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小児外科 発育見据えた治療

 少ない専門医多数の疾患担当小児外科の患者は、小さく生まれた赤ちゃんから、成人と体格がほぼ変わらない中学生まで幅広い。消化器、呼吸器、泌尿器など様々な分野の手術を行う。患者が言葉で症状や思いを伝えることは難しい。子ど…

少ない専門医 多数の疾患担当

小児外科 発育見据えた治療

 小児外科の患者は、小さく生まれた赤ちゃんから、成人と体格がほぼ変わらない中学生まで幅広い。消化器、呼吸器、泌尿器など様々な分野の手術を行う。患者が言葉で症状や思いを伝えることは難しい。子どもの発育を見据えた治療を行うため、疾患についての専門的知識や高度な技術が求められる。

 読売新聞は2023年6~7月、日本小児外科学会の認定施設など569施設を対象に、2022年の小児外科分野の治療実績などを調査した。

 鼠径ヘルニアは、いわゆる「脱腸」で、脚のつけ根(鼠径部)が膨らむ。発生率が1~5%とこの分野では最も多い。生まれる前に閉じる腹膜の突起が開いたままのため、そこから腸管が飛び出す。締め付けられて血流が悪くなると、腸 閉塞へいそく のほか、腸が 壊死えし する危険がある。陰のう水腫は突起を通って腹水がたまる病気で、1歳を過ぎると自然治癒は難しい。手術では突起の根元を縛るなどする。

 次に多いのが急性虫垂炎(盲腸)だ。炎症を抑える抗菌薬で効果がない場合、手術で虫垂を切除する。

 生後30日以内の新生児手術は、生まれつき臓器や体の組織が正常に働いていない患者が多い。横隔膜やおなかに穴が開いている「横隔膜ヘルニア」や「腹壁破裂」は、生後数日以内に手術する。胎児の段階で診断できる病気は、出生前から産科、小児科、麻酔科と連携し備えることが重要だ。

 京都府立医科大小児外科教授の小野滋さんは「先天性の病気の治療には専門的な知識が必要です。新生児手術の実績は、高度な治療を行える医療機関の指標になります」と話す。

 小児外科の専門医は約700人しかいない。修練を積んで外科専門医などとなった後、小児外科のトレーニングを重ねる必要がある。腎臓や精巣などの病気を扱う小児泌尿器科の専門医は約200人。成人が対象の一般外科で、小児外科の手術を行う医療機関もある。

 昭和大江東豊洲病院小児外科教授の吉沢穣治さんは、「成人では臓器ごとに専門が細分化されているが、小児外科は『首からおしりのあたりまで』と呼ばれるほど多数の疾患を担当します。手術後も長く続く生活への影響を考慮し、大きな試練に直面する子どもの心に寄り添うことも大切です」と話す。(安藤奈々)


データの見方(手術件数は2022年の実績)

 鼠径ヘルニア・陰のう水腫、急性虫垂炎、腸 閉塞へいそく 、停留精巣の四つの手術については、「 腹腔ふくくう 鏡手術」の内訳も質問した。おなかに開けた小さな穴から手術器具を入れて行うもので、開腹手術より術後の痛みが少なく、入院期間を短縮できるといった利点がある。病気の重症度や患者の年齢などを考慮し、開腹手術と腹腔鏡手術のどちらを選択するか検討する。

① 鼠径ヘルニア・陰のう水腫手術(件):鼠径ヘルニアは、腹膜の突起が開いたままで、そこから腸管が飛び出し、脚のつけ根(鼠径部)が腫れる病気。いわゆる「脱腸」で、小児外科分野で最も多い。陰のう水腫は同じ原因で腹水がたまる。手術で突起の根元を縛るなどし、腸管や腹水が入らないようにする。

①のうち腹腔鏡手術(件)

② 急性虫垂炎手術(件):炎症を抑える抗菌薬で効果がみられない場合、虫垂を切除する手術をする。

②のうち腹腔鏡手術(件)

③ 腸閉塞手術(件):腸管の通過が何らかの原因により悪くなっている状態をいう。腸の一部が周辺の腸管に潜り込む「腸重積」や、術後の合併症などが原因となる。血行障害を伴うような重篤な場合、腸管を元に戻したり、切除してつなぎ合わせたりする手術をする。

③のうち腹腔鏡手術(件)

④ 停留精巣手術(件):陰のうに精巣がうまく収まらない病気で、精巣の片方だけの場合と、両方ともに起きる場合がある。精巣を陰のうの中に固定する手術をする。

④のうち腹腔鏡手術(件)

⑤ さい ヘルニア手術(件):へその部分が突出し、その中に腸管や脂肪組織が飛び出ている状態で、いわゆる「でべそ」のこと。2歳頃まで経過観察しても治らなければ穴を閉じる手術をする。

⑥ 膀胱ぼうこう 尿管逆流症手術(件):正常であれば腎臓から膀胱へ一方通行の尿が、膀胱から尿管へ逆流する病気。膀胱と尿管をつなぎ直すなどの手術をする。尿管と膀胱のつなぎ目に薬を注入して補強する方法もある。

⑦ 新生児手術(件):生後30日以内の新生児について、小児外科分野の手術を行った件数。先天性の病気を治療するには専門的な知識が必要で、高度な治療を行えるかどうかの指標となる。

⑧ 常勤の小児外科専門医(人):日本小児外科学会が認定する専門医(常勤)の数。:2023年6月時点

⑨ 常勤の小児泌尿器科専門医(人):日本小児泌尿器科学会が認定する専門医(常勤)の数。:2023年6月時点

⑩ 常勤の小児麻酔認定医(人):日本小児麻酔学会の認定医(常勤)の数。:2023年6月時点

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小児外科

病院名
都道府県
市区町村
① 鼠径ヘルニア・陰のう水腫手術(件)
①のうち腹腔鏡手術(件)
② 急性虫垂炎手術(件)
②のうち腹腔鏡手術(件)
③ 腸閉塞(へいそく)手術(件)
③のうち腹腔鏡手術(件)
④ 停留精巣手術(件)
④のうち腹腔鏡手術(件)
⑤ 臍(さい)ヘルニア手術(件)
⑥ 膀胱(ぼうこう)尿管逆流症手術(件)
⑦ 新生児手術(件)
⑧ 常勤の小児外科専門医(人)
⑨ 常勤の小児泌尿器科専門医(人)
⑩ 常勤の小児麻酔認定医(人)
旭川医科大学病院 北海道 旭川市 46 42 3 3 2 1 17 1 9 7 7 2 1 2
函館中央病院 北海道 函館市 7 7 8 7 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0

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