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<更年期治療>ホルモン補充療法の効果とリスク(下)

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 ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)の具体的な方法や、気になるリスクについて、今回も、日本産科婦人科学会、日本女性医学学会による『ホルモン補充療法ガイドライン』の作成委員長を務める、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉さんに聞いた。

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Q.ホルモン補充療法(HRT)には、どんな方法があるのですか? 昔、乳がんのリスクを聞いたことがありますが、本当のところはどうなんですか?

主な治療薬は、飲み薬、貼り薬、ジェル剤の3タイプ

 現在、国内で更年期障害に健康保険適用のある主なHRTの薬は、「飲み薬」「貼り薬(パッチ)」「ジェル剤」の3タイプです。飲み薬と貼り薬には、エストロゲンのみの薬と、エストロゲンと黄体ホルモンの両方が含まれた配合剤があります。3タイプのいずれでも効果はほぼ同じですので、生活の中で自分が使いやすいものを選ぶことができます。

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恵子:補充するホルモンは、エストロゲンだけじゃないのですね。黄体ホルモン剤は、どんなときに使うのですか

 HRTは、「子宮のある女性」と「手術などで子宮を摘出した女性」とで処方の仕方が違うのが特徴です。

 子宮のある人には、エストロゲン製剤とともに黄体ホルモン製剤を使います。エストロゲンだけを使い続けると、子宮内膜が増殖して子宮体がんのリスクが高まる恐れがあるからです。黄体ホルモンを併用することで、子宮内膜の増殖が抑えられ、子宮体がんのリスクはなくなります。黄体ホルモンには、エストロゲンと一緒にずっと使い続ける「持続的療法」と、1か月のうち10~14日間だけ使う「周期的療法」があります。

 周期的療法では、黄体ホルモンを使い終わるタイミングで月経のような出血が見られます。これにより、子宮内膜がきれいに掃除されるのです。

 一方、子宮筋腫などの治療で子宮を摘出した女性は、子宮体がんのリスクを考える必要がありません。エストロゲンのみの単独投与が行われます。

恵子:生理のような出血は、子宮の内膜をお掃除する役割があるのですね。それなら、生理の時と同じように、おなかの張りや胸の張りなどの症状も出るのですか?

 そうした症状がある人もいます。医師からきちんと説明を受けていないと、HRTで起こる出血やおなかの張りなどに驚いてしまうかもしれません。

 でも、それは思春期、月経が始まった頃にも感じた感覚ではなかったでしょうか? HRTによって、それまで足りていなかった女性ホルモンが再び体内に入り、子宮が潤いを取り戻したとも言えるのです。

 乳房にもエストロゲンを受け止める受容体が集まっているので、張りや痛みを感じることがあります。乳がん検査をきちんと行っていれば心配はいりません。しだいに体が慣れて、違和感がなくなる人がほとんどです。

 それに、HRTの方法は一つではありません。薬剤を変えたり、用量を半分に減らしたりなど、自分の体に合った方法を見つけることができます。医師と相談しながら進めてください。

 更年期の10年間のうち、ホットフラッシュなどの症状が本当につらいのは数年の間です。でも、その数年こそが、女性にとっては仕事や子育て、介護などで忙しく、休みたくても休めない時期ではないでしょうか。

 HRTは、そんな時期の体調コントロールに役立ってくれる治療法です。うまく使って大変な時期を乗り切ってほしいと思っています。

HRTと、がんのリスク 本当はどうなの?

恵子:うまく使えば、生活をラクにしてくれる治療ですね。ただ、気になるのが、がんのリスクです。HRTを考えていた友人は、「乳がんになるから、やめておいた方がいいよ」と言われたそう。本当のところ、どうなんですか?

 女性ホルモンとがんとの関係は、現実以上に誇張されてしまい、「HRTは怖い」という印象を持っている人がまだ多いようですね。国際的な研究から、現在、はっきりしているところを説明しましょう。

 まず、子宮体がんと子宮頸がんについてです。

 先ほども話したように、子宮のある人にエストロゲンのみを補充すると、子宮内膜が増殖し、子宮体がんのリスクが高まります。そこで、HRTでは黄体ホルモンを併用することで、子宮内膜を掃除する治療を行います。特に、エストロゲンと黄体ホルモンを同時に使い続ける「持続的療法」では、子宮体がんのリスクは、HRTをしない場合に比べて、むしろ下がっています。

 また、子宮けいがんはウィルスが原因なので、HRTがリスクを高めることはありません。

 次に、乳がんについてです。

 今から15年前、米国の大規模臨床試験であるWHI(Women’s Health Initiative)研究の中間解析結果(2002年)から、HRTは乳がんなどのリスクを高めるとされ、大々的に報道されて世界の更年期医療に大きな影響を与えました。

 しかし、その後の研究から、国際閉経学会などの専門機関で見直され、現在では次のように発表されています(「グローバルコンセンサス2016」より抜粋)。

・HRTが原因とされる乳がんリスクは非常に小さく、1年の使用で1000人に1.0人未満である。これは、一般的な乳がんのリスク因子(座りがちな生活習慣、肥満、アルコール摂取など)による増加と同じかそれよりも低い。

・50歳以上の女性のHRTと乳がんリスクについて、エストロゲン単独の治療ではリスクが減少し、黄体ホルモン併用の治療では増加するとみられる。HRTによる乳がんリスクの増加は、主として黄体ホルモンの併用と使用期間に関係している。

恵子:それでは、「HRTは乳がんになりやすい」というのは、間違った情報なのですか?

 現在、5年未満の使用であれば乳がんのリスクは増加しないということが、世界的な専門機関の間で合意されています。

 HRTが新たながんを作り出すわけではありませんが、とても小さくて検査で見つけられないような乳がんの芽があれば、HRTで育ててしまうリスクがあるとも言われています。

 そのため、乳がんの家族歴がある人や、過去に腫瘤しゅりゅうを指摘されて精密検査を受けたことがある人などは、HRTを始める前に詳しい検査を受けることをお勧めしています。

(南雲つぐみ・女性の健康とメノポーズ協会)

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