高血圧をコントロールしよう

高血圧と向き合う(2)白いご飯とラーメンと

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 現在は仕事の関係で関西に住んでいるものの、生まれも育ちも東京の下町だった。

 保守的な家庭だったため、実家の食卓にパンや麺類がのることはなく、食事といえば白いご飯が基本だった。小学生の頃から地元のスイミングスクールに通っていたOさんの食欲は人一倍で、通常のおかずを平らげた後、のり、つくだ煮、ふりかけ、生卵などで大量のご飯を食べる毎日だった。

 「白米をおいしく食べるために、毎日のように塩辛いものを食べていたのは確かです。子どもの頃は塩分なんか気にしていません。子どもは誰だってそうでしょう。あの頃の食生活が現在に影響しているかはわからない。だけど、当時の日本人の食事なんて、どの家庭でもそうでしたよね」

 

塩が血圧を上昇させる仕組み

 なぜ塩分は血圧を上昇させるのか。

 実はメカニズムは単純だ。

 「人間の体は約60%が水分で、体内の塩分濃度は常に一定に調整されます。食塩を多く食べれば、どうしても血液中の塩分を元の水準にまで薄めようと水が入ってきて血液量が増えることになります」(製鉄記念八幡病院・土橋卓也院長)。

 血液の量が増えれば、血管が受ける圧は高まる。水道のホースを例に取れば、大量の水でいつもパンパンにふくれあがった状態のものと、常にチョロチョロと水が流れているだけのものを比較すれば、どちらの劣化が早いかは自明だろう。

 

日本食の泣き所は塩分

 日本食は世界トップレベルの健康食だ。列島を囲む豊かな海の恵みで、大昔から良質のたんぱく質やカルシウムを自然な形で摂取することができた。豊かな土壌が育てる野菜や果物、それに穀物もたくさんある。戦後、食料自給率は低下したものの、海外からの輸入も厳しくチェックされており、安全な食品にあふれている。日本が屈指の長寿国である背景には、豊かで清潔な食生活が影響していることは間違いない。

 ただ一つだけ例外がある。塩分が多いことだ。主食として日本人の日常活動を支え、手軽で安価な主食のコメをおいしく食べるために、先人たちは知恵を絞った。焼き魚には、塩やしょうゆを使い、塩分がたっぷり含まれたみそ汁を毎日飲む。漬けものやつくだ煮など、白いご飯を引き立てる手軽な副食類は例外なく塩分が高い。パーフェクトに見える日本食だが、唯一の泣き所が塩分の多さなのだ。

 「結婚をしたのは比較的遅く、36歳のころでした。2歳年下の妻も仕事を持っていたため、平日はほぼすれ違いで、一緒に過ごせるのは土日ぐらい。当時は横浜市の賃貸マンションで生活しており、夫婦そろってラーメン好きだったので、休日になると雑誌で調べたお店を2人で食べ歩いていましたね。年々、血圧がジワジワと上がっていたのですから、ラーメンは最悪のはずですね……」 

 Oさんが結婚した当時、すでにバブルは崩壊しており、永遠に続くかと思われた好景気は一気に収縮を始めた。まだリストラという言葉は一般化していなかったものの、課長職に昇格したOさんは残業手当がなくなり、むしろ収入が減るという不思議な現象が起こっていた。会社の業績も下がる一方で、営業部門のOさんは常に数字に追い立てられるようになった。夜の付き合いは目に見えて減っていく。仕事を定時に終えると、一人で居酒屋やファミレス、ラーメン屋などで食事をし、自宅に帰って妻の帰宅を待つことが多くなった。

 中堅食品メーカーの研究職をしている妻は、景気減速の影響は少なく、仕事のペースは変わらずに、帰宅するのは毎晩10時過ぎだった。

 

ランチタイムと塩分

 日本人の昼食は、「ワンディッシュ」、もしくは「ワンボウル」ですませる人が少なくない。繁華街のランチを観察してみると、カレー、スパゲティ、ラーメン、日本そば、牛丼やカツ丼などのどんぶり類が幅を利かせているのがわかる。手軽な価格で高い満腹感を得られ、午後からの活動に十分なエネルギーを確保できる。バラエティーも豊富で、お店を選ぶのも楽しい。昨今のB級グルメブームは、日本のランチ環境が作ったと言っても言い過ぎではないだろう。

 ところが、ワンディッシュ、ワンボウルのランチは炭水化物が主体のため、ほとんどは宿命的に塩分が高い。たとえばラーメン1杯をスープまで飲み干してしまえば、お店や種類によってバラツキがあるが、それだけで1日の塩分目標である6グラム前後まで行ってしまうものが多い。特に寒い時期は、お店自慢のラーメンスープや日本そばのつゆをすべて飲みたくなるものだが、血圧が心配な人は控えめにしたい。

 

どれぐらい塩分の摂取制限

 厚生労働省の「食事摂取基準」(2015年4月改訂)では、1日に男性8g未満、女性7g未満を目標値に設定している。一方、日本高血圧学会はさらに厳しく、6g未満を推奨している。ちなみに、日本人の食塩摂取量の平均値は男性11.0g、女性9.2gだった(平成27年国民健康・栄養調査より)。

東京大学教授(医学系研究科公共健康医学)・佐々木敏さんの話
 生活習慣病を予防したかったら、まずは「たばこのない社会」。それに続く2番目が減塩です。3番目に肥満の解消があり、その対策として不健康な食事、いわゆるアンバランスな食事や運動不足の改善が入ります。「バランスの取れた食事が大切」とよく言われますが、実は減塩の方が優先順位は上なのです。

(つづく)

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