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ひきこもりが長期化して親は高齢に 父母が亡くなった後の生活は?…ライフプランづくりの進め方

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 子どものひきこもりが長期化し、親が高齢になると、将来の家計や親が亡くなった後の生活が心配になります。早めに「ライフプラン」作りなどを通じて今後のお金の見通しを立て、やりくりを考えることが大事です。生活を変えるきっかけになることもあるそうです。(粂文野)

備えの必要性を認識

ひきこもり 親亡き後のライフプラン…家計の見通し 生活変える

 東京都内の女性(75)は、20年ほどひきこもる息子(45)と2人暮らし。会社員だった夫を5年前に亡くし、遺族年金などで生活してきたが、「このままお金が足りるのか」という不安が募り、昨年、一般社団法人「OSDよりそいネットワーク」(東京都豊島区)に相談した。

 団体名のOSDは「親が、死んだら、どうしよう」の頭文字だ。ファイナンシャルプランナーや弁護士などの専門家が、ひきこもりの人や親、きょうだいから年に約1000件の相談を受ける。馬場佳子・代表理事は「無収入の大人を養っている分、お金の心配がある家庭が多い。親亡き後も含めたライフプランの作成が大切になる」と話す。

 馬場さんによると、まず現状の把握だ。貯蓄や不動産、売却可能な自動車なども含めた「資産」と、住宅ローンなどの「負債」を洗い出す。そして毎月の収入と生活費をチェックする。

 さらに、毎年の貯蓄の増減を示す「キャッシュフロー表」を作成する。親が働いている場合はいつまで働けそうかを考え、年金収入の見込みも確認する。次に親が亡くなる時の資産を見積もり、その後、残された子どもの生活について検討する。

 この親子の場合、相談時には女性の遺族年金や個人年金保険などの収入が月22万円あり、支出は月20万円だった。住まいは築20年の持ち家で、預貯金が約1500万円あった。

 平均余命を参考に女性が91歳で亡くなると仮定すると、途中で個人年金保険の支給はなくなり、資産は3分の1に目減りすることが分かった。そのまま息子が同じ生活を続けると6年で蓄えが尽きると見込まれた。

 そこで担当したOSDのファイナンシャルプランナー・鈴木裕二さんは息子の収入を見直した。

ひきこもり 親亡き後のライフプラン…家計の見通し 生活変える

ひきこもりの人の家族の相談を受けるファイナンシャルプランナーの鈴木さん(右)(15日、東京都豊島区で)

 まず、精神障害を発症していた息子が継続的に障害年金を受け取る手続きを行った。母親は相談するまで受給資格があると知らなかったという。

 手続きの結果、月約6万円を受給できるようになっただけでなく、本来は過去に受け取るはずだった計約400万円も支給されることになった。息子に就労意欲があることも確認でき、障害者雇用枠での就労を目指す方針が決まった。

 鈴木さんによると、親子は自分たちの資産などを洗い出す作業を通じて、将来に向けた備えの必要性を改めて認識したという。

 鈴木さんは「『短時間就労などで少しずつ貯金すれば足りる』といった目安が分かると不安が少し軽くなる人もいる」と話す。家計の見通しを知って家計簿をつけ始めたり、就労に向けて動き出す人もいるという。

推計146万人 住居確保、相続に備え

 内閣府が今年3月に公表した調査結果によると、15~64歳で「自室からほとんど出ない」「近所のコンビニなどには出かける」といったひきこもり状態が6か月以上続いている人は、全国で推計146万人。親が高齢で働けなくなったり、介護が必要になったりすると、家族全員が追いつめられてしまうこともある。

 親が亡くなった後の対策としては、住まいの確保も大切になる。持ち家なら子どもが住み続けることを想定する親は多いが、広すぎて管理できなかったり、古くて住み続けられなかったりするリスクがある。小さめの家や賃貸物件に移り、自宅を売ったお金を生活費にあてる方法もある。

 相続面での配慮も欠かせない。ひきこもりの子どもに法定相続分より多めに遺産を残したくても、きょうだいの理解が得られないとトラブルになる。弁護士を交えて話し合い、遺言を作成するのも一つの手だ。

 長年のひきこもりで他の人と会話したり、外出したりすることが難しい場合、行政などの手続きや買い物の支援体制も必要だ。きょうだいや親族にどこまで頼めるか、家族が財産を管理する内容の契約を結ぶ「家族信託」なども親が元気なうちに検討しておきたい。

 東京都豊島区で活動する社会保険労務士で、ファイナンシャルプランナーの浜田裕也さんは「備えのないまま親が要介護になって高齢者施設に入居したり、亡くなったりした後、生活に困る人は少なくない」と指摘する。

 親が亡くなった後、遺産や年金収入だけでは生活できない場合、生活保護を受給する。その際、持ち家は売る必要があるなど条件があるため、手続きとともに確認した方がよい。これらの手続きは「日本司法支援センター(法テラス)」などでも相談できる。

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