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伊藤清世の「あれ?コレ 介護食 plus」

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[能登半島地震]東日本大震災を経験した管理栄養士が勧める「パッククッキング」…高齢者でも冷たいおにぎりを食べやすく

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食べやすいメンチカツの混ぜご飯

食べやすいメンチカツの混ぜご飯

 こんにちは、在宅訪問管理栄養士の伊藤清世です。

 1月1日に起きた能登半島地震で大津波警報が発令されたとき、私は「あの津波を経験するのは、私たちだけで十分。どうか津波が来ませんように」と祈っていました。

 東日本大震災のとき、私は宮城県の病院に管理栄養士として勤務していたのです。病院を襲った津波は直接、海から来た波ではなく、水が河川を逆流することで発生したものでした。病院は約2メートルの浸水となり、1階は水没、地下にあった自家発電は使用できなくなり、ライフラインはすべて途絶しました。

 非常食を搬出しましたが、途中で浸水が始まり、1日分しか運び出すことができませんでした。当日、院内にいた人数は想定を大きく上回る人数であったため、当初の予定の半分量で提供することになりました。

 当日は、非常食用のパンの缶詰1個を2人で分けたり、レトルトのおかゆを尿検査用の紙コップと医療用の舌圧子(舌をおさえるへら)で食べてもらったりしたように思います。

 その後も、水の使用が限られており、おかゆを作ることができても、鍋を洗うことができなかったり、支援物資で届いたリンゴなども包丁がないために切ったり煮たりすることができませんでした。

 当時のことを振り返りながら、災害時の食についてお伝えしたいと思います。中でも「かむ、飲み込む機能が低下した方」の食について考えます。

支援物資があるのに食べられない

 このような大災害時に支援物資として配られるものは、おにぎりや菓子パン、一般的な仕出し弁当です。東日本大震災のときに感じたのは、こういう食事は、食べる機能に問題のない人にだけ適したものであるということでした。

 冷たくなったおにぎりや、パサつく菓子パンなどは、高齢の方には食べにくいことがあります。冷たくなったおにぎりやお弁当のご飯は硬くぽろぽろとしていて、まとまりません。おかずの唐揚げも冷えれば、硬く食べにくいものです。

 食べるためには口の中の健康も大事です。「震災で入れ歯をなくした」「歯みがきができない」「やせたために入れ歯が合わなくなった」などのことからも食事がとれなくなります。

 「かむ、飲み込む機能が低下した方」は、もともと食べられるものがかなり限られているため、災害時には簡単に栄養状態が下がってしまいます。慣れない避難所生活などの環境変化で精神的にもダメージを受けてしまいます。

 震災以降に、寒さなどによる関連死でお亡くなりになった方は栄養状態があまりよくなかった方も多く含まれました。普段からの健康状態がその後の生活に大きくかかわってきます。

非常時に便利な「パッククッキング」

ポリ袋で湯煎する「パッククッキング」

ポリ袋で湯煎する「パッククッキング」

 東日本大震災のとき、私が提供したメニューは、前日に支給されたぽろぽろのおにぎりをインスタントみそ汁で煮込んでおじやにしたものでした。コンロなど熱源がある場合には、おにぎりのフィルムをはがして、のりがついたまま鍋に入れ、おかゆにすることもできるのです。みそ汁だけでなくコーンスープなどの粉末のスープのもとで味をつけてもよいでしょう。

 菓子パンも同様に、支援物資の中の飲み物、たとえば野菜ジュースや豆乳、ペットボトルの紅茶と一緒にパンがゆにすることもできます。

 東日本大震災、阪神・淡路大震災において、水の復旧には約半年かかっています。水が出たといっても、使用制限をされることがあるため、節水を意識した食事作りが必要となります。

 もし、鍋を洗う水が限られているのであれば、耐熱性のポリ袋に食材と水や汁を入れて、湯煎する「パッククッキング」というやり方で、おかゆやパンがゆを作ることもできます。これなら、鍋が汚れません。

 お弁当のご飯はおかずと一緒にポリ袋に入れて温め、ポリ袋の中で混ぜご飯のようにすると食べやすくなります。例えばご飯とメンチカツにソースを少し入れて混ぜてもよいですし、ご飯と卵焼きと少量の漬物を一緒に混ぜご飯にしてもおいしく食べられます。

 もし支援物資でレトルトのおかゆが配布されているのであれば、おかゆとご飯をポリ袋の中で混ぜて軟らかいご飯にすることもできます。

 ぽろぽろして、むせやすい食材は、とろみ剤でまとまりやすくするとよいでしょう。缶詰めの魚を汁ごとポリ袋に移してほぐし、少量のとろみ剤を入れて混ぜることで、食べやすくすることもできます。

 缶詰めのみかんや桃もそのままでは食べにくい場合は、同様にポリ袋の中でほぐし、水分でむせないよう少量のとろみ剤で混ぜてもよいでしょう。

 災害時にはまな板や包丁は洗えないことも考えられるため、食中毒発生予防の観点からも、ポリ袋を常備し、その中でほぐしたり、混ぜたりすることでちょっとした衛生管理ができます。

 災害の現場では支援者も疲れています。料理を作る人も、自分の精神状態や体の状態にも気を配ることを忘れないでください。そして、普段から、ご自身の体や心の健康状態を高めていくことも大切です。

(在宅訪問管理栄養士 伊藤清世)

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伊藤清世(いとう きよ)

在宅訪問管理栄養士・介護食アドバイザー
委託給食会社で病院・高齢者施設・保育所等の調理業務、総合病院の管理栄養士を経て、現在は仙台市の「ないとうクリニック複合サービスセンター」で在宅訪問管理栄養士として活動中。また、地域での講演活動を通じ、かむ、のみ込む力が低下した方にも喜ばれる、食べやすくおいしい食事作りを提案している。

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