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医療・健康・介護のニュース・解説

くも膜下出血だけじゃない 死亡率が高い硬膜下血腫とは? 「急性」と「慢性」の2タイプ…鳥山明さんは「急性」で死去

 転倒や交通事故などで頭を打って脳を包む膜と脳の間で出血が起き、血の塊が脳を圧迫して頭痛や吐き気、認知症に似た症状などが出る「硬膜下血腫」という病気があります。急性と慢性の2種類に分けられます。命を救い、後遺症を防ぐためには早期受診が大切です。(藤沢一紀)

高齢者に多く発症

 脳は頭蓋骨と「硬膜」「くも膜」「軟膜」という3層の膜に包まれています。硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間にある架橋静脈という血管が、頭部への衝撃がきっかけで切れて発症することが大半です。

 転倒のほか、ラグビーや柔道などのスポーツで頭部に衝撃を受けることなどが出血の原因となります。血の塊(血腫)が脳を圧迫し、様々な症状が出ます。

 高齢者で発症が増えるとされます。加齢で脳は 萎縮いしゅく し、脳と頭蓋骨の隙間が広がり、血管が引き伸ばされます。血管自体も弾力性が失われ、損傷しやすいです。さらに骨密度の低下で頭蓋骨がもろくなり、衝撃のダメージが増大すると考えられています。

 症状が出血から数時間程度で出るのが急性、数週間から約1か月かけて出るのが慢性です。漫画家の鳥山明さんは急性硬膜下血腫で3月に亡くなりました。

 急性では意識障害、頭痛、吐き気、 嘔吐おうと などが起きます。症状の出方は、元々の健康状態、血腫の位置や大きさに左右されます。

 高齢者では発症まで時間がかかることがあります。脳が萎縮していると、血腫が大きくならないと圧迫されないからです。乳幼児では頭が激しく揺さぶられて発症することもあります。

 慢性でも頭痛や吐き気などの症状が表れます。加えて、血腫が脳を徐々に圧迫することで認知症のような症状が出ることがあります。会話の受け答えがうまくできなくなる、物忘れが多くなる――などです。

 急性の死亡率は55%程度と言われており、積極的に治療します。コンピューター断層撮影装置(CT)で三日月状の血腫を確認したら、開頭して早期に出血を止め、可能な限り血腫を取り除いて脳内の減圧をします。

後遺症出ることも

 手術後は圧迫による腫れが引くまで頭蓋骨を戻しません。脳そのものが大きく傷ついていることも多く、後遺症が出ることもあります。2か月以上入院してリハビリする人もいます。

 慢性では、管を挿入して血腫を取り除く治療を選択することがあります。血腫に近い頭蓋骨と硬膜に1~1・5センチ程度の穴を開けて吸引し洗浄します。200ミリ・リットルほど血がたまっていることもあります。

 局部麻酔で済み、約1週間で退院できます。この手術でほとんどの人が治りますが、約1割の人で再発します。再発した場合、改めて手術を行います。

 何らかの理由で手術できない患者には、余分な水分を除去する漢方薬を投与することもあります。

 大阪医科薬科大病院脳神経外科・脳血管内治療科医長の川端信司さんは「くも膜下出血に比べると認知度は低いですが、死亡率が高い病気です。早期診断と治療が救命率を上げ、後遺症のリスクを下げます。激しい頭痛や嘔吐が続いたら、救急車を呼びましょう」と話しています。

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