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太陽生命 田中勝英社長インタビュー(下) 元気プロジェクトで日本を元気に

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 認知症治療保険や最長70歳まで働ける雇用制度の導入など、ユニークな施策を次々に繰り出している太陽生命の田中勝英社長(62)。インタビューの後編は、超高齢社会を迎え、変化する生命保険業界に対するニーズや社会的使命とトップリーダーの考える「健康経営」について伺いました。

89歳の営業職員も元気に働いています

田中社長

――今年4月から最長70歳まで働ける雇用制度を導入すると発表しました。

 今、元気な「高齢者」が増えています。世の中が変化し、従業員の生活も変わっている。それなのに、今まで通りの人事制度でいいのかと考えました。経営者は、従業員がやる気を持って仕事ができる環境を整えなければならない。そこで今回、事務を担当する内務員の定年を60歳から65歳に延長し、さらに嘱託制度で70歳まで働けるように人事制度の見直しをしました。

 一方、以前から定年が70歳で、その後も嘱託で働ける営業職の場合は、80歳を超えている人が何十人もいますよ。89歳の女性営業職員もいます。彼女は今でもプールで元気に泳いでいます。会社で働き続ける条件は、「お体が元気で」「ご家族の同意がある」こと。この二つが必須ですが、ご家族についてはまず100%同意されます。あれだけ元気なおばあさんなのだから、ぜひ働いてほしいと思うご家族の気持ちもわかります(笑)。

――社員の健康増進にも力を入れていますね。2月には、経済産業省が進める「健康経営優良法人」に認定されました。

 従業員が元気で生き生きと働くことができて初めて、良いサービスをお客さまに提供できると思います。まず従業員が元気になることで、お客さまを元気にし、そして社会を元気にする。いわば「元気のサイクル」ですね。そのために、従業員にスマート・ライフ・ステイ(宿泊型新保健指導、*1)を体験させたり、業務を見直して効率化を図ったりしています。

 これを「太陽の元気プロジェクト」と名づけました。プロジェクトチームのもと、「従業員向け部会」「お客様部会」「システム系部会」など部会を作って、みんなでアイデアを出し合っています。その一つが、自然の野山を活用したクアオルト健康ウオーキング(*2)です。プロジェクトチームは、毎月経営会議の後にやっています。先日も地域の「健康寿命延伸」に取り組む自治体を応援するクアオルト健康ウオーキングアワードの報告がありました。この2月に我が社は「健康経営優良法人」に認定されたのですが、こうした総合的な取り組みが認められたのだと思っています。

――クアオルト健康ウオーキングを全国に広める取り組み自体、保険業界の枠を超えたCSR(企業の社会的責任)活動といえるのでは。

 その通りです。まさにお客様のため、従業員のため、社会のためです。「太陽の元気プロジェクト」では、投資も行っています。昨年は、医薬品やヘルスケア、スポーツクラブの運営などを手がける上場企業を対象にした「元気健康応援ファンド」に30億円を投資しました。また、地域医療に尽力しているお医者さんを支援していこうと、考えているところです。

――昨年は山形県上山市でスマート・ライフ・ステイを実施されました。従業員の反応はどうでしたか?

 結果は出ていますよ。やせたとか、血圧が下がったとか。最初は肥満度が高い社員でチームを組んで10人ほど、上山市の1泊2日の保健指導に行ってもらいました。4か月経ちましたが、みんな真面目に取り組んで、やせましたね。みんな「楽しい」と言っていますよ。

IT化で事務量、10年で5分の1に

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 認知症治療保険は多くのお客さまに加入していただきました。この分野にたくさんのニーズがあることがわかったので、これからは他社ももっと参入してくるでしょう。その時、やはり我々は一歩先を行きたい。具体的には申し上げられませんが、仕掛け作りはすでに出来上がっています。

 これから先は、やはりITをどう活用していくかが課題です。新しいサービスも、最新技術を生かした金融サービスがテーマになるでしょう。もともと当社はIT系に強く、業界で一番進んでいると自負しています。給付金の請求に必要な告知書も業界に先駆けてペーパーレス化しました。給付手続きは、かけつけ隊が持つ専用のモバイル端末に必要情報を入力し、自署していただくだけです。同時に、その告知情報で即時に結果を出す自動査定システムも開発しました。先日は、かけつけ隊がお客様のお宅に伺って、給付金の手続きをお手伝いしてから、わずか16分でお客様の銀行口座に給付金が振り込まれたと報告を受けましたよ。

 さらに経営の効率化として、この10年間で155ある支社の業務を5分の1にしました。これは全てITを生かした成果です。

――それでは、働く人がいらなくなってしまうのでは?

 支社の人員数は2500人から1500人になりました。1000人くらいが余剰になったわけですが、その人員を活用して「かけつけ隊サービス」を始めました。知識があって、能力も高い職員がいるわけですから、その能力をお客さまサービスに生かしてもらおうと考えました。お客さまのところに伺って、給付金請求などのお手伝いをさせてもらっています。

――社会のニーズは大変なスピードで変化しています。生命保険業界の社会的使命も含め、今後の展望についてお聞かせ下さい。

 いつも従業員には、「世の中の変化に敏感になれ」と言っています。
 我々は、人の生涯設計に合わせた保険を開発して提供しています。従業員は人生の変化について敏感でなければいけない。時代の変化を先取りして、国民の不安をできるだけ少なくしていくことが我々の使命です。高齢社会をむかえ、老後の生活や病気など、社会における不安をできるだけ低減させていけるように、認知症治療保険、介護保障付年金のような商品を今後も開発していきます。

 さらに「誠実」「迅速」「勇気」を心がけるようにも従業員に言っています。お客さまに接する私たちは、まず誠実であることが大事です。さらにチャンスはスピードが命です。だから、常に迅速であれと。そして勇気は意思決定に必要です。これからも、誠実な心で、迅速に、勇気をもって、時代の変化の先をいきます。

――最後に、社長ご自身の健康法は?

 そうですね。大好きなゴルフぐらいですね。あと、時間を作って行く日曜日のジムですね。毎回、トレーナーについてもらい、鍛えてもらっています。自分だけだったら、「今日はいいかなぁ」などと安易な発想になってしまう(笑)。なるべく運動するよう心がけたいと思っています。

(聞き手・菅谷 千絵) 

*1)スマート・ライフ・ステイ(宿泊型新保健指導):糖尿病予備群などを対象に、食事や運動の体験実習や活動などを通じ、旅の中で「楽しみながら」行う「実践型」の新しい保健指導スタイル。温泉などの観光資源を活用し、医師・保健師・管理栄養士・健康運動指導士など多職種が連携して、保健指導にあたるのが特徴。山形県上山市などで行われている。同社は昨年、上山市と健康づくりに関する協定書を結んでいる。https://yomidr.yomiuri.co.jp/network/20161006-OYTEW183068/

*2)クアオルト健康ウオーキング:クアオルトは、ドイツ語で「療養地・健康保養地」の意味。ドイツのクアオルトでは、疾病の治癒、緩和、予防に効果のある自然の治療要素(温泉、海、気候など)で療養が行われ、公的医療保険の対象となっている。クアオルト健康ウオーキングは、ドイツのクアオルトで心臓リハビリや高血圧の治療に活用されている自然の野山を活用した運動療法「気候性地形療法」を基にしている。昨年同社が創設した「クアオルト健康ウオーキングアワード」は、地域住民の「健康寿命延伸」のために同ウオーキングの導入を目指す自治体に、コース整備や専任ガイド育成などの支援を行っている。

田中 勝英(たなか・かつひで)
【略歴】1954年生まれ、香川県出身、1977年慶應義塾大学経済学部卒。同年太陽生命保険相互会社(現太陽生命保険株式会社)入社。徳島支社長など全国6拠点の支社長、営業部長などを経て、2001年取締役契約サービス部長、2004年常務取締役、2007年取締役専務執行役員お客様サービス本部長、2009年代表取締役副社長営業本部長、2011年代表取締役社長(現職)、兼株式会社T&Dホールディングス取締役(現職)

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