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病名・テーマ 排尿障害・骨盤臓器脱(女性)
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骨盤臓器脱 専門医の適切な治療で克服を

 DPC病院調査亀田総合病院ウロギネセンター長(千葉県鴨川市)の野村昌良(のむら・まさよし)さんに、骨盤臓器脱について聞きました。――「骨盤臓器脱」とは、どんな病気ですか。野村女性の骨盤の内側には、子宮や膀胱…

DPC病院調査

 亀田総合病院ウロギネセンター長(千葉県鴨川市)の野村昌良(のむら・まさよし)さんに、骨盤臓器脱について聞きました。

 ――「骨盤臓器脱」とは、どんな病気ですか。

 野村 女性の骨盤の内側には、子宮や膀胱(ぼうこう)、直腸などの臓器があります。これらの臓器は、「骨盤底(こつばんてい)」と呼ばれるハンモック状の筋肉や靱帯(じんたい)により支えられています。しかし、この骨盤底がゆるんだり、一部断裂したりしますと、臓器の重みを支えきれなくなり、臓器が膣(ちつ)壁を押し下げて飛び出します。これが、「骨盤臓器脱」です。膣という性器から出てくるので「性器脱」と呼ばれることもあります。

 下がってきた臓器の種類により、「子宮脱」「膀胱瘤(りゅう)」「直腸瘤」に分けられます。ある調査では、最も多いのが、「膀胱瘤」で全体の64%です。その後、「直腸瘤」の22%、「子宮脱」の14%が続きます。どれかひとつだけの臓器が下がってくることは少ないので現在では「骨盤臓器脱」という言い方が一般的になってきています。

 ――どんな症状が現れるのでしょうか。

 野村 主な症状は、(1)おなかの中が下がった感じで気持ち悪い(2)ピンポン球のようなものが膣から出てきた(3)股間には何かはさまっている感じがする(4)いすに座ると陰部のあたりで、何かが押し込まれるような感じがある・・・などです。

 膀胱が下がってくると尿道が変形し、頻尿、尿漏れ、尿が出にくい、などの症状が現れます。直腸が下がると便秘や便漏れになることがあります。複数の臓器が下がってくることも多いので、これらの症状があわせて出ることもあります。

 ――ありふれた病気なのですか。

 野村 はい。50~60歳以降の多くの女性が悩まされています。病気を引き起こす要因には、(1)出産(2)肥満、便秘(3)加齢の3点があります。

 出産によって大きく引き伸ばされた骨盤底は3か月くらいかけて徐々に元に戻りますが、完全に元に戻らない場合もあります。多産や難産だった女性ほど骨盤臓器脱のリスクが高いとも言われます。肥満、便秘でいきむこと、慢性のせきなどは、骨盤底に負担を与えます。閉経する頃から、女性ホルモンの分泌が少なくなると、骨盤底の支えが弱くなると言われます。

 スウェーデンの調査では出産経験者の44%に骨盤臓器脱が認められたと言います。アメリカの大規模な疫学調査では、骨盤臓器脱または尿失禁で治療が必要になる女性は80歳までに10人に1人いると言われます。

根本治療は手術・・・メッシュ使う新しい方法で、再発率低下

 ――どんな治療法がありますか。

 野村 落ちてきた臓器が膣内にとどまるような初期なら、骨盤底の筋肉を鍛える体操(骨盤底筋体操)の効果があることもあります。これは、あおむけに寝るなどして、肛門と膣をギュッと締め、そして元に戻すことを毎日数十回繰り返すものです。女性ホルモンの補充が骨盤底の筋肉を強くすることもあります。

 病状が進むと、臓器が落ちてこないように膣の中に、リング上の器具(ペッサリー)を入れることもあります。しかしながらペッサリーの治療では痛みや違和感があり、膣の出血や感染症に悩まされることもあります。このような問題から長くペッサリーの治療を続けることが難しいのが現状です。

 そこで、根本的な治療として行われるのが手術です。従来の方法は膣の方から子宮を摘出し、のびきった膣粘膜を切って、縫い縮める方法でした。手術時間は2~3時間ほどで、入院期間は10~14日程度。医療保険で認められており、自己負担限度額を定める高額療養費制度が適応されます。この従来の方法は子宮を取らなければいけないのでやや負担も大きいこと、もともと弱った組織を縫い縮めるために再発率が高く、海外での報告では29~58%で再発することから、必ずしも満足のいく治療ではありませんでした。

 ――新しい手術法が2010年4月に承認されたそうですね。

 野村 はい。再発を防ぐ補強のために、ポリプロピレン製のメッシュを使う治療です。メッシュを膣壁と臓器の間に入れて補強することで再発を防ぎます。基本的に子宮は摘出しません。おなかを切開せず、膣の穴の奥の方を小さく切開して行います。傷は外から見えません。下半身だけの麻酔でも可能ですが、全身麻酔で行っている医療機関が多いと思います。亀田総合病院も主に全身麻酔で行っています。

 手術時間は1~2時間、入院期間は7日程度で、いずれも、従来の手術よりも短いです。医療費は、自己負担限度額を定める高額療養費制度が適応されます。

 手術後は2週間までは入浴を、1か月までは力仕事や自転車乗りを、2か月までは性交渉を控えていただきます。以後、日常生活の制限はまったくありません。温泉に行ったり、スポーツを楽しんだりすることもできます。

 この手術法は、1996~2000年にかけてフランスで開発され、2010年は世界で20万人以上が、この手術を受けたとされます。長期の治療成績はまだ明確ではありませんが、再発率は5%ほどとされます。

 亀田総合病院では現在、1年間に約220例の骨盤臓器脱の手術を行っていますが、ほぼ全例、メッシュ手術を行っています。再発率は1%程度です。80歳以上の高齢者でも安全に行うことができ、体にやさしい治療であるといえます。

 ただし、この手術法は、膣壁と臓器の間にきれいにメッシュを入れ込まないと、周辺でびらんが起きたり、違和感が続いたりします。やはり、手術件数が豊富で、この手術に慣れた医師がいる医療機関で手術を受ける方が良いと思います。

3年以上、治療受けずに悩んでいる人が4割

 ――この病気の理解は広がっていますか。

 野村 いいえ、まだまだ、この病気を知らない患者さんは多くいます。また、下半身の病気だけに、異常に気づいても恥ずかしくて我慢している人もいます。

 この病気を克服した女性たちの会「ひまわり会」や亀田総合病院などが2009年、骨盤臓器脱に悩む人を対象にして電話相談を行いました。その相談内容を分析したところ、3年以上、治療を受けずに病気に悩んでいる人が4割近くいることが分かりました。

 相談者に、この病気を抱えながら未受診でいる期間を尋ねたところ、「3年以上」が36%、「1年以上3年未満」が24%で、1年以上が6割を占めました。そのほか、「1年未満」が22%、不明・その他が18%でした。

 また、亀田総合病院が2006~08年、独自に同様の調査を実施し、未受診の理由を尋ねました(複数回答)。「病院・診療科がわからなかった」が26%、「治療できると知らなかった」が19%、「年だとあきらめていた」が16%でした。

 この病気は、医療機関によって、婦人科で診たり、泌尿器科で診たり、とばらばらです。患者さんにとっては、どこの診療科を受診していいか、分かりにくいのが現状です。亀田総合病院では、患者さんの受け皿として、「ウロギネコロジーセンター」という看板を掲げています。「ウロ(泌尿器科)」「ギネ(婦人科)」「コロ(直腸肛門外科)」による造語です。「女性泌尿器科」「女性骨盤外科」などの名称を使っている医療機関もあります。このように骨盤臓器脱の専門治療を行っている病院を調べて受診された方がよいと思います。

快適な生活のため、一歩踏み出す勇気を

 ――今後、どのようなことを期待されますか。

 野村 この病気は命にかかわることはないのですが、患者さんの生活の質を大きく下げてしまいます。「他人に診られたくないので温泉に行かない」という人は多く、尿漏れなどの症状もあり、患者さんは消極的になりがちです。しかし、専門医による適切な治療が行われると、病気から解放され、皆、晴れ晴れした顔になります。すっかりよくなった元患者さんから「ありがとうございます」と言われるたびに、私は「もっと多くの患者さんに元気になってもらいたい」と思うのです。

 骨盤臓器脱が疑われる症状がありましたら、思い切って、ウロギネコロジーセンターや女性泌尿器科を受診して、「私は骨盤臓器脱ではないでしょうか」と訴えてみてください。快適な生活のために大切なことは、一歩踏み出す勇気だと思います。

支援団体など

(1)ウロギネネット
 亀田総合病院ウロギネセンター長(千葉県鴨川市)の野村昌良さんが主宰するホームページ。骨盤臓器脱や尿漏れなどの解説のほか、電子メールやファクスで相談を受け付けている。
http://urogynenet.com/

(2)ウロギネホットライン
 電話0570-056922(月曜日~金曜日:10:00~16:00 祝祭日を除く)
 女性の健康問題の電話相談などを行う「株式会社とらうべ」が運営。骨盤臓器脱の悩みや治療法などについて、保健師・助産師・看護師が答える。詳しくは、下記ホームページ
http://www.traube.co.jp/for_personal/urogyne/hotline.html

(3)ひまわり会
 尿漏れや骨盤臓器脱を克服した人たちでつくる会。ホームページを通して情報を発信したり、悩みを相談しあったりしている。定期的に電話相談会も行っている。
http://www.geocities.jp/himawarikai20040918/

骨盤臓器脱・表の見方

 入院医療費の一部を定額化して計算する方式「DPC(診断群分類包括評価)」を採用している急性期病院の一般病床が対象。大学病院や公立病院など、国内の主要な病院が含まれている。治療・手術件数は、日帰り・通院での治療は含まれず、入院での実績のみ。対象期間は2009年7月~12月の半年間。「国・」は独立行政法人国立病院機構の略。「-」は10件未満。

 手術件数は、膀胱、直腸、子宮などの臓器を元の位置に戻す手術、メッシュを使った手術などを含む。

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骨盤臓器脱

病院名
都道府県
手術件数
時計台記念病院 北海道 100
市立札幌病院 北海道 50

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