文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ニュース

医療・健康・介護のニュース・解説

医師偏在の解消を目的に始まった国立「地域枠」、卒業生の5%弱はルールより早く流出

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 国立大学の約6割が入試制度で地元に就職することなどを条件にした「地域枠」を設けていることが、読売新聞の調査でわかった。「地域枠」は、若者の流出を食い止めたい地元と、優秀な学生を確保したい大学の思惑が一致した結果といえる。中でも地方で人材不足が課題となっている医学部と教育学部については、各大学とその地元で様々な工夫や努力がみられる。(北海道支社 宮下悠樹)

2000年代から

 「都会の大規模病院より、医師の少ない地方で若いうちから責任が重い仕事をするのが理想」

医師偏在の解消を目的に始まった国立「地域枠」、卒業生の5%弱はルールより早く流出

旭川医科大に地域枠で入学した山口さん。「お世話になった地元に貢献したい」と語る(北海道旭川市で)

 北海道旭川市にある旭川医科大2年の山口大翔さん(21)は、医師不足に悩む地元の釧路市で地域医療を担いたいと考え、同大の地域枠を受験した。道東・道北地方出身で同地方での勤務という条件も、希望通りだった。共通テストで一定の水準を超えれば、個別の学力試験がなく論文や面接で受験できるのもメリットだったという。

 地域枠は、医師の偏在解消のため過疎地で一定期間働くことなどを条件に、2000年代に医学部で広まった。文部科学省によると、22年度に地域枠で入学した医学部生は私大を含め約1700人で、同学年全体の18%を占める。医学教育や地域医療に詳しい筑波大の前野哲博教授は「過疎地の医師不足解消に一定の貢献をしてきた」と話す。

教育学部 注力

 「地域枠は、小学校の教員になる意欲を持った方を対象としています」

 埼玉大で8月下旬、25年度の入学生を対象に教育学部に設ける地域枠の説明会で、大学職員が熱っぽく訴えた。教員は近年、長時間勤務の常態化など過酷な労働環境が問題視され、全国的に志望者が減少。埼玉県では小学校の教員が不足しており、県教育委員会やさいたま市教委の要望に大学が応えた形だ。

医師偏在の解消を目的に始まった国立「地域枠」、卒業生の5%弱はルールより早く流出

 高校側は好意的に受け止める。同大教育学部に毎年、合格者を出している県立川越女子高の進路指導主事は「意欲がある地元の生徒が入りやすくなるのはありがたい」と歓迎する。

 18歳人口は1992年度の205万人から減少し、2022年度には112万人に落ち込んでいる。こうした中、地域枠は各大学で増えている。広島大は今春の入学生から情報科学部で、三重大は来春から生物資源学部で導入。それぞれ地元で活躍するデジタル人材や農漁業関連の課題解決に役立つ人材を育成するのが目的だ。

 島根大では全学部で地域枠を設置済みだ。地域枠で入学した法文学部法経学科2年の男子学生(20)は、地元の課題について住民とともに解決を目指す実習に参加しており、「島根で地域づくりと教育の充実に取り組みたい」と意気込む。

「流出」懸念も

 一方、地域枠の導入が先行する医学部では、決められた期間よりも早く地域外へ「流出」することが課題となっている。厚生労働省が19~20年に行った調査では、9707人のうち450人(4・6%)が「流出」した。都市部より設備が劣る地方病院で専門性を高める難しさや、結婚・出産などとの両立が難しいことが背景にあるとみられる。

 河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員は地域枠について、「地元で活躍したい生徒には良いが、受験の段階で職業や居住地が決まるので、将来の希望とのミスマッチが起きないよう学校や家庭でよく話し合ってほしい」と指摘する。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ニュースの一覧を見る

最新記事