辻仁成「太く長く生きる」(20)「怒ってすっきり、長生きのコツ」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
怒った後は清らかな場所を散策し、人間関係の汚れを払うに限ります。笑。

怒った後は清らかな場所を散策し、人間関係の汚れを払うに限ります。笑。

 ◇ ◆ ◇  

 ストレス社会で生きていますね。どうも、このストレス、人間の寿命に関係があるようです。病の元だったりします。しかし、ストレスのない社会なんてあるのでしょうか? これはとっても難しい問題です。なぜなら、ストレスとは対人関係によって生じるものだから。人間と関わって生きている限り、ストレスがなくなることはない。生きていれば他人と必ず相対さなければならないわけですから、当然、ストレスは増えます。

 じゃあ、どうやったら、ストレスは発散できるのでしょう。いろいろと方法はあります。旅に出るとか、運動とか、美味おいしいものを食べるとか、好きな仲間たちに話を聞いてもらうとか……。すべを心得ています。とにかく、「抱えない」ことが大事ですからね、抱えそうだな、と思った次の瞬間には「この野郎、ふざけやがって」と取り急ぎ怒鳴どなっております。(笑)。女性の皆さんはこのような下品な言葉を口にしてはいけません。「このお方、おふざけが過ぎます」くらいでしょうか? これではガス抜きにはなりませんか? だったら、「馬鹿、ふざけんじゃないわよ」くらいでどうでしょう? もっとひどい言葉でも大丈夫。周囲に聞こえないようにガス抜きすれば問題ありません。

 短い一生ですからね、怒ってガス抜きしながらバランスよく生きるに限ります。他人の攻撃をそのまま受け止めていては身が持ちませんよ。

 ◇ ◆ ◇  

 フランス人の社会で暮らすようになって一番最初に勉強したことは「強くなる、負けない」ということでした。この国で口喧嘩げんかが苦手だと生きていけないのです。とにかくフランス人は口が達者。文句も不平もはっきりと口にしますし、「自分は決して悪くない」と理屈もこねます。日本だとまず「謝ること」からお互いの誠意を突き合わせていくようなところがありますが、フランスでは一度謝罪したら負け。だから「申し訳ありませんでした」なんて10年に1度くらいしか聞きません。でも、逆に言えば、彼らが謝罪する時にはうそがないんです。その場しのぎの「ごめんなさい」じゃないわけです。集団のいじめも滅多めったにありません。すごいことじゃないですか? フランス人はストレスを抱えないように生きる天才的民族なのです。だから世界中の人たちに「変わり者」とレッテルを貼られるわけですが、むしろ、正直の所以ゆえんなのです。ストレスを出来るだけ抱えない生き方を選ぶせいで、フランス人は長生きでもあります。彼らはすぐに怒りを吐き出します。そして、人生から嫌なことを抹殺してみせるのです。一度、喧嘩した人間とは滅多なことでは仲直りをしません。どちらも絶対に謝らないからです。融通が利かないとも言えますし、大人げないとも思いますが、でも、その分、ストレスがない。日本社会ではそうもいきませんね。ですから、そういう時は怒ってください。不条理なことが降りかかったら、遠慮なく怒りましょう。上手に怒ることが出来るようになれば、ストレスは雲散します。お試しください。

今日のひとこと。 『ストレスを抱えるのは結局、自分のせい。怒鳴って、自由になりなさい』

辻さんプロフィール写真2016年10月21日WEBマガジン用

辻 仁成(Tsuji Hitonari)
 東京生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。1997年『海峡の光』で芥川賞、1999年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。著作はフランス、ドイツ、スペイン、イタリア、韓国、中国をはじめ各国で翻訳されている。著書に『太陽待ち』『サヨナライツカ』『右岸』『永遠者』『クロエとエンゾー』『日付変更線』『息子に贈ることば』『パリのムスコめし』など多数。近著には『50代のロッカーが毎朝せっせとお弁当作ってるってかっこ悪いことかもしれないけれど』(主婦の友社)がある。
 ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野でも幅広く活動する。現在は拠点をフランスに置き、創作に取り組む。パリ在住。映画監督・音楽家・ 演出家の時は「つじ じんせい」。

 2016年10月にウェブマガジン「デザインストーリーズ」を開設。デザインと世界で活躍する日本人の物語、生きるヒントを届ける“ライフスタイルマガジン”。辻編集長のインタビューはこちら
 2017年5月20日に、9作目の監督作品となる映画「TOKYOデシベル」が全国ロードショー予定。※公開映画館などはこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

辻仁成「太く長く生きる」