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医療・健康・介護のニュース・解説

知的障害者に社会参加を プロスポーツ選手と交流も…差別や偏見「あると思う」9割近く 

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居場所、交流の拠点

 重度の知的障害がある人は外出の機会が限られ、居場所も多くない。社会とのつながりも薄く、行動が理解されにくい。こうした状況を変えようと、支援者らが知的障害者の利用施設を自治体の中心街につくり、社会に広く知ってもらう活動に取り組む。プロスポーツ団体の協力で、外出と運動の機会を提供する自治体もある。(阿部明霞)

■自由に過ごす

障害者の社会参加…知的障害者施設 中心街に

浜松市の中心部にある施設で、のびのびと過ごす利用者ら

 11月1日、JR浜松駅近くの浜松市中区連尺町にある3階建てビルの一角。通路でのびのびと寝転ぶ人もいれば、その脇の床をモップで拭きながら往復する人もいた。

 重度知的障害者が集う複合施設「たけし文化センター連尺町(通称たけぶん)」は2018年11月にオープンした。運営するNPO法人「クリエイティブサポートレッツ」理事長、久保田翠さん(61)は「知的障害のある人の中には自分なりのルーチンが崩されると、不安になる人もいる。ここでは役割や作業を設けず、それぞれが自由に過ごしている」と話す。

 久保田さんの長男 たけし さん(27)には重度の知的障害があり、器に石を入れて鳴らす「癖」がある。癖をやめないのを理由に、受け入れ先がなかったという。壮さんのような人たちが安心して過ごせる場をつくろうと、久保田さんは04年にNPOを設立した。施設の利用者には壮さんと同世代の20代~30代が多い。

■共生社会へ

 施設2階には貸し出し可能な音楽スタジオ、3階にはシェアハウスとゲストハウスがある。シェアハウスに壮さんら3人の知的障害者が暮らし、ゲストハウスでは一般客が宿泊できる。

 NPOは「知的障害者が様々な人と出会い、刺激を受けた方が、生き生きとした生活を送れる」との考えから、開設場所に誰もが訪ねやすい市の中心街を選んだ。

 利便性の良さを生かし、広く社会に知的障害者の存在や行動を知ってもらう活動にも取り組む。近隣の小学校から児童が訪問し、ありのままの障害者と交流する時間を設けている。大学の要請に応じて、利用者がキャンパスに出向き、学生らと過ごすこともある。

 昨年10月には市の中心街にある別施設に、障害の有無に関係なく誰でも利用できる拠点をつくった。近くに住む小学3年生の女児(9)は頻繁に訪れるといい、「色んな人と話せて楽しい」と話す。立ち寄った人たちと過ごしつつ、宿題を行い、絵を描く。

 久保田さんは「同じ空間で一緒に過ごすことで、世の中には多様な人がいて当たり前だということを、実感してほしい。それが『共生社会』だと思うし、そうした場を増やしたい」と、語る。

■環境作り

 内閣府が昨年度に行った世論調査によると、「障害者が身近で普通に生活している」という共生社会の考え方を「当たり前だと思う」とした回答が9割に上った。しかし、障害者への差別や偏見が「あると思う」と答えた人も9割近くに達した。

 NPO法人「ピープルデザイン研究所」(東京都港区)と文部科学省などは先月末に東京・渋谷で、障害者の社会参加やバリアフリーの取り組みなどをテーマにシンポジウム「超福祉の学校」を開いた。

 登壇した津田英二・神戸大教授は「多様性を前提としたコミュニティーは、強い者だけが生き残る世界ではない。いまは社会に参加できていない人たちも加われるようになる環境を作ることが、共に学び、生きる社会の実現につながる」と話した。

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