高血圧をコントロールしよう

減塩食品を上手に使おう…表示内容を注意深く吟味

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北村記念クリニック 院長 安東克之さん
(日本高血圧学会減塩委員会副委員長)

 日本国内の食塩摂取量は世界に比べて極めて多く、減塩は高血圧の予防・治療に欠くことができません。現在の食生活においては加工食品が食塩摂取のかなりの部分を占めています。しかし、便利で味も満足のいく加工食品がたくさんある現在では、これを手放せないのが現状です。

 減塩の加工食品を上手に利用することが、その対策としてあげられます。減塩食品は高血圧の患者さんに利用していただくだけでなく、健康な方に高血圧予防などに役立てていただくことも大切です。色々な品質の減塩食品がありますが、その品質は年々向上しています。最近では技術的な進歩によっておいしい減塩食品が世の中に多く登場するようになってきました。今までと変わらない使い方でおいしく減塩できる食品が最もおすすめできるものです。

日本高血圧学会、減塩食品リストを公開

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日本高血圧学会の減塩食品リスト

 逆に、味を考慮していない減塩食品は通常品より使用量が増えてしまうこともあり、それでは意味がありません。日本高血圧学会(JSH)では減塩率が20%以上のおいしく優良な(栄養表示などが適正な)減塩食品を掲載した「JSH減塩食品リスト」(http://www.jpnsh.jp/data/salt_foodlist.pdf)をホームページで発信しております。このリストを減塩生活の一助としていただけると幸いです。

2020年から「食塩相当量」表示に統一

 さて、ここでは減塩食品を利用する際の注意点について、整理してみたいと思います。

 まず、食塩相当量とナトリウム量は異なります。食塩(塩化ナトリウム:NaCl)は、ナトリウム(Na)とクロール(Cl)が結合したものですので、食塩とナトリウムは同じものではありません。2020年から食品の栄養成分表示は食塩相当量に統一されますが、現在は2015年にナトリウムが食塩相当量に切り替えられてからの移行期で、食塩相当量とナトリウムの表示が混在しています。

 パッケージにナトリウム量だけが記載されている場合には、食塩相当量に換算する必要があります。ナトリウム量は2.54倍すれば食塩相当量に換算できます。実生活では、簡便に「ナトリウム(g)×2.5=食塩(g)」で計算すればいいでしょう。

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減塩率はあくまで目安、比較は食塩相当量で

 減塩率はあくまでも目安に過ぎません。減塩率は従来品から何%減塩になっているかを示す値です。文部科学省がまとめた日本食品標準成分表に掲載のない食品では、標準的な塩分の量が決まっていないために、従来品(自社製品)と比較しています。従来品の食塩相当量は同類の食品でも各社で異なりますので、複数の同類の減塩食品を比較する場合は減塩率ではなく食塩相当量(またはナトリウム量)を比較しなければなりません。

 また、調味料などでは、減塩率は低くても濃い味であるため使用量が減り減塩につながる一方で、逆に減塩率は高くても味が薄いために大量に使用してしまい、減塩にならないこともあります。個人の味覚に頼って調理するので、調味料の減塩率が、そのまま出来上がった料理の減塩率と同じになるわけではありません。

慢性腎臓病患者はカリウムの含有量にも注意が必要

 慢性腎臓病の患者さんはカリウムの含有量にも注意が必要です。健康な人はカリウムを積極的に取るべきですが、腎臓が悪くなるとカリウムの体外排泄はいせつが困難になるため、高カリウム血症を避けるために制限する必要が出てきます。減塩食品でナトリウムの代替にカリウムを用いる場合もありますが、慢性腎臓病の患者さんが使う可能性がある減塩食品はカリウムの量を食品の栄養成分表示に記載するべきです。しかし、残念ながら、カリウムの表記は義務化されていません。「JSH減塩食品リスト」ではカリウム表記を掲載の条件にあげています。

表示数値と実際の食品には差

 表示された数値と実際の食品の数値には差があります。食品メーカーが加工食品を製造する時には、仕入れる原料や製造過程によるブレが、ほぼ例外なく起きてしまうからです。このブレは食品によっても異なります。ナトリウムの含有量が微量である場合や、水産・畜産物などを原料に使用する場合、その差はさらに大きくなるといわれています。食品表示法に基づく食品表示基準によると、ナトリウムの場合、成分表示と実際の食品との許容差は、微量の場合を除き±20%と定められています。

減塩食品の賞味期限に注意

 一般的に食塩相当量を低下させると食品の保存性は低下します。減塩することによって賞味期限が短くなる場合がありますので、チルド食品などは賞味期限に十分な注意が必要です。食品全般に言えることですが、アレルギー表示をよく見て確認することも大切です。

 減塩食品のみに限ったことではありませんが、食品のパッケージに記載された内容は注意深く吟味する必要があります。そして自分自身の健康に責任を持つためには、正しい知識を持って適切な使い方をしていくほかはありません。

 なお、減塩食品は高血圧に対して万能というわけではありません。特定の食品に偏った摂取をしたために、他の栄養素の過不足が生じてかえって健康を害するといったことがないように適切な使用をお願いします。

kao_ando【プロフィル】北村記念クリニック院長 安東克之(あんどう かつゆき)さん
 1979年、鹿児島大学医学部医学科卒業。88年、米国アルトン・オクスナー医学研究所高血圧部門客員研究員、2008年、東京大学大学院医学系研究科特任准教授などを経て、14年から、北村記念クリニック院長。16年から日本高血圧学会減塩委員会副委員長を務め、高血圧治療ガイドラインの策定にも関わっている。

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