私のエイジングデザイン

<女性ホルモンを知ろう>(下)ドラマチックに変化する女性のカラダ

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まるでジェットコースター! エストロゲンの動き

 就職、結婚、出産、キャリアアップなど、人生の節目に女性ホルモンの変化の時期が重なり、生き方の選択に大きな影響を与えることがある――。

 そう聞いた美咲、愛、智子、恵子の4人は、会社の健康ルームのセミナーに出向いて、目を丸くした。

 配布された「女性のライフステージとエストロゲンの変化」のグラフを見ると、10歳頃から急激に上昇するエストロゲンは、40歳ぐらいまでほぼ横ばいで推移し、それから50歳前後にかけて急降下していたのだ。 

 「まるでジェットコースターみたいね!」「女性ホルモンが年齢とともに変化することは知っていたつもりだったけど、こんな極端な動きだなんて……」

 早速、一番若い美咲が、この日の講師である東京医科歯科大学の学生・女性支援センター助教(医学博士)の有馬牧子さんに、質問を切り出した。有馬さんは、NPO法人「女性の健康とメノポーズ協会」の理事も務め、女性の健康とワークライフバランスに関する専門家だ。

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Q.今つきあっている彼と結婚するか、まだ分からないけど、将来、子どもは絶対欲しいんです。仕事も続けたいと思っていますが、私みたいな“アラサー世代”が知っておくべきことってありますか?

 20歳代後半から30歳代半ばにかけての“アラサー世代”は、今後の生き方を選択し始める時期です。仕事では、社会人としての自分の将来像を思い描き、目標に向けて努力し、充実感も得られるように。プライベートでは、結婚や出産はどうするか、出産するならいつ産むのか、仕事を続けるのか――といった決断を迫られます。友人の出産など周囲の環境変化もあり、自分はどう生きていくのかを考えさせられるようになります。

 この時期の女性の体は「性成熟期」を迎え、女性ホルモンの分泌が活発化します。少々の困難は若さと元気で乗り切れるなど、心も体も充実しています。

 一方で、注意したいのが、月経周期が乱れる「月経不順」や、生理痛などが日常生活に支障を来すほどの「月経困難症」などです。生理が始まる前の約2週間に様々な不調が起きる「月経前症候群(PMS)」も、多くの女性が悩まされる症状ですね。このPMSは“アラサー世代”だけでなく、20歳前後から40歳代後半までが当てはまります。

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月経の不調は 放置しないで

 例えば、生理痛がひどくても「仕方ない」「薬を飲めばいい」と無理に我慢していたり、月経が何か月も来なくても「ラクでいいや」と放置してしまったり。時々、そんな症状を抱える人に出会うことがありますが、あまり軽く考えていてはダメです。

  その症状の裏に、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている場合があります。これらを放置すると、将来、不妊の原因、その中でも子宮内膜症や子宮体がん(子宮内膜がん)になることもあります。晩婚・晩産傾向の最近では、30歳代後半に結婚して、子どもが欲しいと思った時に、初めて自分の病気に気づくといったケースもあります。

 だからこそ、若いうちから自分の体のことを積極的に知ろうとすることが大事です。月経不順や無月経などの症状がある場合、大丈夫だと自己判断して放置しないで、学校や会社の健康センターや婦人科クリニックなどで一度、相談することをお勧めします。ひどい生理痛の治療法などもありますからね。

  今の日本女性が一生に産む子どもの数は、平均で1.46人(2016年)。12歳頃に初潮を経験し、50歳頃に閉経を迎えるのが平均的です。現代女性が経験する排卵と月経は、450回にも上ります。6人や7人のきょうだいが珍しくなかった昭和の初め頃(1930年前後)に比べ、100回ほど多い計算になります。

  排卵や月経は、卵巣や子宮に負担がかかります。月経や排卵回数が増えたことで、子宮筋腫や子宮内膜症、それに卵巣がんや子宮体がんなどのリスクも上昇しています。自分の体についてしっかり知ることで、ただ病気を恐れるだけではなく、必要な対応ができるようにしておくことが大切です。

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Q.「結婚して5年。これまで仕事中心だったけど、そろそろ私も子どもが欲しいんです。40歳が近づき、ちょっと焦っていますが、今からでも大丈夫ですよね?

 35歳を過ぎると妊娠率は下がっていきます。ただ、学生に「何歳まで子どもを産めると思う?」と質問すると、「月経がある間は、何歳でも産めるんじゃないんですか?」との答えが返ってくることが、少なからずありますね。

 また、「不妊治療をすれば何歳になっても産めるんでしょ」と、考えている若い女性も多いです。日本産婦人科学会によると、代表的な不妊治療の体外受精でも、出産に至るのは、34歳までは1回の治療あたり2割程度で、年齢と共に下がっていき、40歳を超えると1割以下になります。一方で流産の確率は年齢とともに高くなっていきます。不妊治療は経済的、身体的な負担が大きいのに、出産にまで至らないケースも多い現実が、実はあまり知られていないのです。

 子どもが欲しいと考えている人は、妊娠・出産をあまり先送りしないように、若いうちから自分の人生をデザインしておくことが必要です。

 これまで保健教育・性教育では、「どうしたら避妊できるか」ばかりが教えられているように感じます。本当は、「どうしたら、きちんと授かれるか」ということも教えてほしいと思います。そのことを正しく理解するためには、女性ホルモンの役割や働きを理解し、自分の月経周期を知ることが欠かせないのです。

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Q.40歳代半ばになって疲れやすくなったし、ちゃんと眠れないせいかイライラしやすいんです。グラフを見ると、40歳を過ぎるとエストロゲンが急降下していますが、何か注意すればいいことってありますか?

 30~40歳代は仕事のやりがいを感じるようになる一方で責任も増え、社会人として充実した時期ですね。まだ更年期とは言えなくても、月経が乱れたり、不安定になったりする人もいるかもしれません。30歳代前半だった頃の自分と比べ、「気持ちは若いままなのに、体がついていかない」など、何となくの不調を感じる人もいるでしょう。

 この世代には、めまいや耳鳴りを自覚して耳鼻科に行ったり、手のこわばりを感じて整形外科に行ったりして、「何も問題がない」と診断される人が多くいます。仕事のストレスや疲れなど様々な原因が考えられますが、ホルモンの変化が背景にある可能性もありますので、かかりつけの婦人科医を持つことをお勧めします。

 日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳前後とされています。更年期は、閉経前後の5年、およそ10年間のことをいいます。そのため、40歳代半ばぐらいから更年期の症状が出る場合もあります。

乗り切るコツは 「自分を責めない」

 体に不調を感じると、「私はこんなこともできなくなった」「怠け者になった」と自分を責めてしまう人が多くいます。しかし、女性には不調を感じる不安定な時期があることを知り、自分を責めないことが悪化させないコツだと思います。日本を含めアジアの女性には、更年期の症状として、精神的な症状、抑うつ的な症状が出るケースも多いようです。

 最近は、漢方やホルモン補充療法など、更年期障害に対する治療法も進化してきました。40歳代半ばになって不調を自覚した時、「治療という選択肢もある」「相談できる場所がある」ことを知っているだけで、心が軽くなるケースもあります。かかりつけ医や社内のカウンセラーなどのほか、「女性の健康とメノポーズ協会」のように電話相談で支援を行っている団体もあるので活用するといいでしょう。

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Q.じゃあ、アラフィフの私はどうでしょう? このところ、仕事は猛烈に忙しいのですが、たまにホットフラッシュとか動悸とかがおきるんです。これは典型的な更年期の症状ですか?

 更年期には女性ホルモンが急激に欠乏し、心身に不調を生じやすくなります。突然カーッと体がほてり、汗が噴き出すホットフラッシュや、めまいなどに加え、肌のキメが衰えたり、髪の毛が抜けたりと、美容にかかわる症状もあります。

 「私にはそんな時期はなかったわ」という先輩女性もいますが、単に症状が目立たなかっただけだと思われます。実際に50歳前後の女性の8割以上が、何らかの不調を抱えているという調査もあります。

 50歳前後は、職場での責任も重くなり、指導者としての役割も求められます。家庭でも、子どもの受験、親の介護など、ストレスが多い年齢です。こうした生活環境によるストレスが、更年期による不調を悪化させてしまう場合もあります。

 日本女性の平均寿命が世界2位の87.05歳で、中には閉経後の人生の方が長くなる人もいます。女性ホルモンの欠乏により、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病を招いたり、骨がもろくなる骨粗しょう症になりやすくしたりもします。50歳代半ばからのセカンドライフをイキイキと美しく過ごしていくためにも、女性ホルモンの知識は欠かせません。

 女性の生涯を通じて起きるドラマチックな変化は男性も知っておくべきでしょう。家庭では「妻の身にはこんな変化が起きているのか」、職場でも「同僚の女性がつらそうだな」と理解することで、人間関係がより円滑になっていくと思いますよ。

(本田麻由美)

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