医療大全
急性・慢性前立腺炎
きゅうせい・まんせいぜんりつせんえん
Acute prostatitis, Chronic prostatitis
【初診に適した診療科】
泌尿器科【どんな病気か】
前立腺は男性の膀胱の下にある臓器です。急性前立腺炎は、前立腺に細菌の感染を生じ、発熱とともに前立腺が大きくはれて排尿困難、残尿感、頻尿(ひんにょう)、排尿時痛を生じます。はれた前立腺が尿道を圧迫し、まったく排尿ができなくなってしまう尿閉(にょうへい)になることもまれではありません。38~40℃の高熱を伴うことがあります。慢性前立腺炎では炎症の程度が軽いため、症状が比較的おだやかで、発熱は認めません。
【原因は何か】
急性前立腺炎は、主に大腸菌などのグラム陰性桿菌(いんせいかんきん)と呼ばれる細菌の感染によって発症します。これは便のなかに普通にみられる細菌です。慢性前立腺炎では、炎症性であっても感染経路がはっきりしないことが多々あります。さらに、細菌も炎症性細胞である白血球も認められない非炎症性のものもあります。つまり、臨床検査では前立腺に炎症が認められないにもかかわらず、前立腺に由来すると考えられる独特の症状を訴える疾患です。前立腺周囲の骨盤底筋の過緊張や、骨盤内のうっ血、免疫異常、さらには心身症的要素(精神科的疾患)の関与も指摘されています。
【治療の方法】
(1)急性前立腺炎原因になっている細菌に対して有効な抗生剤の投与を行います。尿閉に対しては膀胱瘻(ぼうこうろう)といって下腹部の恥骨の上を穿刺(せんし)して尿を体外に導く管を設置するか、尿道留置カテーテルを用いて、排尿路を確保する必要があります。高熱のある症例では点滴注射のため入院治療をすすめます。重症例では敗血症を生じ、生命の危険を伴うこともあるので注意が必要です。
(2)慢性前立腺炎
a.細菌性…通常は通院治療で十分対応できます。抗生剤は慢性炎症を生じた前立腺には到達しにくいので、長期間(数カ月)の投与が必要です。重い病態を示すことは、通常ありません。
b.非細菌性…炎症性のものでは細菌とクラミジアの両方に有効な抗菌薬が投与されます。非炎症性のものでは筋肉の緊張をゆるめる薬や、温座浴などの温熱治療、漢方薬が用いられます。症状の軽減までには長い時間が必要です。
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