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[女優 濱田マリさん]「ばばあ」で結構!(中) 一人娘、「冷戦」脱して頼れる相棒に

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弱点を突いてくる手ごわい相手

――今年、娘さんが大学に入られたそうですね。一人娘というのは、濱田さんにとってはどんな存在ですか?

 私が「我ながら、いかがなものか」と思っている部分を見事に受け継いでいるんですよ。ものすごく口がたつし、私の弱点を熟知していて、そこを的確に突いてきます。実にやっかいです。敵に回したくないですね。

 今年の夏、娘から「LINE(ライン)」で、「今日、オール(ナイト)するかも」というメッセージが入ったことがありました。寝ないで自宅で待機していると、始発電車で帰ってきて、「どうでした?」と聞くと、ニヤリと笑って「お土産」とスマホを手渡されたんです。

 見ると、私の大好きなゲーム「ディズニーツムツム」でハイスコアを出すプレイ動画が入っていました。以前、友達にツムツムの達人がいると聞いて、「動画を撮らせてもらってよ」と頼んだのですが、「引かれるわ!」と一蹴されていました。 もちろん、私は大喜び。娘は友達同士でカラオケボックスにいたとのこと。他の女の子たちは「朝帰り」をして親から叱られたそうです。うちは、そうなりませんでした。完敗です。

 とはいえ、したたかな面を見せるのは私に対してだけで、友達とか先輩、後輩、学校の先生、お世話になっている方のことは、大切にしているようです。皆さんから「かわいい」とか「しっかりしている」とか「おもしろい」とか言っていただくので、ほっとしています。

――外ではきちんと振る舞っている。相手や状況に応じて、ちゃんと対応を変えているんですね。

 私の目から見ても、頼もしいし、かわいらしいし、おもしろい人だなとは思うんですよ。私のどこを攻撃したら効果的かをちゃんと見抜いているという点では、「頭いいな」とも思います。

 これから恋愛もするでしょうし、いずれは社会に出てお仕事をする、家庭を持つ、子育てをする中で、いろいろな人とのかかわりを持つと思うんですけれども、私や周囲の人たちとの関係で培った能力をうまく生かしていってほしいです。

家庭内の冷戦に心も折れて

――子どもの成長は早いですね。いつの間にか大人になっている。

 ずっと子どもだとばかり思っていたのですが、ある日、ポンッと「頼もしい相棒」に昇格したんですよ。確か、中学2年の頃だったと思います。「思春期」というと何か嫌らしい感じがしますので、私は「すすんき」と言っているんですけれども、その「すすんき」の終了と同時に、脱皮して大人になったという感じです。

 「すすんき」まっただ中の頃は、本当に最悪でした。つかみ合いの喧嘩けんかがあったとか、家の中を何かが飛んでいるとか、そんなんじゃないんです。「はい」「いいえ」といった短い言葉のやり取りばかりで、心の通った会話、コミュニケーションがなかなか成立しませんでした。何せ感じが悪いので、同じ空間にいるだけで気持ちが萎えてしまうんです。

――冷戦ですか?

 そうです。まだギャーッてやり合った方が、嫌なものを出してすっきりできたのかもしれませんが、おりのようなものが一層一層降り積もっていって、その重さに耐えきれなくなる感じ。

 「この人といると気分が落ちるわ-、もう出て行ってもらってもいい」と思うところまできていました。

猫がつないだ家族の絆

――それはつらかったですね。その恐ろしい「すすんき」をどうやって乗り越えたのでしょうか?

 ロンドンオリンピックの時ですから、もう5年前のことになります。沖縄への家族旅行を提案したら、娘に「いえ、いいです」と敬語で冷ややかに断られたので、彼女が部活の合宿で不在になる間、夫婦だけで旅に出ました。

 台風の通過とかぶってしまい、ホテルで缶詰め状態になったのですが、限界に来た3日目、「ランチでも行きますか」と車で出かけました。

 すると、暴風雨の中、道路の上で行き倒れになっている子猫を発見したんです。いつ車にひかれてもおかしくない状況だったので、すかさず夫が救出し、ずぶ濡れの子猫を助手席で私が抱きかかえました。

――その子猫はどうなったのですか?

 動物病院で手当てを受け、ホテルから動物保護団体に渡されることになりました。ですが、「みんなで救った小さな命を大切にしよう」と夫と話し合い、飼ってくれる人を探すつもりで、子猫を飛行機に乗せて自宅に連れ帰りました。

 すると、家で猫と対面した娘が、別人のように丸くなったんです。猫をかわいがるのはもちろん、私たちへの接し方も、よそよそしさが影をひそめ、やさしくなりました。

 「すすんき」のトンネルの出口近くまで来ていたんでしょうが、猫が現れたのをきっかけに、一気に脱出したような感じです。 そうなると、猫を手放すことなどできなくなってしまいました。「子はかすがい」といいますが、うちでは、みんなをつないでくれているのは、間違いなく猫です。メスですから、我が家の大事な「次女」です。

――守ってあげなくてはならない小さな命を前にして、一歩大人になったのかもしれませんね。そんなふうに娘さんが成長していくのは、どんな思いですか?

 常々「人生にはギャップが必要だ」と考えているのですが、猫との出会いで化学反応が起きて、娘ががらりと変わったのを見て、その思いを強くしました。

 子どもの成長を実感した時は、「ご褒美もらったなあ」という感じですね。「子育てって、面倒くさいし、大変だったけど、そのご褒美がコレなんだわ」って。

 「私がいないと、この子は」という感覚だったのが、「あ、この人はもう大丈夫だわ」に変わる。これからも親子関係は、もちろん切れないとは思うんですけれども、私はまた私自身の人生を楽しめるなあ、という感じですかね。

――ここからが第二の青春というお気持ちでしょうか?

 いずれ娘にも彼氏とか、旦那さまができるでしょう。その人に会うのが、今から楽しみで仕方ないんです。私、これから年下のイケメンとご縁があるような予感がするんですが、それは多分、娘のパートナーだろうな、と思っています。あるいは、もしかしたら孫が男の子で、ものすごい男前に育つかも。それが私の第二の青春かもしれません。

濱田まり

濱田マリ【はまだ・まり】

 1968年生まれ。神戸市出身。92年にバンド「モダンチョキチョキズ」ボーカルとしてデビュー。95年からソロ活動。テレビ番組のナレーションをはじめ、声優としてアニメ映画「猫の恩返し」(2002年)などに出演。女優としても、映画「血と骨」(2004年)、NHK連続テレビ小説「マッサン」など出演多数。現在は「ごごナマ」(NHK総合)の金曜MC、「世界一周 魅惑の鉄道紀行」(BS-TBS)のナレーションなどを担当。13年間に及ぶフリーマガジンでの連載コラムをまとめた「濱田マリの親子バトル!」(河出書房新社)を11月30日に刊行した。2018年1月に始まるドラマ「平成細雪」(NHK-BSプレミアム)、「越路吹雪物語」(テレビ朝日系)、同年に公開される映画「いぬやしき」に出演予定。

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[インタビュー]Women’s Paths