高血圧をコントロールしよう

単純ではない飲酒と高血圧の関係…朝の血圧、要注意!

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帝京大学福岡医療技術学部医療技術学科長 河野雄平さん

飲酒制限は生活習慣改善の一つ

 アルコールと高血圧の関係はよく知られており、飲酒制限は高血圧治療における生活習慣改善の一つとして推奨されています。観察的な研究では飲酒量が増えるほど血圧は高くなり、臨床的研究でも飲酒による血圧上昇と飲酒制限による血圧低下が示されています。無作為介入研究をまとめた分析(メタアナリシス)では、アルコール制限により収縮期血圧(上の血圧)は2〜3mmHgほど低下しています。

 しかし、アルコールと血圧との関係は単純ではありません。一般には飲酒後には血圧はむしろ低下します。とくに飲むと顔が赤くなる人では血圧低下が大きく、脈拍数はかなり増加します。顔が赤くなるのは血管が拡張している表れで、遺伝的にアルコールを分解する働きが弱いため、アセトアルデヒドという物質が多くなることによって起こります。私たちが高血圧の患者さんについて調べた結果は、飲酒期の血圧は飲酒制限期に比べて朝や日中は高く、夜間は逆に低く、24時間の平均値はあまり変わりませんでした。

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(河野雄平:飲酒、喫煙と循環器病. 知っておきたい循環器病あれこれ32、循環器病研究振興財団、2002 より)

アルコール飲料の飲み過ぎ、血圧上昇し降圧薬の効きに影響

 したがって、飲酒の血圧への影響は24時間血圧でみれば小さいようですが、循環器病の発症が多い朝の血圧を上げることに注意を要します。また、飲み過ぎは血圧を上げるとともに、降圧薬が効きにくい治療抵抗性高血圧の原因になります。アルコール飲料のエネルギーやつまみの塩分が血圧上昇の要因となることにも気をつけてください。

長期間の大量飲酒、心不全や脳卒中の原因に

 長期間の大量飲酒は心臓の肥大や機能低下をもたらし、心筋症や心不全の原因となります。アルコールはまた、心房細動や期外収縮などの不整脈のリスクを高め、これらの不整脈は大量飲酒者や大量飲酒後に起こりやすいことが知られています。さらに、脳出血やくも膜下出血のリスクとなり、その危険性は飲酒量が多いほど大きくなります。

 しかし、アルコールの循環器病への影響は悪いことばかりではありません。心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症は、飲む人が飲まない人より少ないことが知られています。脳梗塞については、少量ないし中等量では予防的に働き、大量ではリスクとなります。好影響の理由としては、HDLコレステロールを増やすことや、血液が固まりにくくなること、他の栄養素より血糖を上げにくいことなどがあげられます。血圧が24時間でみるとそれほど上がらないことや、赤ワインに多いポリフェノールも関係しているでしょう。

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○:好影響がある、×:悪影響がある、××:悪影響が強い、△:あまり影響しない
少量:日本酒1日1合くらいまで、大量:1日2合超

 ただし,この好影響は飲むほどに大きくなるわけではありません。アルコールと循環器病との関係を表にまとめましたが、少量では好影響が、大量では悪影響が多いことがお分かりかと思います。

1日のエタノール 男性は30ml、女性はその半分…飲酒のガイドライン

 日本高血圧学会などの高血圧のガイドラインは、飲酒については男性でエタノールにして1日30ml程度まで、女性ではその半分くらいまでの量に制限することを勧めています。エタノール30mlは日本酒1合、ビール1本、ワイン2杯にほぼ相当します。大量飲酒は望ましくありませんが、少量の飲酒はアルコールによる疾患など特殊な場合を除いては問題なく、限度を守っていただければいいでしょう。

kawanophoto150【プロフィル】帝京大学福岡医療技術学部医療技術学科長・教授 河野 雄平(かわの ゆうへい)さん

1974年、九州大学医学部卒業。九州大学第2内科(現病態機能内科)、米国クリーブランドクリニック心血管研究部門、国立循環器病研究センター(生活習慣病部門長/高血圧・腎臓科部長)を経て、2015年より現職。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン執筆委員、厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」策定検討会構成員。専門は高血圧、腎臓病、循環器病、生活習慣病。

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