【特集】睡眠のヒント

<子どもの眠りを守る>(4)親も自分の生活を見直すことが大切

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 特集の最後に、子どもたちの睡眠の現状、正しい啓発のために何が必要かなどを、精神・神経科学振興財団理事長の高橋清久さんに聞いた。

――日本の子どもたちは睡眠不足になっていると言われています。

高橋清久さん

高橋清久さん

 背景に社会環境の変化があるのは間違いありません。昔、人間は「暗くなったら眠る」という自然のリズムに合わせて生活をした。当時は不眠や睡眠不足などとは無縁だったはずです。

 明治時代ぐらいから、急速に競争社会へと変わっていきました。子ども本人も「少しでも上に行きたい」と考え、同時に親も子どもに少しでもいい結果を期待する時代になった。「周囲には負けられない」との競争意識が子どもにも植え付けられた結果、睡眠時間を削らざるを得なくなってきたのだと思います。

――とはいえ、親にしてみれば、子どもが競争に負けるところは見たくないですよね。

 親は自分の夢を子どもに託しますからね。子どものためとはいえ、それが本人にはプレッシャーにもなる。それに、周囲の誰もが塾に行ったり、遅くまで同じことをやったりしているわけだから、自分の子どもだけ違うことをやっているのは不安にもなりますね。

――だとしたら、親は子どもに対してどんな指導をすべきですか?

 子どもが寝不足になっていると感じた時、短期的に「今日はたくさん寝なさい」と言ってもあまり効果はありません。人間は寝だめは利かない。

 寝不足が蓄積すると「睡眠負債」を抱えることになりますが、一番の問題は、本人や周囲が借金をしていることに気づかないことなのです。たとえば徹夜をすれば、翌日、すぐにわかりますよね。能率がガクッと下がったり、集中力が落ちたり。でも、いつもより2時間寝足りないと感じていて、能率が落ちていることを自覚しても、なんとかがんばって乗り切ってしまう。

 ただ、長い間に蓄積した睡眠負債は自覚しにくいのです。毎日4時間しか眠っていなくても、それが普通になってしまうと、どれぐらい自分に睡眠不足がたまっているかを認識できません。負債があることよりも、負債があることに気づいていないのが一番の問題なのです。親はそこを見極めてあげる必要があります。

――見極めるのも難しいですね。

 そうです。個人差が大きいですから。大ざっぱに言えば、1日6時間が睡眠時間の最低ラインだとは思うのですが、4時間や5時間の睡眠で大丈夫な人は確かにいる。だから、自分の子どもがあまり寝ていないなと思っても、支障なく毎日を過ごしているようなら、それほど慌てる必要はありません。

 見極めるのは日中の活動。子どもが、勉強や運動などで、十分なパフォーマンスができているかどうかを見てあげてください。不安に感じるのであれば、長い休みなどを利用して、睡眠時間を少し長くしてみるように指導すればいい。そのときの子どものパフォーマンスの変化を見ながら、適切な睡眠時間を判断してあげればいいのです。

――ところで、睡眠健康推進機構では、なぜ学校にまで出向いて、睡眠の出前授業をやろうと考えたのですか?

 まずは大人の社会に、睡眠不足がもたらす事故や事件などがひっきりなしに起こってきました。1979年、アメリカのスリーマイル島で起こった原発事故は、睡眠不足だった職員が警報を見逃したことが原因の一つです。それに86年のスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発、89年のエクソンモービルのタンカー座礁など、睡眠不足による人間のミスが背景となった事故も少なくありません。国内にも新幹線のオーバーランや観光バスの事故、それに医療事故など、睡眠不足が原因となった悲劇がたくさんあります。

 そのほか、睡眠不足による生産性の悪化が招く損失額は、国内で年間3兆円とも言われています。

 一方、不登校やイライラ、非行など、子どもが抱えてしまう問題の多くに、不眠の問題が隠れていることがわかってきました。子どものときの習慣は大人になってからも影響する。だから今年から、直接、子どもたちにメッセージを発信しようとスタートさせたのです。

――最後に子どもを持つ保護者へのメッセージを。

 子どもがスマホばかりを眺めていたとしても、それが新しいコミュニケーション手段になっているのですから、ただガミガミ怒るだけではダメです。子どもの睡眠時間を削る原因になっていると思うのなら、「寝室ではスマホは見ない」などの明快なルールを作る。

 それより何より、親のほうがいつもスマホを触っていたら、子どもに何を言っても説得力がない。子どものことで医療機関に相談に来た親が、自分でスマホばっかり触っているなどという場合もよく見ます。そんなときは親も同時に教育しなければいけないと感じます。子どものライフスタイルには親の影響も大きい。子どもに早寝早起きで元気な生活をさせたいのなら、親も自分自身の生活を見直すことが大切です。

(おわり)

(医療ネットワーク事務局専門委員 染谷 一)

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