私のエイジングデザイン

[女優 濱田マリさん]「ばばあ」で結構!(下) 目標は現状維持、時々“お宝”あるかも

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ボルダリングにはまり、一生の付き合いに

●濱田(下)1枚目・ちょっと気取って

――この先のお仕事やプライベートについて、どんなビジョンをお持ちですか?

 それ、聞かれると、つらいんですよ。私、将来に向かって何かをイメージして、それを実現させるために頑張るとか、あまりやらないようにしているんです。だから、そういう時はいつも「現状維持です」と答えています。ちょっと残念な答えかもしれませんが。

――現状維持も、なかなか大変ですよ。そのために、何か気をつけていることはありますか?

 心と体のコンディションを整えるのに、とても役だっているのが、6年前に始めたボルダリングです。壁をよじ登るだけで運動は足りているという実感があり、筋トレやランニングといったことは、全くやらなくなってしまいました。

 元々、「はまり癖」があって、「コレ」と決めたら、しばらくはそれしかやらなくなるのですが、冷めるのも早いんです。だから、6年も続けているのは異例といっていい。もう一生の付き合いになるんだろうと予感しています。

壁を登って自分自身が再生

●濱田(下)2替

――ボルダリングは、2020年の東京五輪で正式競技になるスポーツクライミングの種目の一つですね。始めるきっかけが何かあったのですか?

 10年ほど前、遊びで少しやってみたことはあるんですけれども、「ハマってしまいそう」という予感があり、その時はすぐ撤退したんです。当時は娘も小学校に入ったばかりでしたし、ボルダリングができる場所も今ほどたくさんはなかったので、のめり込んでしまったらやっかいだと思ったのです。

 6年前には、「ライアーゲーム-再生-」(2012年公開)という映画を撮影していたのですが、これがとんでもなくきつかったんです。私が信頼する監督が妥協を排して撮っている作品ですから、完成すれば心底「やってよかった」と思うのは分かっていたのですが、撮影中は本当にしんどかった。

 ほんの短い間に起きた出来事という設定で、映画のシーンを撮るため、同じメンバーが同じ服を着て、ずーっとマネーゲームをしとるわけです。そういう撮影が連日、早朝から深夜に及び、メンタルはぼこぼこ、フィジカルもそこそこやられていた時に、撮影現場の近くにボルダリングジムを発見したのです。ふらふらと入ってしまい、壁を登るうちに、しおれきっていた自分が映画のタイトルのように「再生」していくのを感じました。

――まさに劇的な「再会」ですね。

 その後もつらい撮影は続いたのですが、奇跡的に早く終わった日など、30分だけでも壁を登りに行きました。そのおかげで、なんとか最後まで乗り切れたんです。もはや私にとっては命の恩人のような存在で、それ以来のお付き合いになりました。

 新しいスポーツを始めると、「今までこんなところ、使ったことないわ」というような筋肉の存在を知り、筋肉痛になり、そこから進化するんです。続けるうちに、体形も変わりますよ。

しんどい仕事から極上の幸せ

 私、渦中にいる時は、「もうやめたい」などと、弱音を吐いてしまったりするのですが、時々はしんどい仕事をやらないと人間は成長しないし、そういう経験があるからこそ、日々の幸せが極上のものになると思うのです。 そして、「きつい仕事をやり終えた時には、必ず『お宝』が転がり込んでくる」ということも、これまでの人生の中で学んでおります。あの時は、ボルダリングとの出会いが、「お宝」でしたね。

――ボルダリングのどんなところが魅力なのでしょうか?

  「今日はうまいこといかなかったな、いけてないな、私」と、気持ちが下降している時でも、壁を登ると「ドンマイ、私」「やるやん、私」って思えるんですよ。それはボルダリングというスポーツで得られる達成感みたいなものなんだと思います。

  この年になると、これ以上フィジカルとかが強くなるというのは多分ないと思うんですね。「前はできたことができない」みたいなことにもなっていくんでしょう。ですから、ボルダリングも「現状維持」を目標にしています。

年を取って失うもの、得るもの

●濱田(下)3替

――これまでできたことができなくなるという喪失感は、なかなか受け入れがたいもののようにも思うのですが。

 加齢とともに体力が衰えていくのは、自然の摂理です。それを受け入れなければ、自分がさらに傷つくんじゃないでしょうか。

 私もすでに失ったものがいっぱいありますけれども、その代わりに得たものも少なくないと感じているのです。長く生きて仕事をしてきただけの「引き出しの多さ」とか「視野の広さ」とかいったものが備わっているので、あとは「時間厳守」とか「感謝の気持ち」とか「きちんとあいさつ」など、人としての基本を押さえておけば、これからも何とかやっていけるんじゃないかと思っています。

 還暦を迎える頃には、できなくなっていることも増えているかもしれませんが、その代わりに何をゲットしてるのかな、と思うと、何だか楽しみでもあるんです。

――若さに対する憧憬や対抗意識は感じませんか?

 今の若い人を見ていると、「若いヤツらも大したもんだな」と感心しますよ。平成生まれなんて、私らから見たら赤ちゃんみたいなもののはずなのですが、自分の若かった頃と比べても、はるかにしっかりしていて頼もしくて。私の周りにいるのは、勉強しながら俳優という仕事をやっている人たちだからかもしれませんが。

 そういう若者においしいものを食べさせてあげたりして、面倒をみるのが好きなんです。私自身、若い頃には人に助けてもらったり、いろいろ教えてもらったりしたものです。今度は自分が、若い人を後押ししてあげる番なんだと思ってます。

 こんな性分だから、「おっさんくさい」なんて言われるんでしょうけど(笑)。

濱田まり

濱田マリ【はまだ・まり】

 1968年生まれ。神戸市出身。92年にバンド「モダンチョキチョキズ」ボーカルとしてデビュー。95年からソロ活動。テレビ番組のナレーションをはじめ、声優としてアニメ映画「猫の恩返し」(2002年)などに出演。女優としても、映画「血と骨」(2004年)、NHK連続テレビ小説「マッサン」など出演多数。現在は「ごごナマ」(NHK総合)の金曜MC、「世界一周 魅惑の鉄道紀行」(BS-TBS)のナレーションなどを担当。13年間に及ぶフリーマガジンでの連載コラムをまとめた「濱田マリの親子バトル!」(河出書房新社)を11月30日に刊行した。2018年1月に始まるドラマ「平成細雪」(NHK-BSプレミアム)、「越路吹雪物語」(テレビ朝日系)、同年に公開される映画「いぬやしき」に出演予定。

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[インタビュー]Women’s Paths