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更年期こそ要注意! 三つの「やり過ぎ」スキンケア

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 肌のキメや小じわ、たるみが気になる――といった悩みは、更年期世代に入ると特に増えていく。そんな時期に陥りがちなのが、スキンケアの「やり過ぎ」だ。よかれと思って行っているスキンケアが、逆に肌のトラブルを招いていることもあるという。そこで、元東京女子医大教授で、「若松町こころとひふのクリニック」(東京都新宿区)院長の檜垣祐子さんに、更年期前後の皮膚トラブルと正しい肌のお手入れ方法について聞いた。

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Q.最近、肌のキメの乱れ、それに目の下のクマが目立つんです。化粧ノリも悪く、気分が滅入めいっちゃう。更年期で女性ホルモンが減ってきていることと関係あるんでしょうか? この時期に必要なお手入れ方法も教えてください。

 

 エストロゲンは素晴らしいアンチエイジング物質

  毎朝、鏡に映る小じわやたるみといった皮膚の加齢変化を目にするとうんざりしますよね。逆に、肌の調子がいいと気持ちも前向きになれるので、適切なお手入れを知ることは大切です。

檜垣祐子さん

檜垣祐子さん

 皮膚の老化には、紫外線などによる「光老化」と、生物には必ず起きる「生理的老化」の二つの原因があり、男女問わず、光老化が7割を占めると言われています。

 普通に日常生活を送っている限り、肌の老化は年齢とともに一直線に進みそうですが、女性の場合、体感的に違う気がしますよね。診療の場でも、一般に更年期後半に入る50歳を超えた頃から顕著に、しわやたるみが気になるといった訴えが増えていきます。

智子:やはり、更年期を迎えた私の年頃から急に目立つ気がします。女性ホルモンが減ることが、肌の老化にも深く関係しているということですか?

 女性ホルモンは非常に素晴らしいアンチエイジング物質です。どれぐらいの影響があるのかを数値で表せるものではないけど、エストロゲンが肌のハリや潤いを保とうと働いてくれているのは確かですね。

 まず、皮膚の構造について、具体的に説明しましょう。皮膚は、表皮と真皮、皮下組織の三つの層からなっていて、肌をふっくらとさせる土台にあたるのが真皮です。

 真皮の屋台骨の役割を担うのが、丈夫な線維状のたんぱく質である「コラーゲン(膠原こうげん線維)」で、網目状になって肌の弾力を保っています。コラーゲンとコラーゲンをつないでいるのが弾力のある繊維状の「エラスチン(弾性線維)」、網目状の隙間を埋めているのが水分保持力の高いゼリー状の「ヒアルロン酸」。これらのコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などは「線維芽細胞」によって生み出されています。

 エストロゲンは、この線維芽細胞などに作用して、コラーゲンやエラスチンなどの生成や古くなったものの分解を促しています。皮膚の適度な厚みや弾力、潤いなどを維持して若々しい肌を保つ働きをしているのです。

 エストロゲンが減少すると、肌の屋台骨がゆるんだり、水分量が減ったりして、しわやたるみの原因となるのです。

 また、シミの一種である肝斑も、女性ホルモンのバランスの変化で発生します。こちらは閉経とともに薄くなったり消えたりする傾向にあります。

 ただし、シミやしわなどは日焼けなどによる光老化の影響のほうが大きいです。

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保湿しすぎ、洗いすぎ、こすり過ぎに注意

智子:更年期は、それまでのように女性ホルモンに守ってもらえなくなり、お肌も大きく変化するのですね。そんな時期に特有の肌トラブルってありますか?

 まず、多くの人が無意識のうちに行ってしまう三つの「やり過ぎ」ケア――「保湿しすぎ」「洗いすぎ」「こすりすぎ」――が起こす肌のトラブルについて説明したいと思います。

 更年期に特に注意したいのが、肌に負担を与えている「保湿しすぎ」です。

智子:え? 年を取るほどに乾燥が気になるし、保湿は一番大切なのではないですか?

 確かに、美しい肌の第一条件とは、皮膚が適度な水分を保持していること。十分な水分があることで、すべすべとなめらかで、抵抗力もあり、皮膚が生まれ変わる周期も順調になるためシミやくすみもできにくい。女性にとってスキンケアとは、保湿が最も重要なテーマになります。

 ただ、セラミドやスクワラン、コラーゲン、ヒアルロン酸といった保湿効果の高い美容成分入りの化粧水や美容液、クリームなどを使いすぎると、毛穴に潜んで肌を守ってくれている「常在菌」のバランスが崩れてしまうことがあります。表皮ブドウ球菌やアクネ菌、真菌などの常在菌のバランスが崩れると、赤みやニキビのようなブツブツを生じるしゅさ様皮膚炎、口囲皮膚炎などを起こしやすくなるのです。

 特に40歳代以降の女性は要注意です。

智子:どうして更年期世代は要注意なのですか?

 皮膚は大変優れた構造を持っていて、外の世界から身を守るバリアであり、環境の変化をキャッチするセンサーでもあります。暑い日は汗をかいて体温が上がりすぎないように、寒い日は皮膚表面の血管が縮み、体温が下がらないようにと自律神経が敏感に働く場でもあるのです。

 しかし、更年期には自律神経失調症状がよくみられ、「ホットフラッシュ」のような血管運動性の障害が起きます。それまでは当たり前だった皮膚の機能がコントロールできなくなり、突然、顔がほてったり、汗をかいたりするようになります。その結果、顔に熱が集まることで、かゆみが出たり、化粧品が合わなくなったりといった肌のトラブルが生じます。

 すると、多くの女性が「化粧のノリが悪いし、もっと保湿しなきゃ」「クマが目立つのは年齢のせいかしら。もっと高機能クリームを使わなきゃ」という対応をしてしまい、逆に「保湿しすぎケア」による肌のトラブルを引き起こすパターンが多いのです。

 なので、この世代の方々には、私は若干、肌を乾燥気味に保ってもらうように指導しています。

智子:良かれと思ってする過剰なケアが、トラブルを招くのですね。

 そうです。また、更年期の女性に限った話ではありませんが、「洗いすぎ」による肌トラブルも見逃せません。

 特に、肌が敏感だと思い込んでいる人ほど、洗いすぎになりやすい。化粧品がまだ残っているんじゃないか、汚れが落ちていないんじゃないかと感じてしまうのです。そして次には洗顔料をしっかり落とそうと、すすぎを何十回もしてしまうのです。

 そうすると、洗いすぎになって、汚れだけでなく、必要な皮脂までもすっかり洗い落としてしまい、肌のバリアを壊すことになってしまうのです。

皮脂は天然の美肌クリームの原料

智子:でも、皮脂は洗い落とした方がいいのではないですか?

 実は、皮脂は「天然の美肌クリーム」の原材料です。皮膚表面の常在菌が、皮脂と汗を分解し、酸性の排せつ物を出します。この排せつ物が、天然のクリームなのです。

 この天然のクリームは、皮脂膜となって角質層の表面をコーティングし、肌内部の水分が蒸発しないように働きます。角質層を健全に保つことで、肌になめらかさや柔軟性も与えてくれます。外部からの刺激などからお肌を守る役割もあります。

 成分を分析してみると、脂肪酸、スクワラン、コレステロールなど複雑な構成になっており、どんな高級クリームよりも自分自身の肌になじむ最高品質のものだということを知っておいてください。

智子:じゃあ、肌のお手入れについて、どのような点に気をつければいいのですか?

 私は、世代を問わず、朝はせっけんを使わない「素洗い」を提唱しています。夜は、メイク落としと洗顔が一体になったものを勧めています。別々のものだと2回洗うことになりますからね。また、ふき取りタイプのメイク落としは、「こすりすぎ」につながるので、旅行の際など、やむを得ない時に限った方がいいと思います。

 もちろん、肌トラブルのない人は、あまり神経質に考える必要はありません。

智子:私、目のまわり赤いポツポツが出ていて、かゆくて仕方ないんです。年齢のせいで湿疹が出ているのかなと思っていたけれど、メイク落としで毎日ごしごし洗っているせいだったのでしょうか?

 影響していると思いますよ。メイク落としは結構刺激が強いのです。

 診察の際、私は「化粧を全部落とし切ろうと思わないで」とよく言っています。メイクが残ってしまうと、それが肌荒れの原因になると心配する人も多いのですが、それは勘違い。神経質にごしごし洗い落とそうとする方が、かえって肌には良くないのです。それより、しっかりと眠るなど、生活習慣をきちんとする方が肌にもいいですよ。

智子:私も勘違いしてました。更年期に入ったからこそ、保湿成分の多い高級クリームでも使わないといけないなぁと思っていたので。実は、更年期は自分の力を生かしたシンプルなケアが大切なんですね。

 そうです。この年代こそ、洗顔を簡素にして、自前の保湿クリームである皮脂を生かし、足りない分だけ保湿をすることが大事です。

 手を加えるほうがいいと思い込んでいて、過剰にケアしていることに気がついていない人が多いように思います。やりすぎ保湿で肌がゴワゴワになったことで、さらにケアが足りないと考えてしまう悪循環です。

 しかし、スキンケアの改善だけで肌の状態がよくなる人がたくさんいます。もちろん、炎症などの肌トラブルがある場合は薬を使った治療などを行いますが、シンプルなケアだけで笑顔を取り戻し、明るく生活を楽しめるようになった人をたくさん見てきました。ぜひ、肌に備わった力を信頼して、「皮膚におまかせする」という視点を持ってもらえればと思います。

(本田麻由美)

 

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