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「電気ケトル」から熱湯でやけど、0歳児の救急搬送は都内だけで5年間45人…専門家「命に関わるケースも」と警鐘

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 お湯を沸かす「電気ケトル」から熱湯がこぼれ、乳幼児がやけどを負う事故が後を絶たない。手で触って倒したり、棚から落としたりするケースが多い。これから冬本番で使用する人も多くなるとみられ、専門家が注意を呼びかけている。(大井雅之)

目を離した隙に

 「ギャー」。室内に突然、大きな泣き声が響いた。昨年12月、東京都内に住むパート従業員の女性(32)が自宅の台所で電気ケトルを使い、1・2リットルのお湯を沸かしていた時のことだ。

「電気ケトル」から熱湯でやけど、0歳児の救急搬送は都内だけで5年間45人…専門家「命に関わるケースも」と警鐘

棚に置かれた電気ケトル(手前)。この家庭では子どもがやけどを負って以来、使用時は高所に移している(2日、東京都内で)=永井秀典撮影

 電気ケトルが棚の高さ約50センチの位置から床に落ち、近くで次男(1)が泣いていた。湯が半分ほどこぼれ、手足にかかっていた。

 泣きわめく次男を抱き上げてシンクの流水で体を冷やした。近所の診療所を受診したところ「やけどの範囲が広い」と言われ、総合病院の救急外来に急行。右腕と右足のやけどで、ひどい水ぶくれになった。

 次男は生後10か月を過ぎた頃から一人で歩けるようになっており、ケトルを手で倒してしまったようだ。家事に気をとられていた女性は「(次男から)目を離さなければよかった。ごめんね」と悔やむ。

 今ではやけどの痕はほとんど消えたが、「二度とかわいそうな思いをさせない」と、ケトルを使う時は手が届かない棚の上に置いている。女性は「身近なところに危険が潜んでいると実感した」と語った。

2000年代から普及

 電気ケトルは、湯を保温して蓄えておける電気ポットと異なり、基本的に保温を想定していない。「ケトル(やかん)」と呼ばれるゆえんだ。英国のメーカーが1955年、沸騰すると自動的に電源が切れる機能を搭載した電気ケトルを発売し、その後、改良が重ねられてきた。

 日本電機工業会などによると、国内では2000年代から普及が加速し、17年度に約75万台だった出荷台数は22年度に約100万台に増えた。必要な量のお湯を手軽に沸かせる点が消費者に受け入れられたようだ。

 その一方、熱湯がこぼれてやけどを負う事故も相次いでいる。東京都の調査によると、20年までの5年間に電気ケトルが原因で救急搬送された5歳以下の乳幼児は85人。そのうち半数超の45人が0歳児だった。

 関西医科大が同大付属病院で診察した6歳以下のやけど患者184人を対象に行った調査でも、12人は電気ケトルの湯漏れが原因だった。「ハイハイして倒した」「コードを引っ張った」「料理中に母親がこぼした」などの事例があったという。

 同大の日原正勝准教授(形成外科学講座)は「乳幼児は皮膚が薄く、やけどが重症化して皮膚移植が必要になったり、命の危険が生じたりすることがある」と指摘する。

安全対策を呼びかけ

 乳幼児のやけどを防ぐため、メーカー側は使用者に対し、〈1〉床やテーブルなどの手が届く位置で使わない〈2〉ふたを確実に取りつける〈3〉注ぎ口や蒸気口を触らせたり顔を近づけたりさせない――などの安全対策を呼びかけている。

 製品の安全性向上にも取り組んでおり、象印マホービン(大阪)は電気ケトルの全商品でふたなどを改良して「湯漏れ防止機能」を採用し、倒れても湯がこぼれにくくした。

 子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフキッズジャパン」理事長で小児科医の山中龍宏さんは「乳幼児がいる家庭では少し値段が高くても湯漏れ防止機能付きの電気ケトルを使用すべきだ。年末年始の帰省先やホテルなどでも、簡単に手の届かない場所で使うなど注意してほしい」と話している。

やけどしたら…流水で20分冷やす

 乳幼児がやけどを負った場合、応急処置はどのようにすればいいのか。

 日本小児科学会によると、まずは流水で20分間冷やすことが重要だ。氷水は凍傷になる恐れがあるため、使用を控えた方がいい。

 服の上から熱湯を浴びた場合は、無理に脱がせずに着衣のまま冷やし、体温が下がりすぎないように注意する。やけどが広範囲な場合は、患部を冷やした後ですぐに病院を受診し、必要に応じて救急車の利用も考えるべきだ。

 夜間や休日でも「こども医療でんわ相談(#8000)」に電話すれば都道府県の窓口に転送され、看護師らから助言を受けられる。

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