを自由に体験できるコーナーがあるほか、戦時中の防空頭巾や配給手帳なども下町の暮らしの歴史の一部として展示されています。

変わりゆく往時の姿を残すために

 展示品は、台東区を中心とした下町地域から寄贈された実物ばかり。日々の暮らしに密着した品の数々は生活臭を漂わせ、郷愁を誘ってくれます。

 資料館は昭和55年(1980年)に開館しました。

 昭和39年(1964年)の五輪開催を機に、東京は区画整理や再開発が盛んとなり、台東区内に残っていた下町の雰囲気は消える一方でした。そうした風潮に危機感を覚えた地元有志が資料収集を始め、下町の良さを伝える博物館設立の機運を盛り上げ、開館につながったのです。

 資料館を愛した著名人も多く、俳優の小沢昭一さんもその遺志で「黄金バット」の紙芝居を寄贈。毎月1回、第1日曜日に紙芝居の実演が行われています。

 本田さんによると、最近の入館者は年間7万人を超え、ここ数年は外国人の来場が増えているそうです。

 観光客であふれる上野の喧騒(けんそう)を一時離れ、かつては私たち庶民にとって一般的だった暮らしぶりをタイムスリップしてのぞいてみるのも、楽しいのではないでしょうか。この場所には、私たちの父母や祖父母、あるいはもっと前の世代の人々が悲喜こもごもの暮らしを送った息吹があふれているからです。(塩崎淳一郎)

台東区立下町風俗資料館
【所在地】〒110-0007 東京都台東区上野公園2-1
【電話】03-3823-7451・7461
【アクセス】JR上野駅、京成上野駅、銀座線上野広小路駅、大江戸線上野御徒町駅、千代田線湯島駅 各駅から徒歩5分
【開館時間】午前9時30分~午後4時30分。※入館は午後4時まで
【休館日】毎週月曜日(月曜祝日の場合は翌日の火曜日)
【観覧料】一般300円、小・中・高校生100円
【ホームページ】http://www.taitocity.net/zaidan/shitamachi/

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