高血圧をコントロールしよう

和食文化の継承と減塩~おいしく・楽しく・健康的に

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奈良女子大学 特任教授 早渕仁美さん

 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の伝統的な食文化を見直し、継承しようという機運が高まっています。日本は世界から注目される長寿国ですが、平均寿命と健康寿命には10年ほどの開きがあります。肥満は少ないものの、国民の3人に1人は高血圧で、脳卒中や心臓病、認知症など要介護の原因となる病気が多くなっています。国際的にも、緊急に対応すべき最優先課題としてタバコに次ぐ2番目に「減塩」が挙げられるなど、減塩対策が極めて重要視されています。そこで、継承したい健康的な「和食」について考えてみましょう。

栄養バランスに優れた和食とは?

 栄養バランスが良いと言われる「一汁三菜」の和食は、「汁」「焼き物(主菜)」「煮物(副菜)」「 え物(副々菜)」の副食(おかず)が、主食の「ご飯」と一緒に一つのお膳に載る程度の食事です。典型的な一汁三菜和食の栄養価(図1)は、確かに低脂肪・低エネルギーで食物繊維が多く、日本人の食事摂取基準2015年版でみると栄養バランスは適正です。ただ、食塩相当量が多く、カルシウムが少ないということがわかります。

 日本人の食事摂取基準2015年版では、エネルギー源となっている栄養素のたんぱく質、脂質、炭水化物(アルコール含む)が、総エネルギー摂取量に占める割合のことを、「エネルギー産生栄養素バランス」といい、単位は「%エネルギー」で表しています。

図1

一汁三菜における「ご飯」と「汁物」の意義

 近年ご飯を食べる量が減り、おかずが増え、朝・昼食にパンやパスタ・麺類を る人が多くなっています。そのような食事の栄養価を分析してみました(図2)。

図2

主食抜き(おかず食)とパン食は摂取食塩濃度を高める!?

 炭水化物源のご飯(主食)を食べないと、エネルギーが低くなり、たんぱく質と脂質に由来するエネルギーの割合が高くなりますので、エネルギー産生栄養素バランスが偏ってしまいます。

 この献立にパン食は合いませんが、もしご飯をロールパンにすると、たんぱく質と脂質の%エネルギーが高くなるだけでなく、食塩相当量が1グラムも増えてしまいます。「パン食(洋食)にして減塩!」と思ったら、大間違いです。

 一方、食塩相当量を1000キロカロリー当たりの値で比較すると、基本の一汁三菜(和食)は10.7グラム、ご飯抜きは19.2グラム、パン食は12.4グラムです。国民健康栄養調査結果(2016年)では、成人1日当たりの平均食塩摂取量は男性10.8グラム、女性9.2グラムで男性の方が多いのですが、1000キロカロリー当たり摂取量でみると、男女逆転して女性の方が多くなります(図3)。女性は男性に比べ穀類摂取が少なく、バランス的に無塩の主食(ご飯)より調味された副食(おかず)の方が多いためと考えられます。

図3

具だくさんの汁物で減塩!

 「汁物は塩分の摂りすぎにつながる」と、汁物を控えるように指導されることがあります。しかし、同じ材料でも、図4のようにメインの炒め物を、具がたくさん入った豚汁にすると、食塩相当量が少なくなり、低脂肪で低エネルギーになります。具材からうま味やコクが出るので、みそやしょうゆなどが少量でもおいしくなり、油を使わずに済むからです。副食に追加されるみそ汁やお吸い物の塩分は、食塩相当量を増やすことになりますが、副食としての汁物料理であれば、最小限の塩分で、具材からのうま味やコクによって満足感を得ることができます。高齢者を始め、唾液の量が少ない人にはお勧めです。

図4

減塩のコツを伝授すると……

1.食材の持ち味を生かす!

  • 素材の持ち味やダシのうま味
  • 酢やレモンなど 柑橘かんきつ 類の酸味
  • 香辛料( 胡椒こしょう 、カレー粉など)や香味野菜( 生姜しょうが 、大葉、ニンニクなど)の香りと風味
  • 種実類(ゴマ、ナッツなど)の香ばしさや食感
  • ごま油やオリーブ油、バターなどの油脂風味
  • 牛乳やヨーグルト、チーズなど乳製品のコクや塩分
  • 加工食品の塩分や風味

 上記、食材の特徴を生かして味付けをすれば、塩分控えめでもおいしい料理になります。

2.適度な焦げや切り方、加熱法、提供の仕方で!

 表面をサッと あぶ った焦げの風味や食感、うま味を逃がさない切り方、あるいはダシのうま味を十分含ませる下ごしらえや加熱方法、適度な温度で提供するなどによって、上記の食材の持ち味をさらに引き立てることができます。

3.食塩は食材の表面に!

 おにぎりに加える食塩はご飯に混ぜ込まず表面にふる、味ご飯は炊き込みではなく、白飯に調味した具を混ぜるなど、料理表面にある塩分は少量でも感じやすく、減塩効果大です。

4.おいしい減塩調味料を活用!

 最近は、おいしい減塩調味料や加工食品が増えています。前回のコラム でも紹介されたように、日本高血圧学会のホームページには、安心してご利用いただける 減塩食品リスト が掲載されています。

献立と調理の工夫でおいしく減塩

 図1の一汁三菜和食の栄養バランスのまま、おいしい減塩和食に変えてみましょう。塩 ざけ を生鮭に替えて、臭みを消しうま味を引き出す程度の塩をふり、野菜と一緒に酒蒸しにして、ポン酢しょうゆをかけます。

 筑前煮とみそ汁を一緒にして、具だくさんのみそ汁にすると、少量のみそでも十分おいしくなり、食塩相当量は2.5gに抑えられます。しょうゆやみそを減塩にすると、おいしさそのままで、さらに1.7gにまで減らすことができます。

 フルーツヨーグルトでカルシウムが増え、エネルギー産生栄養素バランスはすべて適正範囲になります(図5)。

図5

 このように、献立と調理の工夫に加えて減塩調味料を上手に利用すれば、おいしさを損なうことなく、ご飯と汁中心の和定食でも健康的な低食塩食になり、子どもから高齢者まで安心して食べることができます。そして何より、楽しく味わって食べることが健康づくりの鍵です。

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【プロフィル】奈良女子大学生活環境学部食物栄養学科 特任教授 早渕仁美(はやぶち ひとみ)さん
1980年、九州大学大学院医学研究科博士課程修了。佐賀大学教育学部講師、福岡女子大学大学院教授を経て、2017年9月から現職。専門は実践栄養学。日本健康栄養システム学会理事、日本食育学会常任理事、日本栄養学教育学会理事などのほか、日本高血圧学会減塩委員会委員も務めている。

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