高血圧をコントロールしよう

高血圧で一病息災~薬と上手に付き合う

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製鉄記念八幡病院院長 土橋卓也さん

 このコラムでは、これまで減塩を中心に高血圧にならないための、あるいは重症化しないための生活習慣の改善項目について解説してきました。最終回となる今回は、生活習慣の改善による高血圧治療の限界と血圧を下げるお薬(降圧薬)について、取り上げたいと思います。

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生活習慣の改善で正常化しなければ…

 減塩や野菜・果物の摂取、肥満の是正、運動などの生活習慣の改善は血圧の低下をもたらしますが、その程度は必ずしも大きくありません。例えば1日1gの減塩による血圧低下は平均で1mmHg程度、体重減量1kgでも同程度です。したがって、収縮期(最大)血圧が140mmHg台程度の方は140mmHg未満への低下も期待できますが、150~160mmHg以上あるような方の血圧を、生活習慣の改善だけで正常化させるのは困難です。したがって、私たちは生活指導のみで目標とする血圧への到達が難しいと判断した場合、お薬を差し上げることにしています。

 日本でもっとも多く使われている降圧薬は、カルシウム拮抗薬という血管を拡張させて血圧を低下させる薬です。次に使われているのがアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)という薬で、腎臓や心臓を保護する効果が期待できます。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬にも、同様の作用があります。これらの薬は、特に減塩している人で効果が強いので、お薬を飲んでいる人でも減塩が重要ということになります。それでも血圧低下が十分でない場合には、体内の塩分を排出する利尿薬を追加するのが標準的な治療です。

 よく「薬を飲みだすと一生やめられない」とか「副作用が心配」と言われます。しかし、薬を飲みながらでも生活習慣の改善に努め、血圧が安定してきたら降圧薬を減量したり、中止したりすることも可能です。また、血圧が下がりやすい夏場には薬を減らし、上昇しやすい冬場に増量することもよく行われています。最近の降圧薬は副作用も少なく安心して服用できるものが多いので、過度に心配する必要はありません。

かかりつけ医と連携し健康寿命を延伸

 きちんと薬を服用し、家庭血圧を測定して定期的にかかりつけの先生に報告していれば、脳・心臓・腎臓・血管など高血圧による影響が出やすい臓器障害の早期発見にもつながります。また、がんの健診や他の疾患についても相談することができます。日本は長寿国になりましたが、それでも男性で約9年、女性で約12年の要介護期間があると言われています。要介護状態になる大きな要因は、脳卒中や認知症、心臓病などの高血圧と関係したものです。まさに「高血圧で一病息災!」――。かかりつけの先生と二人三脚で高血圧の治療を行うことは、健康寿命の延伸につながると言えます。

 1年間、このコラムにお付き合いいただき、ありがとうございました。コラムを通じて読者の皆さんが高血圧のことを良く知り、怖がらず、侮らず、上手に付き合っていく気持ちになっていただけたら幸いです。

【プロフィル】製鉄記念八幡病院(北九州市)院長、理事長  土橋卓也(つちはし たくや) さん
1980年九州大学医学部卒業、高血圧専攻。米国クリーブランドクリニック留学を経て、2003年九州医療センター高血圧内科科長、九州大学医学部臨床教授。14年1月、製鉄記念八幡病院副院長、高血圧センター長。15年4月から現職。日本高血圧学会減塩委員会委員長。
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