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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

歯ブラシがのどの奥に刺さった…怖い子どもの日常事故を防ぐには

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 今回は、よくある子どもの事故についてお話しします。日常生活でよく使う道具、歯ブラシ、箸、割り箸、フォーク、鉛筆などによる刺傷事故が報告されているのです。

歯ブラシがのどの奥に刺さった…怖い子どもの日常事故を防ぐには

イラスト:高橋まや

歯ブラシをくわえたまま転倒

事例1 2012年1月、4歳男児。夕食後に洗面所で歯磨きを始めたが、母親が居間に移動したため、子どもも居間に移動し、1人掛けソファのそでの部分(高さ50センチ)に立って歯ブラシをくわえていた。泣き声で母親が振り向くと、歯ブラシをくわえたまま、フローリングの床にうつぶせに転倒していた。あおむけにしたところ、歯ブラシの柄の部分が口から出ていて、子どもはうなっていた。あわてて突き刺さった柄の部分を引っ張り出したが、歯ブラシの先端部分(約3センチ)がなく、口の中には何も残っていなかった。救急車で医療機関を受診した。その日は帰宅したが、翌日、再度の頭部CT検査で、のどの奥に歯ブラシの先の部分が認められ、摘出術が行われた。

 歯ブラシによる乳幼児の 口腔(こうくう) 内の刺傷は、以前からよく知られています。東京消防庁によると、管内で5歳以下の乳幼児が歯磨き中に歯ブラシで受傷した事故によって搬送された例は、2006年から2010年に217人、2015年から2019年に197人、2018年から2022年に182人と報告されています。毎年、ほぼ同じ事故が発生しているのです。

 日本小児科学会の傷害速報でも、重傷度が高い事例が報告され続けています。また、2017年2月には、東京都生活文化局からも「子供に対する歯ブラシの安全対策」という報告書が出ています。

 何回も実態が報告され、きちんとした安全対策が示されているのに、歯ブラシによる乳幼児の刺傷事故は減っていません。

 一定以上の力がかかると柄の部分が曲がる歯ブラシ、のどの奥をつかないように柄の部分に子どもの口より大きいカバーがついている歯ブラシなど、傷害の程度を軽減する製品はすでにあるのです。

 歯ブラシによる事故件数が多いこと、減少傾向が見られないこと、重傷化する場合があることなどから、乳幼児用の歯ブラシについては、「乳幼児用の歯ブラシは、歯ブラシに衝撃が加わったときに衝撃を吸収する機構が備わっていること」という業界基準、あるいは行政の規制をかける必要があると思います。

箸が下あごの奥に突き刺さる

事例2 4歳5か月男児。2011年6月、夕食後、右手にしつけ箸を持ったままいすに座り、いすをぐるぐる回しているうちにバランスを崩して転落した。3本の指は箸のリングにしっかりとはまっていた。下あごの真ん中にしつけ箸の先が刺さって抜けた。かなりの出血があり、刺傷部位には穴が二つ認められ、2針縫合した。

 しつけ箸とは、箸の持ち方を練習するための矯正用の箸です。さまざまな製品がありますが、この事例の箸は、リングに指を入れて固定する構造となっていました。子どもが転落しても箸は指から外れません。転落してひじが床についた時、箸先が上向きになって下あごに刺さったと思われます。

 しつけ箸にかぎらず、ふつうの箸でものどに刺さることがあり、そうした事故が 日本小児科学会の傷害速報 でも報告されています。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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