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病名・テーマ 甲状腺の病気
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甲状腺がん 医師と相談、納得いく治療法選択を

 DPC病院調査甲状腺がんについて、がん研有明病院頭頸科副部長の杉谷巌さんにお話を聞きました。――甲状腺がんとは、どんな病気ですか。甲状腺は、のど仏の下に位置し、蝶々(ちょうちょう)が羽を広げた形をした臓器です…

DPC病院調査

 甲状腺がんについて、がん研有明病院頭頸科副部長の杉谷巌さんにお話を聞きました。

 ――甲状腺がんとは、どんな病気ですか。

 甲状腺は、のど仏の下に位置し、蝶々(ちょうちょう)が羽を広げた形をした臓器です。新陳代謝を促進するなど、からだの代謝を正常に保つ働きがある甲状腺ホルモンを分泌します。この臓器にできるがんが、甲状腺がんです。

 甲状腺がんによって亡くなる人は年間1000人ほどです。すべてのがんによる死亡者数は年間35万人を超えていますので、甲状腺がんによる死亡者の割合は、少ないですね。

 一方、甲状腺がんと新たに診断される患者の人数は年間7000人ほどと言われます。アメリカの調査結果によると、新規患者数は30年前の3倍になりましたが、日本も同様の傾向があると思います。診断技術の進歩などで、小さながんが見つかるようになったことが、増加の一因と思われます。

 甲状腺がんの多くを占める乳頭がんの場合、女性患者は男性の3~5倍になります。年齢は、40歳~50歳代をピークに、10歳代~80歳代と広い患者分布を示します。

 ――原因は何でしょうか。

 甲状腺は、昆布など海藻に含まれるヨード(ヨウ素)という物質を取り込んでホルモンを作っています。

 甲状腺がんには種類があり、それぞれ性質が大きく異なります。のちほど、詳しく解説します。日本人は海藻をよく食べ、水道水などからもヨードを多く摂取していますが、日本における甲状腺がんは、性質の良い「乳頭がん」の割合が高いです。一方、ヨード摂取量が少ない欧米では、性質の悪い「濾胞(ろほう)がん」や「未分化がん」の割合が高いです。このような状況を見ると、ヨード摂取と関係があるように思われますが、詳しくは分かっていません。

 東日本大震災によって東京電力福島第一原子力発電所から放射性ヨードが漏れ出し、甲状腺がんへの不安が広がりました。1986年のチェルノブイリ原発事故で、放射性ヨードに汚染された牛乳などを飲んだ子どもたちに甲状腺がんが増えたためです。日本でも、福島県を中心に甲状腺がんが増えないか、継続的に注意深く調べる必要があると思います。

 飲酒、喫煙との関係はないようですが、肥満と関係があるという研究結果はあります。

 ――甲状腺がんの種類と症状、診断法を教えて下さい。

日本人の9割以上は「乳頭がん」

 日本人の甲状腺がんの90%以上を占めるのは、「乳頭がん」です。基本的に進行が遅く、性質がおとなしいがんですので、それほど、恐れる必要はありません。甲状腺にしこりが感じられることがありますが、多くは症状が現れません。

 乳頭がんでもまれに、声がかすれてでにくい、呼吸がしにくい、血たんが出る、食事がのどを通りにくいなどの症状で発見される時がありますが、この場合は、命にかかわる怖いがんであることがあります。

 すべての甲状腺がんの診断で重要なのは、(1)しこりの硬さ、リンパ節の腫れなどチェックする「触診」(2)放射線を浴びることなく、簡単に画像情報を得ることができる「超音波検査」(3)しこりを注射器で吸引し、それを標本化して、細胞の種類を調べる「細胞診」です。

 時に、甲状腺ホルモンの分泌状況などを調べるための血液検査、がんの転移・浸潤状況を診るためのCT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などを行うことがあります。

 次に多いのが「濾胞(ろほう)がん」で、全体の5%ほどです。多くは性質がおとなしいがんですが、時に骨や肺に転移することがあります。良性腫瘍と区別が難しいがんです。

 「髄様(ずいよう)がん」は、全体の2%ほどと少ないですが、約半数が遺伝性のもので、副腎など他の内分泌腺の病気を伴うことがあります。また、血液検査でCEAやカルシトニンという腫瘍マーカーの数値が高くなる特徴があります。遺伝性か否かの診断には、血液の遺伝子検査が行われます。

 乳頭がん、濾胞がん、髄様がんは「分化がん」と総称されることがありますが、これらは比較的、進行が遅いがんです。しかし、全体の1~2%ほどですが、非常に性質が悪く、命にかかわる「未分化がん」というものがあります。腫瘤(しゅりゅう)は急速に増大し、細胞診で見当がつけられます。

 そのほか、血液のリンパ球ががん化し、甲状腺や首のリンパ節などに腫瘤を作る「悪性リンパ腫」があります。

性質おとなしい乳頭がん、手術でほとんどが完治

 ――甲状腺がんのうち多くを占める乳頭がんの治療は、どのように行いますか。

 性質がおとなしい乳頭がんは、手術でほとんどが完治します。ごく小さいがんならば、手術をする必要もないのではないか、との考え方から、経過観察をすることがあります。

 具体的には、乳頭がんの大きさが1センチ以下で、周囲の臓器への浸潤、リンパ節やほかの臓器への転移が認められない無症候性の微小がんが対象です。該当する患者さんには、経過観察でも問題がないというデータがあることを説明し、一方で、手術を受ける選択もありますと、お伝えしています。我々の病院で1995~2009年の間に、無症候性の微小がんと診断された患者さんは302名で、そのうち283名は経過観察を希望されました。結局、腫瘤が大きくなるなどして17名が後に手術を受けることになりましたが、これまでのところ皆、再発などなくお元気です。

 がん研有明病院では、微小がん以外を、「高危険度群」と「低危険度群」に分けています。高危険度群とは、(1)50歳未満では、肺や骨などに遠隔転移がある人(2)50歳以上では、遠隔転移がある人、または甲状腺外へ明らかな浸潤がある人、または3センチ以上の大きなリンパ節転移がある人を指します。それ以外を「低危険度群」に分類します。高危険度群が10~20%、低危険度群が80~90%の割合を占め、前者の10年生存率が70%弱であるのに対し、後者のそれは99%以上です。

 高危険度群では、甲状腺を手術で全部摘出し、周囲のリンパ節をきれいに掃除(郭清)した上で、「放射性ヨード内用療法」を行います。これは、放射性ヨードが入ったカプセルを飲む治療法です。ヨードは甲状腺に取り込まれる性質がありますが、甲状腺を全摘した後では、甲状腺がんが転移した細胞に放射性ヨードが取り込まれて、がん細胞をやっつけてくれる可能性があります。

 一方、低危険度群では、命を脅かす危険がほとんどないと思われるので、通常は、がんがある側の甲状腺を半分だけ切り取る「腺葉切除」を行います。リンパ節郭清も、甲状腺や気管周辺のみ行い、放射性ヨード内用療法は行いません。ただし、低危険度群でも、甲状腺を全摘して放射性ヨード内用療法を行うと、再発率がいくらか低くなる可能性があることも患者さんに説明して、選んでいただいています。

 また、甲状腺切除後、やや多めの甲状腺ホルモン剤を飲み続けることで、乳頭がんの再発を減らす「甲状腺ホルモン療法(TSH抑制療法)」を行うことがあります。

 ――そのほかの甲状腺がんの治療法を教えて下さい。

 2番目に多い濾胞がんでは、骨や肺などへの遠隔転移の有無で治療法が異なります。遠隔転移が既にある場合や遠隔転移を起こす可能性が高い場合は、甲状腺を全摘した後に放射性ヨード内用療法を行います。骨への転移は痛みが強いので、放射線の外照射や骨が溶けるのを抑える薬の服用で痛みを抑えるようにします。

 遠隔転移を起こす可能性が低いと考えられる場合は、がんがある側の甲状腺を半分だけ切り取る腺葉切除手術を行います。

 遺伝性の髄様がんは、副腎に腫瘍(褐色細胞腫)を伴うことがあるので、その有無をチェックします。ある場合は、内視鏡を用いて副腎の手術を先に行います。遺伝性の髄様がんは甲状腺の両側に多発しますので、甲状腺の全摘を行います。リンパ節郭清も十分に行います。

 未分化がんは、極めて急速に進行するため、残念ながら、診断後の生存率は高くはありません。このがんに対しては、効果的な治療法が確立していません。腫瘍を切除し、多量の放射線や抗がん剤で治療することもありますが、いまだに、治療法を模索しています。

手術後の首の違和感、徐々に軽快

 ――治療後の生活で、注意すべき点は?

 手術後の首の違和感は、だれにも現れます。のどの詰まる感じ、首がしめつけられる感じなどです。時間とともに徐々に軽快します。

 甲状腺を全摘した場合は、一生、甲状腺ホルモンを補充するための薬を飲み続けなくてはいけません。

 昆布などの海藻類にはヨードが含まれていて、甲状腺機能を低下させる作用があります。海藻類を食べてはいけないということではありませんが、昆布には要注意です。昆布は、海藻の中でもヨードが最も多く含まれています。甲状腺を一部残す手術後で甲状腺ホルモンがどうにか足りているという人は摂り過ぎに注意しましょう。

 それ以外は、食事も運動も注意点はありません。

 一般的ながんは、手術後5年たって再発がなければ完治と言われますが、乳頭がんなどは進行が遅いため、手術後15~20年までは定期的な検査を受けてほしいと思います。大きさ1センチ以下の微小がんで経過観察をしている人も含め、年に1回は触診と超音波検査を受けていただけたらと思います。

 ――病院選びは、どのように行ったら良いのでしょうか。

 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会は2010年、甲状腺がんの診療に関するガイドラインを作りました。我々が行っている微小がんの経過観察も容認されることになりましたが、微小がんを切除する方針の医療機関も少なくありません。ガイドラインができても、医療機関によって治療法には多少の違いがあります。

 まずは、かかった医療機関の医師とよく話し合い、納得した治療法を選んでほしいと思います。一般的に言えば、診療実績が豊富な医療機関は、的確な手術技術と治療法の知識を持っていると言えるでしょう。

 最近は、乳がん検診の超音波検査や動脈硬化をチェックするための頸(けい)動脈超音波検査などに伴って、偶然、甲状腺がんが見つかり、予期せぬ事に患者さんが慌ててしまうケースが多くあります。しかし、甲状腺がんのほとんどは進行が遅く、それほど性質が悪くないがんですので、むやみに怖がらずに、冷静になって自ら病気についての知識を得ることが大切です。


甲状腺がん・表の見方

 入院医療費の一部を定額化して計算する方式「DPC(診断群分類包括評価)」を採用している急性期病院の一般病床が対象。大学病院や公立病院など、国内の主要な病院が含まれている。治療・手術件数は、日帰り・通院での治療は含まれず、入院での実績のみ。対象期間は2009年7月~12月の半年間。「国・」は独立行政法人国立病院機構の略。掲載は10件以上の実績がある医療機関。「-」は10件未満。

 手術件数は、全摘または部分切除など甲状腺がん手術全般が含まれる。手術なしの治療件数は、入院しての抗がん剤治療など。

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甲状腺がん

病院名
都道府県
市区町村
甲状腺切除などの手術件数
手術なしの治療件数
北海道大学病院 北海道 札幌市北区 44 61
旭川医科大学病院 北海道 旭川市 40 24

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