文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

医療大全

うつ病

 うつ病は、憂うつ感とやる気の喪失がひどく、日常生活に支障が出る病気。国内に90万人以上の患者がいるとされる。脳内の神経伝達物質の不足が原因と考えられ、これを補う薬物療法が主流。〈1〉いつも重苦しい気分が続き、自分を責める「メランコリー型うつ病」〈2〉そう状態とうつ状態を行き来する「双極性障害」(そううつ病)〈3〉軽い憂うつが2年以上続く「気分変調症」〈4〉過眠過食を伴い、良いことがあると元気になることもある「非定型うつ病」の4タイプある。

 このうち、あまりマスコミに取り上げられることのない「双極性障害」になった本紙記者が自らの体験をつづった連載「私のうつノート」には、全国から大きな反響が寄せられ、書籍化もされた。また、「うつ病の人を励ましてはダメ」というが本当なのか、「心の風邪」とも言われるが、そんなに治りやすいのか、といった疑問にこたえる記事や、最近では、単に落ち込むだけでなく、周囲を責めたり、趣味など仕事以外では活動的になったりする新しいタイプのうつ病も増えてきており、こうした最新事情も紹介する。

 【主な症状】うつうつとした気分の落ち込みと、やる気の喪失が2大症状。不眠や食欲不振、疲れといった体の不調も表れる。

 【診療科】精神科。心療内科は本来、ストレスに関連して体の症状が出た患者を診療する科だが、うつ病を診療する心療内科も少なくない。

うつ病

うつびょう

【初診に適した診療科】
精神科、神経科、心療内科
【どんな病気か】
私たちは、生活のなかのさまざまな出来事が原因で気持ちが落ち込んだり、憂うつな気分になったりすることがあります。しかし、数日もすると回復して、また元気にがんばろうと思える力をもっています。ところが時に、原因が解決してもいつまでたっても気分が回復せず、強い憂うつ感が長く続く場合があります。このため、普段どおりの生活を送るのが難しくなるのが、うつ病です。
【原因は何か】
うつ病は、まだわからないことが多い病気です。脳の神経の情報を伝達する物質(セロトニン、ノルアドレナリン)の量が減るなど脳の機能に異常が生じていると同時に、その人がもともともっているうつ病になりやすい性格(生真面目、几帳面、仕事熱心、責任感が強い、相手の気持ちに敏感など)と、ストレスや体の病気、環境の変化など、さまざまな要因が重なって発病すると考えられています。
【症状の現れ方】
うつ病の症状には精神症状と身体症状があります。また、これらの症状が、1日のなかで時間とともに変化するのも、うつ病の特徴です。多くの場合は、朝が最も悪く、夕方にかけて回復していきます。 精神症状としては抑うつ気分、興味や喜びの喪失、精神運動の障害、思考力や集中力の低下、意欲の低下、自責感、希死念慮など。身体症状としては睡眠の異常(不眠・睡眠過多)、食欲低下・増加、疲労感、月経不順、性欲低下、勃起障害、頭痛・頭重、肩・腰・背中の痛みなどがあげられます。
【治療の方法】
治療の基本は十分な休養によって心と体の疲れをとることと、薬によって神経伝達物質の異常を改善することです。考え方などを見直す精神療法(支持的精神療法、認知行動療法など)を組み合わせることもあります。
 薬物療法では抗うつ薬が治療の中心となります。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、三環系、非三環系といったタイプがあり、症状や状態により使い分けます。通常、治療を始めてから2カ月から半年くらいである程度よくなりますが、症状が改善したあとも服薬を続けることが必要です。うつ病は再発率が高いのですが、効果が出た時と同じ量の薬を服薬し続けていると再発率が低くなります。
 電気けいれん療法は、頭皮に電極をつけて電流を流す治療法で、薬物療法で効果が得られない場合や、薬物が使えない場合に用いられます。

(C)法研

「うつ病」に関連する記事

検査・診断

治療

すべて表示

付き合い方

予防

シリーズ

すべて表示

病院の実力


精神科1 抗精神病薬の単剤化率、前回調査より上昇

 厚生労働省の2008年の調査では、精神疾患の患者は323万人にのぼり、4大疾患とされる糖尿病、脳梗塞、心臓病、がんの患者数を大幅に上回った。精神科治療への期待は高まる一方だが、誤診や多剤大量投薬などの問題が今も続いてい…

病院の実力で「うつ病」を見る

医療相談室で見る

「うつ病」に関連する相談を見る