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<更年期治療>ホルモン補充療法(HRT)と快適な生活へのステップ

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 ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)は、更年期に表れる症状の改善だけでなく、さらにその先に起こりがちな女性の病気予防にもつながるとされている。具体的に、どのような効果があるのか。今回も『ホルモン補充療法(HRT)ガイドライン2017』の作成委員を務めた飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉さんに話を聞いた。

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Q.HRTは更年期症状の改善に効果があるということはわかってきました。そのほかにもメリットはありますか。認知症の予防になると聞いたこともありますが、本当なのでしょうか?

骨量を増加させ、骨粗鬆症を予防する

  エストロゲンの急激な減少によって、骨、血管、皮膚、粘膜など体全体が少しずつ、あるいは急激に変化していくのが更年期の特徴です。

 意外なことに、閉経直後からすぐに変化が起こるのは「骨」です。人間の体内では、新たに骨を作り出す「骨芽細胞」と古い骨を壊して吸収する「破骨細胞」が絶えず働いています。エストロゲンが減少すると、破骨細胞の働きが強まるため、骨がもろくなっていくのです。

 一般女性の場合、閉経後の10年間で、骨量は20%も減ると言われています。

 同じ年齢の女性でも、40代から50代では閉経や月経不順などで体内のエストロゲンの状態が一人一人で異なるため、骨量にも差が出てきます。骨量はその後も減少を続け、50歳以降になると、背中が曲がってしまう背骨の圧迫骨折、70歳以降には寝たきりの原因となる大腿骨頸部骨折のリスクも高くなります。 

 恵子:それでは、更年期症状の改善のためにHRTを行うと、減少したエストロゲンを補充することで、骨粗鬆症の予防にもなるということなのですか?

 特に、閉経してからHRTを早めに始めれば、骨量減少を抑え、骨粗鬆症の予防になることがはっきりしています。また、何歳から始めても、減少した骨量を再び増やすことがわかっています。

 40歳未満で月経が終わる「早発閉経」の場合、そのまま放置していると骨粗鬆症や心血管系の病気リスクが高まります。だから、少なくとも平均的な閉経年齢の50歳前後までは、HRTでエストロゲンを補充することを積極的に勧めています。

 これは、子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんなどの手術で子宮・卵巣を摘出した方にもあてはまります。

『女性の健康と働き方マニュアル』女性の健康とメノポーズ協会編著水沼英樹監修(2012年)

『女性の健康と働き方マニュアル』女性の健康とメノポーズ協会編著水沼英樹監修(2012年)

 

生活習慣病の予防には、HRTを開始するタイミングも重要

 恵子:年齢を重ねていくと、生活習慣病などに悩む女性も増えるようですね。そろそろ、そんな年齢に近づいているので不安です。

 生活習慣病の予防には、食事や運動習慣など、まずは生活スタイルの見直しが大切です。女性の場合は、それと一緒に閉経後の早い時期からHRTを始めることで生活習慣病の予防にもつながることがわかっています。

 HRTの安全性と有効性は改めて見直されています。60歳未満、または閉経後10年以内にHRTを開始した人は、脂質代謝がよくなり、動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞などのリスクを下げることがわかりました。

 HRTのリスクとしては、経口製剤で静脈血栓症がやや増えることが挙げられます。しかし、ジェル剤や貼り薬などの経皮吸収のエストロゲン製剤では、薬剤が肝臓を通らないため、増えないと考えられています。長期間続けることで乳がんのリスクはやや上昇しますが、大腸がん、胃がん、食道がんのリスクは減少します。

 これまでに行われた研究を統合した解析によると、60歳未満、または閉経後10年以内にHRTを始めることで、「すべての死因を合わせた総死亡が下がる」とのデータも出ています。(コクランレビュー2015※1)

 恵子:認知症の予防についてはどうなんでしょう?

 エストロゲンの減少が脳の海馬の萎縮に影響することなどから、HRTが認知機能によい効果をもたらすのではと期待されてきました。しかし、残念ながら現在のところ、HRTを行うことが認知症の予防になるとのデータは出ていません。

 今年11月に発刊された『ホルモン補充療法ガイドライン2017』でも、認知機能の維持だけを目的としたHRTは勧めていません。

より心地よく生きるために、HRTに期待できることは

 恵子:私の友人に、HRTを受けたら、思いがけず肌のくすみがなくなって顔色が明るくなったと言う人がいます。それって、HRTで若返り効果が期待できるということですか?

 HRTを行うことで、皮膚のコラーゲン量が増加します。そして、皮膚の表層のきめ細やかさや弾力性が上がり、皮膚の厚みが増す可能性があります。

 こうしたことから、乾燥感やかゆみの改善は期待できるでしょう。肌の見た目のよさへの実感は、人それぞれで一概には言えませんが、美容効果を感じる人もいます。

 また、閉経後1~2年後ぐらいから起こり始める膣の乾燥や、性交痛、膣炎には、膣の中に入れるエストロゲン製剤(膣錠)が極めて効果的です。

 過活動膀胱や尿路感染症も、エストロゲンの膣錠で改善が認められます。一方、閉経前後から増える尿もれに関しては、防止効果は認められていません。

 恵子:いろいろなことがはっきりしてきたんですね。

 ですから、自分に適したHRT処方を受けることが重要です。

 まず、自分の年齢や閉経からの年数、乳がんやその他の病気リスクをもとに医師の評価を受け、その上で、自分がどのようなQOLや健康のありかたを望んでいるかを医師とよく相談しながら、自分にとって最善の方法を選んでいってください。

 『ホルモン補充療法ガイドライン』は、そのときの参考となる医師向けのテキストです。

 HRTを必要とする女性に対し、よりその人にあった処方ができるよう、新しい研究結果に即した治療方法が進められています。

(南雲つぐみ・女性の健康とメノポーズ協会)

※1  Cochrane Database Syst Rev. 2015 Mar 10;(3):CD002229. doi: 10.1002/14651858.CD002229.pub4.

 

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