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「女性医療」が必要なワケとは?  ~思春期から更年期後まで、生涯に寄り添う「女性専門総合診療」~

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 更年期世代の健康を考えることは、女性の一生を通した健康の維持・向上のために重要になっています。元日本女性医学学会理事長で、福島県立医科大ふくしま子ども・女性医療支援センター長の水沼英樹さんに、生涯を通じた女性の健康、そして医療のあり方について聞きました。

長くなっていく女性の人生 更年期が中間地点に

水沼英樹医師

  私たちの国は、未曽有の超高齢社会に突入しています。

 女性の人口は、2015年の約6525万人から、45年には約5500万人へと、今後30年で1000万人以上減少するとされています。しかし、60歳以上に限ると、約2355万人から約2553万人へと、逆に約200万人増えるとみられています。

 平均寿命も伸びていきます。女性の場合、16年には87.14歳でしたが、45年には90.03歳と予測されています(男性は80.98歳→83.66歳)。更年期以降の人生は、どんどん長くなっていくのです。

 こうした事情から、更年期以降を健やかに過ごせるようにすることは、これからの社会全体の課題です。けれども、女性の高血圧や脂質異常症、糖尿病、骨粗しょう症など、いわゆる生活習慣病が急激に増えるのも、この更年期以降の時期です。

 女性に多い骨粗しょう症や動脈硬化症などは、60歳を超えた老年期に発症したとしても、実は50歳前後の閉経期を境に、無症状のまま少しずつ進行しています。そのため、更年期の前後から、骨量や動脈硬化など健康状態をチェックして、必要に応じて生活改善や投薬治療などの対応を始めることが、将来の寝たきりや、心臓病、脳卒中などの予防に重要なのです。それが女性自身のQOL(生活の質)向上はもちろん、医療費の節約にもつながるはずです。

若い頃からの対応が、更年期以降の健康に影響も

 女性の健康に関して、もう一つ重要なポイントがあります。それは、閉経後の女性に多い生活習慣病の発症には、そのずっと以前の思春期や性成熟期の産婦人科系の疾患が大きく関わっているということです。

 例えば、思春期の卵巣機能不全症は、若い頃からエストロゲンが十分に分泌されてこないために、将来の骨粗しょう症や動脈硬化症などのリスクを高めます。40歳前に閉経する早発閉経の場合も同じことが起こりやすくなります。子宮内膜症とがんの関係も指摘されていますし、妊娠高血圧症候群が将来の高血圧、妊娠糖尿病が将来の糖尿病の発症リスクを高めることも分かっています。

 こうした研究が進む中で、産婦人科領域の医療のあり方も見直していく必要があります。

 これまでは、閉経の時期を節目として、その後の健やかな老後をサポートしていくのが「更年期医療・医学」でした。しかし、若い頃の健康状態が、更年期以降、老年期の障害や病気の発症に関わっていることが分かってきたことで、更年期のずっと以前から、生涯を通して女性の健康を守っていく「女性医療・医学」の必要性が高まってきたのです。

 こんな調査結果があります。

 妊娠糖尿病になった女性のうち、出産後もきちんとフォローを受けていたのは3分の1のみで、あとの3分の1は自分で生活習慣などを注意しながら時々検診を受けており、残りの3分の1は何のフォローもなく放置していたというのです。

 出産を終えると産婦人科医との関係が切れてしまいがち。「糖尿病のリスクが高いので」と内科医に引き継がれることも少ないし、内科側もいつ糖尿病になるか分からない人にまでは手が回らない。リスクがあることがわかっていながら、発症まで放置されてしまう。これでは、本人にとっても社会にとっても良くないですよね。

 糖尿病を発症してからではなく、出産後から誕生日検診をするとか、がん検診と一緒に糖尿病もチェックするとか、継続的に診ていくことで、将来の発症や重症化を防ぐことが重要です。

 同様に、骨密度の減少も、月経周期が不規則になってきた段階から始まり、そのまま何もしないと、閉経後数年で急激に進行する場合があります。将来の骨粗しょう症を防ぐためには、更年期以降ではなく、もっと早い段階から骨密度の維持のために、運動や栄養に気を配り、必要なら投薬治療を始めるなどの対応が求められます。

生涯を通じてサポートできる新しい女性医療へ

 こうした女性医療を進めていくには、課題もあります。

 思春期から性成熟期、そして更年期へと女性の生涯を通じた健康管理を、誰がどのように担っていくのかです。女性の一生は女性ホルモンの動きに大きく影響されるので、その関係や心身への影響について詳しく、かつライフサイクルの各段階に応じたアドバイスができる人材が必要です。

 日本更年期医学会は2011年に、日本女性医学学会へと名称変更し、人材育成にも努めています。思春期の月経困難症などから、妊娠・出産期、性成熟期の疾患、更年期から老年期にかけての生活習慣病などを総合的に診ることができ、必要に応じて各分野の専門医療につなげる「女性特有の総合診療」のシステムをつくれば、多くの女性が安心して、健やかな生活を続けていくためのサポートができると考えています。

 女性にとっても、若いうちから女性ホルモンの働きと役割を知り、妊活から働き方、病気の予防、更年期以降の健康維持まで、生涯を通じて自分の生き方を考えていくことが大切になっていますね。私たち医療者は一人一人に寄り添い、サポートできる女性医療を充実させていきたいと思っています。

 ※データは、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より。

(聞き手・本田麻由美)

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