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おにぎり専門店が続々「あまりにおいしい」…海外でもヘルシーさで注目

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おにぎり専門店が続々「あまりにおいしい」…海外でもヘルシーさで注目

おにぎり

 おにぎりに熱い視線が注がれている。コロナ禍による持ち帰り需要の増加で、専門店の出店が相次ぐ。健康志向の外国人からの人気も高く、海外進出の動きも活発化。国内のコメ消費が低迷する中、日本の「ソウルフード」が新たな需要を掘り起こしている。(蛭川裕太)

魚沼産にこだわり

 東京都渋谷区の「 結亭むすびてい 」は10月27日、店頭で品定めする人でにぎわっていた。ショーケースにはサケや梅、高菜、明太子など様々な具材のおにぎりが並ぶ。

 「中国で食べたものと違い、お米がふっくらとしている。あまりにおいしいので、頻繁に足を運んでしまう」。近くの企業に勤める中国出身の会社員(31)は笑顔で話した。

 店は、音響機器レンタルなどの会社を営む風間哲也社長(56)が、古里の新潟のお米を多くの人に味わってほしいと8月下旬にオープンした。コメは新潟の魚沼産コシヒカリにこだわる。

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専門店には、おにぎりを買い求める人が多く訪れる(10月下旬、東京都渋谷区の「結亭」で)=岩佐譲撮影

 1個180~360円とコンビニよりやや高いが、1日500個近くを売り上げる。外国人客も多く、風間社長は「おにぎりを通じて、世界中の人に日本のおいしいお米の魅力を知ってほしい。海外展開も検討している」と意気込む。

支出額は過去最高

 こうした専門店は続々と誕生しており、異業種からの参入も目立つ。JR東日本の子会社が駅構内で運営する「ほんのり屋」は2022年4月以降、8店舗を新たに出店し、現在は首都圏で20店舗を展開する。

 「象印マホービン」も22年4月、「象印銀白おにぎり」を大阪市内の百貨店に出した。のりメーカー「大森屋」が京都市に開店した「のり結び」では、のりを3種類から選べる。

 出店が増えたのは、コロナ禍で、購入した商品を自宅や会社で食べる「中食」が定着したためだ。総務省の家計調査では、2人以上の世帯の「おにぎり・その他(赤飯など)」の支出額は22年、過去最高の5172円となった。

 ウクライナ侵略の影響で一時、パンや麺類の原料となる小麦粉の価格が高騰する一方、コメは比較的安定していたこともあり、おにぎりの需要が高まった。

ONIGIRI人気

 それでも、食生活の多様化などで、国民1人あたりのコメの消費量は低迷が続いている。1962年度の118キロをピークに減少が続き、2022年度は50・9キロ(概算)にとどまる。

 コメの消費拡大に向け、追い風となっているのが、海外で広がり始めた「ONIGIRI」人気。低価格でヘルシーな食べ物として注目されているという。

 おにぎりの基本的な原料はコメ、のり、塩。具材を選べることもあり、宗教上の理由で食べ物に制限がある人や、動物性の食材を口にしない菜食主義者の人でも手に取りやすい。

 国内に51店舗あるチェーン店「おむすび権米衛」はアメリカとフランスに2店舗ずつ展開している。価格は1個400円前後で、多い日には1店舗で数千個が売れる日もある。将来的には海外だけで1000店舗の出店を見据えている。

海外進出を後押し

 おにぎり店の出店などにより、商業用のコメの海外輸出量は増えている。農林水産省によると、14年は4516トンだったが、22年には約6倍の2万8928トンになった。

 コメの海外輸出を後押しするため、農水省は17年度から「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」を開始。各国での試食会でコメのおいしさをPRしたり、日本と現地の企業を引き合わせたりしている。

 同省の担当者は「これまではすしだけだったが、おにぎりブームで、市場開拓のチャンスが広がった。人気が高い北米やアジアだけでなく、将来的には中東やアフリカにも輸出を広げていきたい」と話す。

おにぎりで社会問題を解決へ

 コンビニ各社では、おにぎりを通じ、社会問題の解決につなげようという試みも始まっている。

 セブン―イレブン・ジャパンは7月、エンドウ豆を原料とするツナの代替食材を混ぜた「みらいデリ おにぎり ツナマヨネーズ」の販売を始めた。世界の人口増加に伴う食糧不足をにらんだ取り組みという。

 ローソンは8月、東京都と福島県の店舗で、冷凍おにぎりの販売を試験的に開始した。食品工場から店舗への配送回数を減らし、物流関連の人手不足が深刻化する「2024年問題」に対応する狙いがある。

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