文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ウェルネスとーく

医療・健康・介護のコラム

[市毛良枝さん](上)北アルプス縦走はハイキング? 初登山は医師の誘いで2泊3日…コロナ禍に私生活で「ブラタモリ」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 俳優の市毛良枝さんは登山が趣味で、登山家の田部井淳子さんとの交流でも知られます。登山との出会いやコロナ禍の巣ごもり生活について聞きました。(聞き手・松本由佳、写真・中山博敬)

「ハイキング程度」のはずが…初登山で北アルプスに

[市毛良枝さん](上)初登山は医師の誘いで2泊3日 北アルプス縦走はハイキング?…コロナ禍に私生活で「ブラタモリ」

――登山を始められて30年以上。きっかけは何だったのでしょうか。

 山は父が引き合わせてくれたようなものです。84歳で亡くなった父が最後にお世話になった救急病院の先生が山好きだったんです。

 医師だった父は「自分が医師として生きてこられたのは、学生時代に解剖を学んだためで、お体を提供してくれた人がいたからだ」と常々感謝していて、死後は出身大学の法医学教室に献体したいと宣言していました。

 父がそんな医者だったということを先生にも知ってほしくて、2年ほどたって解剖所見が届けられると、 看取(みと) っていただいたお礼も兼ねて報告に行きました。その時、くつろいで話をしていて、「よかったら山に連れて行ってくださいね」とふと口にしてしまったんです。でもまさか、それがひと月もおかずに現実になるとは思っていませんでした。

 40歳になった9月です。ハイキング程度だと聞いていたのに、行き先は北アルプスの (つばくろ) 岳から 常念じょうねん 岳。山小屋2泊3日の縦走ルートです。実は中房温泉から燕岳に続く合戦尾根は、北アルプス三大急登の一つと言われる厳しい登りだったんです。登り始めてすぐ、さすがに「これはハイキングではない」と気付きました。後に、登山の仲間みんなに笑われる話ですけど。

 もっと楽な山だったら、山にはまっていなかったかもしれません。つらかったのは事実。でも登れてしまった。それまで、運動ができない、身体能力などないと思っていたのに、3000メートル近い山に登れてしまったんです。私、結構できるかもしれない、と。

 さらに下山の際に、先生から「バランスがいいんだね」と褒められたんです。「どんくさいね」「運動音痴だね」って言われたことはあるけど、「バランスいいんだね」なんて言われたのは生まれて初めてでした。うわーっと、うれしくなりました。

――ポジティブ思考の始まりですね。

 それからですね。苦手だと思い込んでいたことでもやってみようかなと思い始めたのは。やってみたら、どんなことでもそれなりにできるんです。無理と思っていたことが大概できる。すごく楽しいことだと気付きました。

 次の山は富士山かなって思って、山仲間に言ったら、「富士は登る山じゃない」と言われました。でも、ある時登る機会があって、意外といい山だったんです。「登る山じゃない」というのは違うなと思いました。

 確かにもっと楽しい山は他にもある。でも日本にこれ以上ない高い山です。とんでもない遠くまで見通せる。帰って仲間に報告したら、「ああ、私たち冬の富士山しか知らないから」って言うんです。夏の混んでいる富士山なんて山じゃないと言って。経験していないだけだったんですね。人の話はうのみにしちゃいけない、何でも自分で見て出した結論でいいと思いましたね。

――山の楽しみ方を教えてください。

 富士山を登るなら、お勧めは1合目から行くことです。高度順応もできるし。下の方は植生が豊かですごく楽しい。樹林帯を抜けたところでうわーっと開けて富士の頂が見える。すごい感動よ!

 弾丸登山ではなくて、味わう登山がいいですよ、と言いたいです。数や高さを競うのではなくて、山は味わうようにじっくり登るのが楽しいんです。自然と自分、一緒に行く仲間、山小屋での出会い……。そんな関係性の中で山をどう感じるか。百名山を登るなど、数を目標にするのも悪くはありませんが、山はスタンプラリーとは違う。経過を楽しんでほしいと思います。

 山では、体力のない人を2番目3番目にして、その人のペースで歩くんです。強い人がぐいぐい引っ張るのではなくて、弱い人のペースに合わせて、決してその人を置いていかない。理にかなっていますよね。世の中もそうあればいいのに、といつも思います。一人ひとりが自己責任を負うことは最低限のマナーだけど、助け合うことも大切です。そんなことを教えられるだけでなく、体感として学べるのが山のいいところです。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

wellnnesstalk1-200

ウェルネスとーく

 あの人が、いつも生き生きしているのはなぜだろう。

 健康、子育て、加齢、介護、生きがい…人生の様々なテーマに向き合っているのは、著名人も同じ。メディアでおなじみの人たちが、元気の秘密について語ります。

ウェルネスとーくの一覧を見る

最新記事