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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

不登校でゲームに没頭していた男子中学生 通信制高校の登校日には休まず登校…人生前向きになれたきっかけは?

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不登校でゲームに没頭していた男子中学生 好きな昆虫や天体の知識が現実世界で人の役に立ったことで人生が前向きに

 ゲームに没頭する不登校の子どもたちにとって、現実世界で人の役に立つという体験は、心の成長のきっかけになります。今回はそのような中学生をご紹介します。

 大輝君(仮名)は不登校ということで思春期外来を受診した中学1年の男子です。

 幼稚園時代から人の輪の中に入ることが苦手で、いつも一人でブロック遊びや折り紙をしていました。小学校入学後も、なかなか友達を作ることができず、休み時間は一人で本を読んで過ごしました。

 小学5年の時にクラス替えがあり、新たに一緒になった同級生の男子から、からかわれるようになりました。その直後から、朝、起きてこなくなり、学校を時々休み出しました。お母さんは必死になって大輝君を起こそうとしますが、ベッドから出てきませんでした。

 中学校に入学すると、1年生の5月の連休後から学校を休み始め、ゲームに没頭するようになりました。そのため、その年の10月にお母さんと一緒に思春期外来を受診しました。

 大輝君は大柄な体格で、髪を肩まで伸ばしていました。主治医の質問には「はい」「いいえ」と答えるだけでした。お母さんは不登校を何とかしようと一生懸命でしたが、大輝君は登校してくれません。そこで、お母さんと同伴で定期的に通院してもらうことにしました。

「小学生に理科を教えてほしい」と先生から提案が

 その後も不登校は続きました。大輝君は、学校復帰を支援する適応指導教室に通うことを嫌がり、ゲームにひたすら没頭していました。中学1年の2月になって、隣町のフリースクールの見学に行ったところ、そこがとても気に入り、中学2年4月から週に数回通うようになりました。

 このフリースクールには、小学生から中学生までの不登校の子どもたちが通っていました。そこでは、大輝君はもっぱら自由にゲームをしていました。ゲーム好きの子どもたちが集まった際には、ゲームネタで盛り上がることもありました。時々、先生から勉強を教えてもらう時間もあり、大好きな理科を教わりました。大輝君は昆虫の生態や天体ついて興味を持っており、その知識がとても豊富でした。

 中学3年生になり、学校への登校はできませんでしたが、フリースクールへは通い続けました。また、診察中の話題はゲームが中心でした。

 ある時、フリースクールの先生から「小学生に大輝君の興味のある理科を教えてもらえないか」という提案がありました。大輝君は少々不安でしたが、引き受けることにしました。自分の得意な昆虫と天体の授業を数回行いました。

 授業を終えて受診した大輝君は「最初は緊張しました。でも好きなことを話しているうちに、話すことに夢中になって緊張をいつの間にか忘れてしまいました。授業を終えて、不登校の自分は価値がないと思っていましたが、そんな自分でも他人の役に立つのだと思うことができました。そして、いろいろなことをやってみたいと考えるようになりました」とうれしそうに話してくれました。

 その後、大輝君は通信制高校に入学し、登校日には休まず登校し、友達も新たにできました。

 お母さんによると、自宅ではゲームをするだけではなく、科学や歴史の本をよく読むようになり、家事の手伝いも嫌がらずにしてくれるようになったということです。今でもフリースクールを訪問し、先生たちといろいろな話をしているようです。

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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