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病名・テーマ | 腎臓の病気 |
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- 水腎症 産科・小児科との連携不可欠
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DPC病院調査腎臓の病気である「水腎症」について、北里大学泌尿器科学教授の馬場志郎(ばば・しろう)さんに話を聞きしました。–>水腎症とは・・・尿が流れず、「腎臓の実質」はれる病気――水腎症とは、ど…
DPC病院調査
腎臓の病気である「水腎症」について、北里大学泌尿器科学教授の馬場志郎(ばば・しろう)さんに話を聞きしました。
–>水腎症とは・・・尿が流れず、「腎臓の実質」はれる病気
――水腎症とは、どんな病気ですか。
まず、尿ができる仕組みを解説しましょう。血液中の老廃物が腎臓で濾過(ろか)されて尿ができます。尿が腎臓から体外へ排出されるルートを全体的に「尿路」と言います。
腎臓でできた尿は、まず、尿が集まってくる集合地区「腎杯(じんぱい)」にたまり、次に腎臓中央にある「腎盂(じんう)」に運ばれます。腎盂はロート状になっており、狭まった先は「尿管」につながっています。尿は尿管を通って「膀胱(ぼうこう)」に流れ、ここでためられます。腎盂と尿管は蠕動(ぜんどう)運動をしていて、常に尿を腎盂から膀胱へと運んでいます。排尿時には、貯められた尿は膀胱から外尿道口までの道「尿道」を通ってから体外へ排出されます。
水腎症は、何らかの原因で尿が腎盂より下部へと流れず、腎盂に停滞することにより、「腎臓の実質」が圧迫され、はれてしまう病気です。腎臓の実質とは、血液を濾過したり、体液成分の調節を行ったりする、とても重要な部分です。症状が進むと、腎臓がまるで水風船のようにふくれて、腎臓機能が悪くなり、左右腎機能が廃絶すると腎臓移植をしなくてはならないケースもあります。
――特徴的な症状はありますか。
腎臓は左右にありますが、水腎症になった腎臓の側の脇腹や背中が痛むことがあります。鈍い痛みが長く続くことが多いですね。症状が進むと、腎臓が腫れ、脇腹で触れるようになります。片側の腎臓だけで症状が現れることが多いのですが、両側の腎臓が痛むこともあります。
ただし、慢性期では症状が現れないことがあります。
また、水腎症になる方は、感染症にもかかりやすくなります。尿管結石のような急性期では差し込むような痛み「疝痛(せんつう)発作」が見られることがあります。
――原因は何ですか。
最も多いのが、腎盂と尿管のつなぎ目(移行部)が狭くなっているため、尿が尿管に排出されなくなることです。これを「腎盂尿管移行部狭窄(きょうさく)」と呼びます。水分をたくさん飲んだ後に痛みを訴えることがあります。
腎盂尿管移行部狭窄には、2つの原因があります。1つが、腎盂から尿管への移行部の筋肉組織が生まれつき発育不全を起こしているもの。もう1つが、腎静脈や腎動脈が移行部に絡み圧迫しているもの。いずれも、先天性のものです。
狭窄とは違いますが、小児から問題になる「膀胱尿管逆流症」も原因の一つとして忘れてはなりません。通常、尿管から膀胱へ流れた尿は逆流しないようになっています。しかし、尿管と膀胱のつなぎ目周辺の筋肉が発育不全だと、逆流してしまいます。結果として、水腎症を引き起こします。この病気では、感染症の一つ、腎盂腎炎を併発することがありますので注意が必要です。排尿時に脇腹に鈍い痛みを感じることがあります。
そのほか、後天性の疾患があります。具体的には、(1)尿管に結石ができる「尿管結石」(2)腎盂がん、尿管がん、膀胱がん・・・などによって、尿の排出が妨げられることがあります。子宮がんや卵巣がん、直腸がんでリンパ節転移があると、尿路を狭くすることがあります。
また、子宮内膜症など産婦人科関連の病気によって尿管が圧迫されることで引き起こされることがあります。
水腎症全体でみると、「腎盂尿管移行部狭窄」が原因になることが多いため、患者は乳幼児が多いですね。ただし、乳幼児期に診断されても、その後、腎盂・尿管移行部の筋肉組織が発育して10歳頃までに改善することがあります。
――診断は、どのように行いますか。
超音波検査によって、腎臓の腎盂が膨らんでいるのが簡単に分かり、診断がつきます。外来診療で行えます。
尿路のどの部分で詰まっているかなどを調べるためには、(1)静脈から造影剤を注射してエックス線で撮影する「排泄(はいせつ)性腎盂造影検査」(2)腎臓の血流や分泌具合を見る核医学検査「レノグラム」(3)CT(コンピューター断層撮影)検査などを行うことがあります。
前述の膀胱尿管逆流症が疑われる場合は、尿道からカテーテルで造影剤を膀胱に入れて、排尿時の膀胱や尿道の形状をエックス線で調べる「排尿時膀胱尿道撮影検査」を行います。
病気の原因により、治療法異なる
――治療方法を教えて下さい。
水腎症は、原因となる病気によって治療法が異なります。
原因で最も多い「腎盂尿管移行部狭窄」では、「腎盂形成術」を行います。これは、狭窄部周辺を切開して、尿が流れやすいように腎盂を作り直す手術です。
以前は、脇腹を25センチほど切る「開腹手術」が行われていましたが、筋肉も大きく切ることになるので、痛みも残り、回復に時間がかかりました。最近は、直径1センチほどの穴を3個ほどあけて、内視鏡を入れるなどして治す「腹腔鏡下手術」が行われるようになりました。手術時間は2時間半ほどで、回復が早く、入院は約1週間です。再発率は5%以下とされます。
腎静脈や腎動脈が尿管を圧迫している場合は、狭窄部尿管を切除し、腎静脈などを正しい位置に置き直してから尿管と腎盂をつなぐ手術を行います。これも腎盂形成術の一つで、腹腔鏡下手術が可能です。
膀胱尿管逆流症では、尿管と膀胱の連結部分をいったん外し、尿管を膀胱粘膜下のトンネルを通してつなぎ直す再吻合手術が行われています。
最近、開腹しないで済む「デフラックス(R)注入療法」が行われるようになりました。これは、尿道口から、膀胱鏡という内視鏡を膀胱内まで挿入して、内部を観察。膀胱内に見える尿管口部分に、細長い注射針を使ってデキストラノマービーズを注入することにより注入した部分が「川の堰(せき)」のような役割をして逆流を止めることになります。注入に要する時間は15~30分ほど。入院期間は数日で済みます。
尿管結石などが原因ならば、体外衝撃波破砕、あるいは尿道から内視鏡を入れて結石を粉砕したり、狭くなっている尿管を広げたりする治療を行うこともあります。
ただし、腎機能が相当に悪い場合は、手術をしても改善しないこともあり、また、感染症の原因ともなるので、腎臓の摘出を検討する場合もあります。
――水腎症の治療を受ける病院は、どのように選べば良いのでしょうか。
水腎症を診療するのは、主に泌尿器科の医師です。
既に解説した通り、水腎症は先天性のものが多いため、出産や新生児、小児の治療にあたる産科、小児科との連携が不可欠です。
北里大学病院は、分娩(ぶんべん)件数が年間1000件を超える、神奈川県北地域有数の産科・周産期医療施設です。胎児の時から母体の超音波検査を行い、早めに病気を見つけ、経過を見る体制が整っています。
また、婦人科とも連携し、子宮がんや子宮内膜症などの病気に伴う水腎症も、見逃さず、治療を行っています。
水腎症のいずれの手術も、手術者にそれなりの技術が求められます。とりわけ、腹腔鏡下手術では、狭い穿刺口から手術を行わなくてはならないため、内視鏡手術の経験が必要です。また、体が小さい子どもさんの手術では、手術の難易度が高くなります。主治医の紹介により治療実績の豊富な病院を選ぶことが大切だと思います。
表の見方
入院医療費の一部を定額化して計算する方式「DPC(診断群分類包括評価)」を採用している急性期病院の一般病床が対象。大学病院や公立病院など、国内の主要な病院が含まれている。治療・手術件数は、日帰り・通院での治療は含まれず、入院での実績のみ。対象期間は2009年7月~12月の半年間。「国・」は独立行政法人国立病院機構の略。掲載は10件以上の実績がある医療機関。
手術件数は、尿管や尿道を拡張させる手術など。
病院データ
水腎症
病院名
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都道府県
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市区町村
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手術件数
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KKR札幌医療センター | 北海道 | 札幌市豊平区 | 26 |
JCHO札幌北辰病院 | 北海道 | 札幌市厚別区 | 21 |
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