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医療大全

吸収不良症候群

吸収不良症候群

きゅうしゅうふりょうしょうこうぐん
Malabsorption syndrome

【初診に適した診療科】
消化器科、内科
【どんな病気か】
経口摂取したいろいろな栄養素、とくに脂肪の消化吸収が阻害された病態を指し、障害の程度や持続期間によって低栄養状態を来すことがあります。
【原因は何か】
栄養素の吸収過程自体の異常に基づく原発性の吸収不良症候群の代表的な病気にスプルー、腸酵素欠乏症があります。スプルーは、セリアックスプルー(グルテン腸症)と熱帯性スプルー(熱帯性下痢)に分類されます。いずれも日本では極めてまれな病気です。
 腸酵素欠乏症では、ラクターゼ欠乏症が日本人に多く、牛乳など乳糖を含む食物の摂取によって、腹痛、腹鳴(ふくめい)、腹部膨満感、水様性下痢を生じます。
 他に原因となる病気があって起こる続発性の吸収不良症候群の原因としては、クローン病など広範囲にわたる腸病変、アミロイドーシス(異常蛋白のアミロイドが体のなかに付着して臓器の機能障害を引き起こす状態)などの全身性の病気、腸切除後、放射線照射後、膵がんや胆道がんなどでの消化酵素分泌障害といったいろいろな病気があげられます。
【症状の現れ方】
下痢、脂肪便(泥状便で酸性臭がある)、体重減少、全身倦怠感、腹部膨満感(ぼうまんかん)、浮腫、貧血、出血傾向、病的骨折、テタニー(四肢の硬直性けいれん)、皮疹などがみられます。各種栄養素の吸収過程で最も早く障害を受けるのは脂肪なので、脂肪吸収障害に基づく慢性下痢や脂肪便が高頻度にみられる最も重要な症状です。
【治療の方法】
消化吸収障害が軽度であれば、食事療法(低脂肪・高蛋白・低繊維食)と消化酵素の投与を行います。
 消化吸収障害が高度で低栄養状態を伴う場合は、まず経腸栄養法(半消化態栄養剤または成分栄養剤を経鼻チューブか経口で投与する)あるいは完全静脈栄養法による栄養療法を行い、栄養状態の改善を目指します。
【病気に気づいたらどうする】
下痢、脂肪便、体重減少などの吸収不良症候群を疑わせる症状に気づいたら消化器内科を受診してください。ラクターゼ欠乏症では、乳糖を含む食品(牛乳、チーズなど)をなるべく制限する必要があります。

(C)法研