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病名・テーマ がんのチーム医療
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がん治療 多職種会議で方針 

 複数科にまたがる症例にも対応がん治療には多くの選択肢がある。最適な治療や療養の方針を決めるため、様々な専門分野の医師や医療スタッフが集まって開く合同会議を「キャンサーボード」と呼ぶ。がんのチーム医療の一つで、国が指…

複数科にまたがる症例にも対応 

がん治療多職種会議で方針

 がん治療には多くの選択肢がある。最適な治療や療養の方針を決めるため、様々な専門分野の医師や医療スタッフが集まって開く合同会議を「キャンサーボード」と呼ぶ。がんのチーム医療の一つで、国が指定した「がん診療連携拠点病院」には定期的な開催が求められている。

 読売新聞は2023年7~8月、全国のがん診療連携拠点病院456施設を対象に、2022年のキャンサーボードの開催実績などを調べた。

 がんの3大治療は手術、薬物療法(化学療法)、放射線療法で、これらを組み合わせるケースも多い。診断にも多くの検査が必要だ。キャンサーボードは、診断や治療方針を決めることが難しい症例を対象に行う。専門医が集まることで、主治医の「得意分野」に偏ることなく、複数の臓器や診療科にまたがる症例にも対応できる。症状の緩和、療養生活の支援が必要な場合は、緩和ケアやリハビリテーションの専門スタッフが加わる。

 近年増えているのが、骨転移を扱うキャンサーボードだ。骨への転移はほとんどの臓器の進行がんで生じる可能性があり、痛みやしびれ、病的骨折を引き起こすことがある。帝京大学整形外科教授の河野博隆さんは「まひや骨折への対応が遅れると、寝たきりになるリスクが高まる。運動機能の低下はがん治療の中止にもつながり、患者の命にも影響する恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 中高年に多い変形性脊椎症などは、骨転移との判別が難しいケースもある。画像診断により骨折やまひのリスクを判断し、これを予防するには、整形外科、放射線科、化学療法科など専門家の意見が欠かせない。

 認知症で治療方針の意思決定が難しい患者や、経済的に困っていて治療費が負担できない患者もいる。こうした倫理・社会的問題を解決するためのキャンサーボードには、医療ソーシャルワーカーなどが積極的に携わる。

 現在の仕組みでは、キャンサーボードを行ったことやその検討内容を患者に伝えるルールはない。東京医療センター診療部長の森岡秀夫さんは「今後は患者に検討内容を伝える制度を作ることが必要だ。患者の安心感にもつながるのではないか」と話している。(久保晶子)


データの見方
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは、年間「実施総回数」、「病院側の参加者総数(延べ人数)」、「対象症例数(述べ数)」を掲載した。

Ⅰ 複数の診療科や医療職合同のキャンサーボード:主治医に加え、薬物療法や放射線療法などを行う複数の診療科の医師、看護師、薬剤師など必要に応じた医療職が合同で診断や治療・療養方針を共有し、検討、確認をするための合同会議。臓器別に行われる場合、緩和ケア、骨転移、希少がんなど臓器横断的に行われる場合など様々なケースがある。キャンサーボードはカンファレンスと呼ぶこともある。

Ⅱ 骨転移キャンサーボード:骨転移は、ほとんどの進行がんで発生する可能性がある。骨転移に特化した臓器横断的なキャンサーボードを開催している施設も増えている。主治医のほか、整形外科医、放射腺診断医、放射線治療医、病理医、リハビリテーション医、腫瘍内科医。また、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリテーションの専門職が参加することが多い。

Ⅲ 病院全体のキャンサーボード:治療や療養方針を検討する会議の他にも、患者支援の充実や多職種間の連携強化を目的としたキャンサーボード、また、治療終了後の症例報告会、研修会のキャンサーボードを開催する病院もある。そうした病院全体の実施回数なども含めて答えてもらった。

がん患者リハビリテーション料を算定した患者(人):がんやがんの治療により生じた 疼痛とうつう 、筋力低下、障害などに対して運動機能の低下や生活機能の低下予防・改善を目的とした歩行訓練、日常生活の活動訓練、物理療法などを個々の症例に応じて実施する。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士などの多職種が共同してリハビリテーション計画を作成して実施する。がん患者リハビリテーションに従事する医療スタッフなどは積極的にキャンサーボードに参加することが望ましいとされている。

《キャンサーボードの定期的な開催状況》

臓器横断的なキャンサーボードの1か月あたりの開催回数(回/月):手術、放射腺診断、放射線治療、薬物療法、病理診断及び緩和ケアなどに携わる専門的な医師等による、骨転移・原発不明がん、希少がんなどに関して複数の診療領域や臓器横断的に診断、治療方針などを検討、確認するためのキャンサーボード。

倫理・社会的問題のキャンサーボードの1か月あたりの開催回数(回/月):経済的問題を抱えた患者や、認知症などで治療方針の意思決定が困難な患者に関して、患者支援の充実や多職種間の連携強化を図るために話し合うキャンサーボード。このキャンサーボードの定期的な開催は拠点病院の指定要件となっている。

骨転移キャンサーボードの職種別参加状況:骨転移キャンサーボードに参加が想定される職種のうち、「原発診療科医」「整形外科医」「放射線治療医」「緩和ケア医」「看護師※」の参加状況を示した。「参加」と回答した施設が調査対象施設の3割を超えた5職種を掲載対象とした。※看護師は、がん関連認定看護師、病棟看護師、外来看護師を対象にした。

キャンサーボードの実施や報告における課題:四つの選択肢のなかから、最も大きい課題と感じていることを一つ選択してもらった。回答施設の6割が「2」を選択した。

1.多診療科・多職種によるカンファレンスの開催・参加に協力が得られない治療科あるいは職種がある
2.働き方改革の観点から十分な時間の確保ができない
3.カンファレンスの内容や目的が患者や家族に十分に理解を得られていない事例がある
4.カンファレンスに治療方針の決定権限がなく、効果が十分に確認できない事例がある

キャンサーボードに関する先駆的な取り組みや工夫など:キャンサーボード、多職種によるカンファレンス実施や報告について、先駆的な取り組みや工夫していること、課題と感じていることがあった場合、具体的に100字以内で記載してもらった。

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がんのチーム医療

病院名
都道府県
市区町村
Ⅰ:複数の診療科や医療職合同のキャンサーボード/実施総回数(回)
Ⅰ:複数の診療科や医療職合同のキャンサーボード/参加者総数(人)
Ⅰ:複数の診療科や医療職合同のキャンサーボード/対象症例数(人)
Ⅱ:骨転移キャンサーボード/実施総回数(回)
Ⅱ:骨転移キャンサーボード/参加者総数(人)
Ⅱ:骨転移キャンサーボード/対象症例数(人)
Ⅲ:病院全体のキャンサーボード/実施総回数(回)
Ⅲ:病院全体のキャンサーボード/参加者総数(人)
Ⅲ:病院全体のキャンサーボード/対象症例数(人)
がん患者リハビリテーション料を算定した人数(人)
臓器横断的なキャンサーボードの1か月あたり開催回数(回/月)
倫理・社会的問題のキャンサーボードの1か月あたりの開催回数(回/月)
骨転移キャンサーボード:原発診療科医(参加1、不参加2)
原発診療科医:参加人数
骨転移キャンサーボード:整形外科医(参加1、不参加2)
整形外科医:参加人数
骨転移キャンサーボード:放射線治療医(参加1、不参加2)
放射線治療医:参加人数
骨転移キャンサーボード:緩和ケア医(参加1、不参加2)
緩和ケア医:参加人数
骨転移キャンサーボード:看護師(参加1、不参加2)
看護師:参加人数
キャンサーボードの実施や報告における課題(四者択一)
キャンサーボードに関する先駆的な取り組みや工夫など(自由回答)
国立病院機構 北海道がんセンター 北海道 札幌市白石区 604 9258 15004 80 480 140 615 9945 15015 1492 4 4 1 160 1 100 1 210 2 0 2 0 2 当院は各臓器のがん専門医師に加え、放射線治療と診断の専門医師、腫瘍専門病理医、緩和ケア専門医師、さらにがんゲノムの専門知識を有す医師も多数在籍しており、多角的にがんの診断、治療について検討している。
北海道大学病院 北海道 札幌市北区 413 1627 3 3 616 1 1 1 2

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