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サッポロHD 福原真弓取締役インタビュー 健康第一、社員を「ほっときません!」

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 サッポロビールは、新入社員の離職率が低く、従業員の定着率が高いアットホームな雰囲気で知られています。ただ、飲酒の機会が多く、営業活動が深夜に及ぶこともあるため、社員の健康対策は常に大きな課題です。同社で人事部長を務め、現在は、食品・飲料のポッカサッポロフード&ビバレッジ、外食のサッポロライオンを含むグループ企業を統括し、健康経営の旗振り役を務めるサッポロホールディングス(本社・東京)の福原真弓取締役人事部長に話を聞きました。

新卒者の離職率が2%台

――大卒者の入社3年以内の離職率が平均で3割と言われる中、サッポロビールは2%台です。この要因をどう考えますか?

 当社の商品は嗜好品(しこうひんであり、ブランドビジネスでもあるので、自社愛と自社製品愛が強い社員が多いのかもしれません。

 採用面接でも、「こんなにビールがおいしいのに、なぜ業界4位なのか」「体育会で全国1位になれなかったけれど、サッポロを1位にしたい」などと、熱い思いをぶつけてくれる人がいます。

  採用時から、 「サッポロで何がしたいのか」「自分のキャリアをどう作るのか」「何のために働くのか」といった青臭いことを考え合う場を意識的につくってきました。

 所属長とは別に、先輩社員が業務上の相談相手になる「チューター制度」や、若手同士で時間を共有し、身近な悩みや疑問を話せる「新入社員サポーターズ」もあります。今年始まった「白熱ラボ」では、若手同士で議論し合う場も設けています。  

 そういうところが社員の定着につながっているのではないかと思います。

「健康創造宣言」で全社体制を強調

――働き方改革と健康経営が企業にとって重要テーマになっています。

 働き方改革と健康経営は、切っても切れない関係です。従業員の健康が第一というのが同じ考え方の源だと思います。

  当社の場合、業務生産性を上げ、現場の仕事の仕方を変える働き方改革は、サッポロビールなどの事業会社が、グループ企業に共通する課題である健康経営はホールディングスが、それぞれ音頭をとっていこうという整理をしています。

  健康経営に関しては、健康の「管理」「改善」「予防」という三つの段階があると考えています。もともと工場を持つ製造業なので、安全・健康の仕組みをつくってきたベースはあります。そこは健康管理が中心でしたので、改善、予防にこれから踏み込んでいこうと思います。改めて先日、ホールディングス社長の尾賀(おが真城(まさきから全社員に向けて「健康創造宣言」をしてもらいました。

 ――健康経営の主な取り組みを教えてください。

  グループ社員の健康相談の相手になる保健師をエリアごとに配置しています。今年8月には、「健康アプリ」を配布しました。個人の健康状態を入力し、心身の状況など、それぞれの事情に応じたサービスが受けられます。会社を通さずに、専門家に直接相談できる仕組みもあります。従業員の健康には積極的に関与していきたいと思います。 

 ――会社の関与を嫌う社員もいるのでは?

 「健康創造宣言」は会社を挙げた姿勢の表明です。「ほっといてちょうだい」という人はいると思いますが、「ほっときませんよ」という宣言かもしれません。健康を維持してもらわないと会社も困るのです。「健康的に頑張る」「適正に休む」ということは必要ですよね。

 終業後11時間は「業務禁止」に

――サッポロビールは今年春、「勤務間インターバル制度」の試行を始めました。

 業務が終わってから次の日の仕事を開始するまで最低11時間空ける制度です。首都圏のいくつかの営業部署で、テスト運用をしてもらっています。

――反応はいかがですか?

 何人かに話を聞いたら、「時間への意識が変わった」と言われました。飲食店向けの営業活動は夜にも及びます。一番お酒が飲まれる場面、現場があるからです。この営業を、何時まで、どこに対して、どれだけの回数やるのか。

 深夜まで飲食店を回ると、11時間以上空けなければいけないので、これまでのように翌日の午前9時に出社できません。「朝に書いていた日誌をいつ作るか」「隙間の時間をどう見つけるか」といったことを、今回のインターバルをきっかけに強く意識するようになったそうです。「睡眠時間が長くなった」という現実的な話もありました。

  「すごく大きなチャレンジだ」と、ある営業部署の所属長が話していました。「サッポロビールの根底にある開拓者精神でやるんだと言い聞かせている」「お得意先へのサービスを落とさないで、どうやってやるか考える機会になっている」と言われました。

――インターバル制度は今後、どう広げていく予定ですか?

  サッポロビールでは、来年春の本格導入に向けて動いています。

――営業現場は、お付き合いも含め、飲酒の機会が多いと聞きます。健康面でのアルコール対策について、どう考えますか?

 ビール会社の社員だからと言って、全員がお酒に強いわけではありません。自分の適量がどの程度か知ることが重要で、「適正飲酒」に尽きます。そこは、しつこく言っていきたいと思います。会社として飲むことを無理強いする上司もいません。

  一例ですが、首都圏の業務用の営業を担当していて、お酒が飲めない営業マンもいます。自分はさほど飲まず、お客様に気持ちよく飲んでいただく営業手法を身につけ、今では大きなお得意様を持っています。彼は「お客様とのコミュニケーションに細心の注意を払い、とにかくお客様をよく見ている」と話していました。「一緒にお酒を飲んで、わーっと盛り上がるのではなく、話の内容や話術を磨くしかない」と言っていましたね。こういうケースは増えると思います。

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