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肝臓移植 肝硬変など適応…最後の治療手段

 肝臓移植の現状について専門医2人にお話をお聞きしました。大人(18歳以上)の患者について、東京女子医大消化器外科教授の江川裕人(えがわ・ひろと)さんに解説をお願いしました。江川裕人(えがわ・ひろと)東京女子医大消化…

 肝臓移植の現状について専門医2人にお話をお聞きしました。大人(18歳以上)の患者について、東京女子医大消化器外科教授の江川裕人(えがわ・ひろと)さんに解説をお願いしました。

江川裕人(えがわ・ひろと)
東京女子医大消化器病センター消化器外科教授
 1987年、京都大学医学部卒。京都大学病院臓器移植医療部助教授、朝日大学村上記念病院外科教授などを経て、2011年4月から現職。2011年10月から日本移植学会理事。専門は、肝胆膵外科、肝移植、移植免疫、臓器保存、感染症。

 ――肝臓は、どんな働きをしていますか。

 肝臓は、食物から摂取された栄養素を利用しやすい形に分解・合成する代謝という働きがあります。アンモニアなど、体に有害な物質を分解する働きもします。脂肪やたんぱく質を分解して腸から吸収しやすくする胆汁を作っています。肝臓は、人間が生きていくために、複雑で多岐にわたる働きを行う重要な臓器です。

 何らかの肝臓病が進み、肝機能が悪化すると、全身けんたい感、白目の部分が黄色くなる黄疸(おうだん)、おなかに水がたまり、カエルのおなかのようにふくれる腹水貯留、意識障害(肝性脳症)などを生じることがあります。

 ――どんな病気の患者が肝臓移植を受けていますか。

 移植の適応となる病気の中で最も多いのが「肝硬変」です。これは、様々な原因によって痛んだ肝臓が修復される過程で線維組織によって置き換わり、肝臓が硬く変化し、肝機能が著しく悪化した状態を指します。

 肝硬変の原因として最も多いのが、「B型・C型肝炎ウイルス」の感染です。ウイルスの持続的な感染により、肝臓の細胞が破壊されることで肝硬変が起きます。また、自分の肝臓が異物と認識されて免疫細胞によって攻撃を受ける「自己免疫性肝炎」も原因になります。長期間の飲酒が原因で肝臓の線維化が進む「アルコール性肝硬変」もあります。

 最近、増えているのが、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH(ナッシュ)」です。アルコールを飲まないのに、肥満や糖尿病などが原因で肝臓障害が進む病気です。高カロリーの食生活、運動不足などの不健康な生活習慣が背景にあります。

 難病に指定されている「原発性胆汁性肝硬変(PBC(ピービーシー)」にも移植が行われます。消化液の胆汁が流れる胆管が炎症を起こし、胆汁がうまく排出されないために肝硬変になる病気です。詳しい原因は分かっていません。

 B型・C型肝炎ウイルスなどが原因となる肝硬変が進んで、「がん(肝細胞がん)」になった場合も移植の対象となります。移植ができるかどうかについては国際的な基準である「ミラノ基準」があります。それは、(1)3センチ以内のがんが3個以内(2)5センチ以内のがんが1個です。それを超えると、肝臓移植しても再発率が高く、生存率が低いのです。

 肝臓移植は、薬による治療など他の治療が効果のない場合の、最後の治療手段です。

大人の患者、9割が生体移植

 ――肝臓移植の実施件数は?

 日本肝移植研究会の報告によると、2010年1年間に473件の肝臓移植が行われましたが、約7割にあたる326件が大人の患者でした。2005年の570件をピークに減少傾向が続き、現在は470件前後で推移しています。

 肝臓移植には、2種類あります。一つは、交通事故や病気などで脳死と判定された方から肝臓の提供を受けた「脳死肝移植」。もう一つは、親族らから肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」です。

 移植の種類別でみると、326件のうち、約9割を占める299件が生体肝移植です。脳死肝移植は27件と少ないのですが、それでも、前年の7件より大幅に増加しました。これは、2010年、改正臓器移植法が全面施行され、本人意思が不明でも家族承諾により脳死での提供が可能になったことが影響しています。

 移植後の累積生存率は、病気の種類や状態により大きく異なります。平均で見ると、1年生存率は生体、脳死肝移植とも83%を超えており、良好な成績を残しています。

 ――肝臓移植は、どのように行われるのですか。

 病気の患者の肝臓をすべて摘出し、生体・脳死ドナーの肝臓の一部または全部を移植します。細い肝臓の動脈などを拡大鏡で見ながら丁寧に縫い合わせるなど高度な技術が必要とされます。全身麻酔科で行われる手術の時間は、10~16時間または、病気の進行具合などによっては、それ以上かかることがあります。

 入院期間は病状によって大きく異なります。移植された肝臓を守るため、免疫を抑える薬を投与されますので、感染症にかかりやすくなります。思いがけず、感染症にかかったりすると入院期間は延びますが、平均すれば、2か月ほどになります。移植は保険で認められており、また、患者の自己負担上限額が定められた高額療養費制度の対象となります。

 2010年10月から肝移植を受けて免疫抑制剤を服用している患者さんは身体障害者1級として様々な補助を受ける事ができるようになりました。

 一方、肝臓の一部を提供するドナーと患者との関係は、多い順から、患者の子ども、配偶者、兄弟姉妹、両親です。

 ドナーの手術時間は6~8時間ほど、入院期間は1週間ほどです。ただ、仕事への復帰は1か月後くらいをお願いしています。肝臓は再生力が強いため、一部を摘出しても、半年ほどすると約9割まで戻るとされます。退院後も、傷の引きつれや疲れやすさなどの症状が続くドナーもおり、通常、退院1、3、6、12か月後、それ以後は1年に1回通院し、健康チェックを受けていただきます。ドナー手術も、もちろん、保険が適用されます。

 生体ドナーの肝臓において、どの部分を、どのくらい摘出するか、は様々な考えがあります。肝臓は左側3分の1を「左葉」、残り3分の2を「右葉」と言います。右葉を摘出して患者に移植すると、患者の肝機能は十分に確保されるが、ドナーの肝機能が損なわれる危険性があります。

 一方、ドナーの左葉を使うと、小さな肝臓に多くの血液が流れ込み、肝臓機能が急激に低下することがあります。ドナーの健康を守るために、左葉の摘出で済ませることができないか、検討が続けられています。

 肝臓移植を受けられる患者、臓器を提供できるドナーの年齢は、明確な規定はありません。高齢でも手術に耐えられる体力がある人もいますから。一般的には、患者は60歳~70歳くらいまで、ドナーは60歳代前半くらいまでと考えている医療機関が多いのではないかと思います。

 ――東京女子医大の取り組み、臓器移植の課題は?

 東京女子医大病院は、100例以上の肝臓移植の実績があるのですが、ここ数年、移植が行われておらず、あらためて移植の体制を整えるために、私が2011年4月、臨床教授として就任し、9月から肝移植を再開しました。私は京都大学時代、約1300例の肝臓移植に携わりましたが、その知識・技術を伝えられたら、と思っています。

 改正臓器移植法が全面施行された2010年、脳死での臓器提供が確かに増えました。日本臓器移植ネットワークがドナーカード(意思表示カード)の配布や臓器移植の啓発を熱心に行っていますが、思ったほどドナーが増えていないのが現状です。

 治療で回復の見込みがなく、数週間ないし数か月で亡くなるだろうと予想される終末期を迎えた場合、どのように生き、どのように亡くなるのか・・・。自分の終末期について国民1人1人が考える機会を持っていただきたいと思っています。その一環として、脳死での臓器提供についても家族で話し合っていただけたらと思います。

移植の意味、子どもたちに伝える

 子ども(18歳未満)の患者の肝臓移植について国立成育医療研究センター臓器移植センター長の笠原群生(かさはら・むれお)さんにお話を聞きました。笠原さんは2012年6月15日、6歳未満の幼児から提供を受けた国内初の肝臓移植を執刀しました。

笠原群生(かさはら・むれお)
国立成育医療研究センター臓器移植センター長
 1992年、群馬大学医学部卒業。同大外科、京都大移植外科医長、群馬大非常勤講師などを経て、2011年から国立成育医療研究センター臓器移植センター長に就任。専門は移植外科、肝臓外科。

 ――どのような病気の患者さんに行われていますか。

 一番多いのが、「胆道閉鎖症」です。この病気は、脂肪の消化や吸収を助ける胆汁の通り道(胆管)が閉鎖し、胆汁が肝臓から十二指腸に流れなくなる病気です。胆汁が肝臓にたまって肝硬変などを起こし、命を落とすこともあります。

 生まれた時から病気は進行し、国内では年間100~120人の患者さんが生まれています。胆管を切除し、肝臓と腸をつなぐ葛西式手術が行われますが、効果がない場合もあります。その時は、肝臓移植が検討されます。このようなケースが肝臓移植の8割ほどを占めます。

 そのほか、生まれつき特定の酵素が足りないため、アンモニアなどの物質が分解・代謝されず、肝硬変を起こす「代謝性疾患」があります。具体的な病名としては、ウイルソン病やオルニチンカルバミラーゼ欠損症(OTCD)などがあります。

 また、ある日突然、元気だった子どもの肝臓が機能しなくなる「劇症肝炎」もあります。原因はウイルスや薬剤などが考えられていますが、はっきりした理由は分かりません。

 特に劇症肝炎は急激に症状が悪化し、亡くなることがあるので、治療は時間との勝負です。国立成育医療研究センターでは、この病気の患者を全国から受け入れています。また、患者数が少ない代謝性疾患も積極的に治療しているため、私たちの病院での肝臓移植は、劇症肝炎と代謝性疾患が、それぞれ2割ずつと高く、胆道閉鎖症が約5割となっています。

年間の移植数は120例ほど…ほとんどが生体から

 ――子どもの肝臓移植はどのくらいの件数が行われていますか。

 年間120例ほどが行われていますが、ここ数年、ほとんど変化がありません。そのほとんどが生体肝移植です。改正臓器移植法が2010年に全面施行され、本人意思が不明でも家族承諾により脳死での提供が可能になりました。これまで禁止されていた15歳未満の子どもさんからの臓器提供もできるようになったのですが、2012年5月末現在、15歳未満のドナーは1人のみにとどまっています。やはり、脳死判定を受けても、人工呼吸器を装着して心臓が動いている我が子の姿を見ると、それを死と受け止めるのは親にとって難しいですね。そのため、なかなか臓器提供に結びつかないのだと思います。

 ――国立成育医療研究センターにおける肝臓移植の現状を教えて下さい。

 うちの病院は自治医大病院とともに、2010年、18歳未満の子どもの患者に限定した脳死肝移植施設に選ばれました。2012年6月15日までに7例の脳死肝移植を行っています。私自身のこれまでの執刀数は700例程度です。

 生体肝移植は2005年の1例目以来、2012年5月末で200例を超えました。年間40~50例を実施しており、年間実績でみると、世界で最も多くの生体肝移植を行っている施設です。肝臓提供者はご両親がほとんどです。

 私たちのチームが取り組む移植には、いくつかの特徴があります。

 一つめは、子どもの患者さんの小さな体に合わせて、ドナーの大きな肝臓を小さく、的確な大きさに切って移植する方法を開発したことです。生後1か月の乳児に移植した肝臓は重さ60グラムほどしかありません。小さな肝臓についている細い血管を縫い合わせる必要があるので、医師らには高い技術が求められます。私たちの病院での移植は1歳未満の患者が全体の4割と非常に多いので、それだけ、手術にも工夫が必要とされます。

 二つめは、肝臓摘出のためのドナーの腹部の傷は、約7センチの縦1本だけで行っていることです。従来は、縦20センチ横20センチの逆T字型に開腹するのが一般的でした。傷を小さくすることで、ドナーの回復が早いことを明らかにしました。ドナーの入院期間は7~9日間です。

 最後に、ドナーからの肝臓の一部摘出と、患者への肝臓移植を、臓器移植チームが同一の手術室で実施していることです。実は、ドナーである親の手術は外科医が、患者である子どもの手術は小児外科が、それぞれ別々に行っている病院もあります。必ずしも連携がうまくいくとは限りません。うちの病院では、患者さんの体を見ながら、ドナーから適切な大きさの肝臓を取り出すというように同時並行で手術を行います。

 ――移植を受ける患者が小さい子どもさんであることで気をつけていることはありますか。

 子どもでも、その子なりに、自分が受ける手術の意味を理解することは、とても大切なことです。どんなにパパやママが頑張って助けようとしているのか、手術はどんなことをするのか、移植後に免疫を抑える薬を一生飲まなくてはいけない理由は、などを理解していないと、中学や高校生になって、薬を飲まなくなる行動を取ることがあります。

 そうならないために、子供たちに病気や治療について分かりやすく説明し、精神的なサポートもする「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」という専門職が欧米にはあります。私たちの病院でも、アメリカで学んだ人がおり、人形や絵本などを使って、移植の意味などを子供たちに伝えています。

 子どもの肝臓移植は、国内では、それほど多く行われている訳ではありませんので、移植医療チームの技量を高く保つためにも、移植を行う施設を集約化すべきだと思います。特に、急激に症状が悪化する劇症肝炎や、生後1歳未満の小さな子どもの移植では、集中治療室での管理が非常に大変です。熟達した移植チームがある医療機関に、患者さんを集める必要があると思います。

肝臓移植・表の見方

 移植数は、日本肝移植研究会の症例登録報告による。

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肝臓移植

病院名
都道府県
2010年末までの移植数
2010年1年間の移植数
北海道大学病院 北海道 233 17
弘前大学医学部附属病院 青森県 40 7

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