文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

医療大全

血栓性静脈炎

血栓性静脈炎

けっせんせいじょうみゃくえん
Thrombophlebitis

【初診に適した診療科】
内科、心臓血管外科
【どんな病気か】
静脈に起こる炎症ですが、静脈炎には血栓を伴うことが多く、また逆に静脈血栓が静脈炎の原因になることも多いため、静脈炎と静脈血栓症を区別することは厳密には不可能です。しかし、症状や重症度に差があるため、体の表面の静脈に起こった静脈炎を「血栓性静脈炎」、深部の静脈に起こった静脈炎を「深部静脈血栓症」として区別しています。 すなわち、同じ静脈炎でも血栓性静脈炎は軽くてすむのに対して、深部の静脈炎は重症化しやすく、肺塞栓(はいそくせん:いわゆるエコノミークラス症候群)の原因となる怖い病気です。
【原因は何か】
血栓性静脈炎は、静脈瘤炎(静脈の拡張や静脈圧の上昇による内膜損傷)後に起こることが多く、また長期臥床(がしょう)、手術、脱水などの合併症として現れることもあります。
 深部静脈血栓症は、右心不全、全身衰弱、手術後などで起こる循環障害、または静脈中枢部を圧迫するような原因がある場合などに血栓ができやすくなり、発症します。
【症状の現れ方】
血栓性静脈炎を起こした場所には、索状の発赤と浮腫や痛みを伴う硬結が生じます。また、時に発熱や悪寒(おかん)などの全身症状が現れることもあります。
 うっ血が原因で起こる深部静脈血栓症は、急激に現れる浮腫が特徴で、数時間で進行し、浮腫性の腫脹(はれ)も引き続き認められるようになります。うっ血が高度になると、チアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になる)が現れ、強い痛みを伴うことがあり、急いで治療する必要があります。
【治療の方法】
血栓性静脈炎の急性期は、局所の安静と湿布、弾性包帯などを用いると、ほとんどが数週間で治ります。
 難治性のものには、抗血小板薬やワルファリン(抗凝血薬)が必要になる場合もあります。感染や静脈瘤炎を合併している時には、血栓の除去や静脈の切除が必要になる場合もあります。 深部静脈血栓症の急性期は、血栓の遊離による肺塞栓を予防するため、安静と下肢を高く上げておくことが必要です。また、血栓予防のためにヘパリン製剤の投与をただちに開始し、1週間くらいでワルファリンに切り替えます。

(C)法研