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医療大全

下垂体前葉機能低下症

下垂体前葉機能低下症

かすいたいぜんようきのうていかしょう
Hypopituitarism

【初診に適した診療科】
内科
【どんな病気か】
脳下垂体は前葉と後葉とに分けられます。このうち、前葉でつくられる種々のホルモンの分泌が障害されて起こる病気です。下垂体前葉ホルモンには、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモンなどがあります。
 下垂体前葉ホルモンの分泌の低下は、下垂体前葉自身の障害により起こるものと、下垂体を調節するはたらきをもつ視床下部(ししょうかぶ)の障害によって起こるものとがあります。また単一のホルモンの分泌が障害される場合だけでなく、2つ以上のホルモン分泌が障害されることもあります。
【原因は何か】
さまざまな原因により下垂体前葉機能低下症が起こりえます。分娩時の大出血により下垂体のはたらきが悪くなり、下垂体前葉細胞が死んでしまうことがあります。男性では最も多い原因は下垂体腫瘍です。ほかに結核などの炎症性疾患、自己免疫性の下垂体炎、頭部外傷や手術、放射線治療後の障害などで起こりえます。まれに下垂体の発生・形成異常、遺伝子異常によって起こることもあります。
【症状の現れ方】
基本的におのおののホルモン欠落症状が現れます。成長ホルモンの分泌低下が発育期に起こると、下垂体性の低身長症となります。副腎皮質刺激ホルモンの低下では、副腎皮質ホルモンの分泌が障害されて、だるさや疲れやすさが増し、筋力の低下や血圧の低下を招きます。低血糖の原因となることもあります。感染症やけがをきっかけにショックに陥ることもあります。甲状腺刺激ホルモンの分泌低下では寒がりで皮膚が乾燥し、むくみが出ます。小児期に性腺刺激ホルモンの分泌が障害されると、二次性徴の発現がみられません。成人男性では勃起不能、成人女性では無月経となります。
 大きな下垂体腫瘍が原因の場合では、視力が障害されます。視床下部が障害されると、尿崩症(にょうほうしょう)、食欲異常、体温異常を生じます。
【治療の方法】
機能低下症を引き起こした原因の治療と、障害されたホルモンの補充を行います。腫瘍の場合は腫瘍の性質に応じた摘出術や放射線、薬剤による治療を行います。

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