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[元プロテニス選手 杉山愛さん]人生の優先順位をつける(下)毎日が「ワーク・ライフ・ハーモニー」

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仕事とプライベートの調和を

杉山愛(下)メイン_re

――最近、「ワーク・ライフ・ハーモニー」という言葉を口にされています。一般には仕事と生活をともに充実させる意味で、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が広がっていますが。

 仕事とプライベートが「うまく混じり合って、調和がとれている状態」を目指しています。仕事も家庭も一緒に楽しく進められる状態ですね。自分自身が実践することで、女性の働き方として広めていけたらと考えています。

――今は調和がとれている状態なのですね。

 そうですね。今が一番充実して、調和しています。
 ウィッシュリストを書いたことで、結婚や出産など自分の優先順位が見えました。その次には人生の方向を見つけたかったのです。テレビへの出演、育児、テニスのコーチングなど、いろいろ試行錯誤していたら、自分らしくできるものが見つかってきた。「自分に何ができるのか」「何が向いているのか」「何をやっているときが楽しいのか」など、実際にやってみないと分からないことって多いですよね。
 プロ選手を引退して8年たちますが、3年ぐらい前から、主人が仕事のマネジメントをしてくれるようになり、一緒に行動するようになって、プライベートとの調和など、人生の方向が見えてきましたね。

ウィッシュリストは増え続けていく

――当初、100個のウィッシュリストを最初に作りましたが、これまでの達成度は?

 40個ぐらいは達成できました。でも、リストはどんどん更新されているので、まだまだたくさんあります。

――今、リストにはいくつの項目があるんですか。

 トータルで130~140個ぐらいになりました。達成すると、リストの項目に「done」(実現した)と書いていけるのがうれしいんですよ。例えば、お仕事をされている方も「したいこと」が決まっていない方っているじゃないですか。毎日、もやもやしながら生活している人や、仕事のことしか考えていなかった方などにも、「自分のしたいこと」をリストにすることはお勧めしたいな。

――専業主婦でもウィッシュリストを書けるんですね。

 もちろん! 
 生活が忙しいと自分と向き合う時間ってなかなか取れないじゃないですか。1日5分でもいいから、手帳やスマートフォンなどで、自分の「したいことリスト」を見ればいいと思うんですね。人間は常に変化していくので、もしも興味がなくなっていたらリストから消しちゃえばいい。私のリストだって以前と現在では全然違いますから。

――ちなみに現在の最大のプライオリティーはなんですか。

 いろいろなお仕事をしている中で、やっぱり自分は「テニスの人」なんだと再確認したところです。後進の指導をしている時が一番楽しいですね。去年の「全仏オープン」から、テニスのグランドスラム(ウィンブルドン、全米、全豪、全仏)の解説を現地でやっていますが、世界のトップレベルのテニスを常に見ておくことで、コーチングにも役立っています。
 プロ選手だった時代に大切にしていた2本柱があって、一つはプロであるからには、お金を払って見に来てもらう方に元気や勇気を感じてもらえるプレーをしたいということ。もう一つは仕事を通して自分磨きをしたいということです。選手をやめても、この2本柱を大切にしています。メディアに出る時、講演する時、それにテニスを教える時も、人を元気にしてプラスのエネルギーを感じてもらい、それに伴って自分も成長したい。

――今40歳代前半です。今後のことは考えていますか。

 老後のことまで結構考えています(笑)。3年後に東京でオリンピック・パラリンピックがありますから、そこまでは家族を巻き込みながら、「ワーク・ライフ・ハーモニー」を実践していくつもりです。今2歳の息子が学校に行くようになると、自然と彼中心の生活になると思います。以降は、その時の環境で何ができるかを手探りで考えます。
 あとは自分のテニスクラブがあるので、そこを基盤にコーチ業もしっかりとやっていきます。

――その姿勢は、多くの女性にとってもいい参考になります。

 ぜひ作っていただきたいんですよね、ウィッシュリストを。「ちょっともやもやして心地悪いわ」という方にはお勧めです。とにかく、毎日を楽しむことがキーになると思います。

子供は社会からの預かりものだから

――年齢を重ねて、体調やメンタル面での変化はありますか。

 それほど感じてはいませんが、引退してから運動量がガクッと減ったことは気になっています。引退して3か月後ぐらいの時、モチベーションがなくなってしまって。自分の体のケアが後回しになり、体調を崩したことがあります。寝ている時にめまいで天井がぐるぐると回ったり、肩凝りがひどくなったり。体というより神経面の変化だったのだと思います。健康の大切さを痛感したので、それからはマッサージに行くなど、体のケアをしっかりするようにしています。メンタル的にはストレスが減り、イライラはなくなりましたね。選手時代はピリピリしている時期がありましたからね。

杉山愛(下)サブ_500

――そういうタイプに見えないです。プレッシャーに強そうですが。

 全然強くないです。自分の調子がいい時は、人にも優しくできるんですけれども、調子が悪くなってくると、ピリピリしちゃっていました。今は本当にストレスがほとんどありません。主人が一緒に仕事をしてくれるようになってからは、さらにストレスが激減しました。

――「ワーク・ライフ・ハーモニー」そのままです。

 本当に自分1人ではできないことばかりですね。
 私の母は、「自分の子供も社会からの預かりもの。いつかは社会にお返しする」という考えでした。自分でも息子を社会から預かっているつもりで責任を持って育てていますが、1人で抱え込む必要はないと思うようにもなりました。自分だけではなく、社会にも助けてもらいながら育てていけばいいと考え方を切り替えたら、だいぶ楽になりました。

――杉山さんにとって、お母さまの存在は大きいですね。選手生活のスランプの時期でも、体外受精への挑戦の時でも、お母さまの言葉が決め手になることが多いようです。

 私は母が大好きなママっ子でした。すごく物事を客観的に見ることができる母なんです。私を育てている時も、自分の所有物というよりも、母と子の距離感を大事にしてくれたみたいで、すごく心地いい環境で育った実感があります。
 子供って、勢いがある時には勝手にずんずん進んで行くものだと思うんですね。私の場合、困った時に振り向いたら、そこに母がいてくれる感じでした。
 自分にとって、今まででもっともつらかったことが、先ほど申し上げた「選手をやめたいほどの大スランプ」「子供はいるのか、いらないのかの選択」でした。どちらの場合も、母から「何をそこで足踏みしているの」って言ってもらえて、すごく気が楽になりました。いつも「そうだな、私らしくなかったな」と気付かせてくれます。本当にすごくいい母と子の関係だったと思います。

(終わり)

杉山愛プロフィル写真200

 杉山愛【すぎやま・あい】

 1975年、神奈川県横浜市生まれ。4歳でテニスを始め、7歳からプロを目指す。15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位。1992年、17歳でプロに転向。グランドスラム(GS、四大大会=全豪、全仏、ウィンブルドン、全米)大会などで活躍、GSのシングルスでは2000年全豪、04年ウィンブルドンでベスト8入り。ダブルスでは00年全米、03年全仏とウィンブルドンで優勝を果たした。GSのシングルス連続出場62回は世界記録。プロテニス女子での自己最高ランキングはシングルス8位(04年)、ダブルス1位(00年、日本人初)。五輪にも4回連続出場した。09年、34歳で現役引退。現在はスポーツキャスター、コメンテーターとしてテレビなどで活躍。情報番組の「スッキリ!!」「情報ライブミヤネ屋」(日本テレビ系)などに出演中。また、自らが代表を務めるテニスアカデミー「パーム・インターナショナル・スポーツ・クラブ」などで、後進の指導にもあたっている。

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[インタビュー]Women’s Paths