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メディカルトリビューン

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コロナ禍以降の梅毒患者、日本の増加が突出 4カ国の推移を比較

 順天堂大学総合診療科学/筑波記念病院(茨城県)救急科・集中治療科診療医長/筑波大学ヘルスサービス開発研究センターの小森大輝氏らは、国立感染症研究所(NIID)の包括的サーベイランスデータなどを用いて日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)の4カ国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前後における梅毒患者数の推移を後ろ向きに調査。その結果、 日本の梅毒患者数はパンデミック発生の2020年にいったん減少したものの、その後は再び急増しており、増加率が4カ国の中で突出して高かった とPLoS One( 2024;19:e0298288 )に発表した(関連記事「 コロナ下で増えた感染症を探る 」)。

2020~21年にニュージーランドは減少、中国・オーストラリアで微増、日本は36%増

コロナ禍以降の梅毒患者、日本の増加が突出 4カ国の推移を比較

(C)Adobe Stock ※画像はイメージです

 小森氏らは今回、2018年~22年のNIIDサーベイランスデータを用い、日本におけるCOVID-19パンデミック前後の梅毒患者数を解析。さらに、中国疾病対策センター、ニュージーランド環境科学研究所の性感染症調査報告書、オーストラリア届出疾患サーベイランスシステム(NNDSS)のデータを解析し、日本と他の3カ国における梅毒患者数の推移を比較した。

 その結果、COVID-19パンデミックが発生した2020年には全4カ国で前年と比べて梅毒の年間患者数が減少し、減少率は日本で11.7%、中国で11.0%、ニュージーランドで28.9%、オーストラリアで11.0%だった。

 しかし、翌年(2021年)の梅毒患者数は、ニュージーランドで前年と比べて12.6%減少したものの他の3カ国では増加に転じ、 増加率は中国の2.8%、オーストラリアの4.8%と比べ、日本では36.0%(5,867例→7,978例)と突出して高かった。

2022年はオーストラリアの6.3倍の66.2%増で1万3,258例に

 2022年の梅毒患者数は、中国で前年と比べて7.4%減少した一方で日本とオーストラリアでは増加が続き、 日本における増加率はオーストラリアの約6.3倍だった(66.2%vs.10.5%)。 同年の日本の梅毒患者数は、現行の感染症サーベイランスが開始された1999年以降で最多の1万3,258例に上った。

 日本における梅毒患者の年齢別・性別の発生傾向はCOVID-19パンデミック前後で変化がなく、男性で20~40歳代、女性で20歳代が最も多かった。また、男性間性交渉者(MSM)および異性愛者のいずれでもパンデミック後に梅毒患者が増加したが、前年からの増加率は異性愛者で高かった(2021年:15.8%vs.41.5%、2022年:32.1%vs.74.9%)。

外出自粛による受診減少、感染症への「慣れ」の可能性も

 小森氏らは「日本でCOVID-19パンデミック後に梅毒患者が急増した理由は不明」とした上で、「2020年3月から2022年10月まで入国制限を強化した結果、外国からの旅行者はパンデミック前と比べ85%以上減少しており、外国から持ち込まれた可能性は低い」との見解を示している。

 考えられる理由として、「 外出自粛要請の影響により医療機関の受診が減少した結果、梅毒の発見が遅れ、適切な治療が行われず感染拡大につながった 可能性がある」と指摘。また、「 COVID-19との共存に慣れて感染症に対する不安感が薄れ、性交渉の機会が増加した 」可能性も挙げ、「今後の動向を慎重に観察する必要がある」付言している。(太田敦子)

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